チープ・トリックのリック・ニールセンが語る、「最後の日」までロックを奏で続ける理由

ソングライティングにおけるプロセスの変化

ーソングライティングは、初期にはあなたが100%一人でやっていましたが、途中からメンバーと共作する形に変わって行きましたよね。今はどんなプロセスで共作することが多いのか、具体的に教えてもらえますか?

リック:ああ、最初の数枚の時は全ての曲を俺が一人で書いていた。でも一人でやるよりメンバー全員が書いてくれる方が楽だと分かったんだ。そっちの方がいいしな。他のメンバーと曲を書く時は、スタジオで「こんなアイディアがある」「今の2番目のところはイマイチだな」「なんか違うことはできないか?」って感じでやり取りしていく。

「Final Days」は一種のブルース曲。ブルース、だけどブルースじゃない。俺はリフを弾いてるけど、ジョン・レノンとやった時みたいなフィールがあるんだ。で、コーラスになると70年代のUKグループ風な感じになって……それぞれのパーツが力を貸してくれるんだよ。こちらがそうしようと狙って何かをしてるんじゃなくて、曲の方がどんどんと成長して形になっていくから、俺たちはそれをなんとか形にとどめようとする。「The Summer Looks Good On You」も、あの“Here comes the summer”という1ラインがあっただけで、「さてこれをどうしよう?」ということになった。でも、だからと言ってビーチ・ボーイズみたいな曲にはしたくなかったからね。

ー今回のアルバムで、あなたの色が特に強い曲を挙げるなら、どれになりますか?

リック:「Here’s Looking At You」は俺だ! 間違いない。「I’ll See You Again」はジュリアンの奥さんの兄弟がレコーディング中に亡くなって、彼も大のチープ・トリック・ファンだった。何か彼のためにできないかなということでこれをやったんだ。アルバムに入れなきゃとか、そういうプレッシャーもなく作った曲だった。アルバムに入ったのは正直驚きだったよ。ただ、残りの曲と並べてみた時に、全体の印象の中であれが合っていたんだ。たとえば「Sleep Forever」という曲を覚えているかい?(2009年の『The Latest』に収録)。あの曲を書いた時もバンドのために働いていてくれた男が亡くなったんだ。ちょうど9.11の直後だった。テキサスで行われた彼の葬儀に参列し、そこで流れていた曲を聞いて、「俺にもこれと同じくらい憂鬱な曲が書ける」と思って書いた曲だ。いい教会音楽がなかったから、それに代わる曲として「永遠に安らかに眠ってくれ」と送る意味で書いた。理由があって書かれた点は「I’ll See You Again」も同じだ。

ーなるほど。では、ロビンの色が特に強い曲はどれでしょう?

リック:彼が一人でやってるやつだ。「So It Goes」だったかな。あの曲は俺はコードすら知らない!


1979年、ローリングストーン誌の表紙を飾ったチープ・トリック


ー「Boys & Girls & Rock N Roll」は80年代から別のタイトルでデモが存在していた曲ですよね? あなたは大量の未発表曲をストックとして持っていますが、他にもそこから選んで磨き直した曲が新作にはあるのでしょうか?

リック:やったけどアルバムに入らなかった曲ならあったよ。数年前、俺は体調を悪くしていて、セッションに参加しないこともあった。あとで部分的に直すのには参加したが、俺抜きで残りの連中で作業を進めていたのさ。そんな1曲だよ。



ー「Final Days」でハープを吹いているのは、意外なことにウェット・ウィリーのジミー・ホールだそうですね。彼はジェフ・ベックとの共演でもよく知られていますが、どのような経緯で参加することに?

リック:ああ、クールだろ? ナッシュヴィルでレコーディングしたんだよ。俺のギター・パートはもう録音し終えたあとで、別々に録った。最初ロビンがハーモニカ・パートを試したんだ。まぁ、悪くはなかったが、なんていうか微妙でさ……。でもジミー・ホールはすっごくうまかった! 彼のパートがもっと長くなかったのは残念だ。どういう経緯で彼がやることになったのかは、誰かに訊かないと分からないな。ジミーは大好きなジェフ・ベックとやってるし、あれだけうまいんだから、使わない手はないだろ。

Translated by Kyoko Maruyama

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