ポストジャンルの停滞を超える喜ばしき変化の予兆? 2021年1stクォーターを象徴する6曲

浮上しつつある〈PCミュージック〉周辺のサウンド

5. No Rome / Spinning ft Charli XCX & The 1975



オウテカとの接近という驚きもまだ記憶に新しいソフィ突然の訃報と入れ替わりに、ここ日本では映画『シン・エヴァ』主題歌の共同プロデューサーとして脚光を浴びたA.G.クックがスマッシング・パンプキンズ1993年のメガ・ヒット「Today」のリミックスを上梓。過去と現在とが交錯しながら、2010年代初頭英国アンダーグラウンドの象徴のひとつ〈PCミュージック〉周辺のサウンドが今また浮上しつつある。soundcloudミックス『Dream Logic』に収録されたA.G.クックの二種類のリミックスを聴くまでもなく、キャリア最初期から〈PCミュージック〉と密接な関係にあったチャーリーXCXと〈ダーティ・ヒット〉二大看板作家が邂逅したこのオリジナルのビートにも同じシグネチャーが刻印されている。最初のライン――「朝4時にあなたをみつけた」は、チャーリーXCX2016年の傑作パーティアンセム「After the Afterparty」のリリックと呼応したもの。パーティはまだ続いている。ソフィ2015年の名曲を思い出さずにはいられない。「私たち、まださよならを告げてないみたい」。


6. Ariana Grande / 34+35 Remix feat. Doja Cat and Megan Thee Stallion



社会における女性の地位向上と、セックスの対位という二重の意味を持った『ポジションズ』というタイトルだけでも、昨年のアリアナ新作は十二分に賞賛に値する作品だったと言ってもいいかもしれない。社会システムの改革をシリアスになりすぎず、エモーショナルになりすぎずユーモラスに訴えることと同等に、女性側からの性的な欲望を時には官能的に、時にはユーモラスに肯定する――そんなアクロバティックな同居を可能したのは、1stアルバム『ユアーズ・トゥルーリー』以来久しぶりの、ディズニー映画『ファンタジア』のサウンドトラックを彷彿させるシルキーかつエレガントな弦楽サンプリングを軸にしたビート・プロダクションあってこそだろう。このリミックスは、アルバムの後者の側面を代表する曲――セックスの対位のひとつ、69をモチーフにした「34+35」に昨年の主役二人がヴァースを加えたもの。ミーガンは自らのヴァースで、女性主導のスパンキングプレイやマスターベーションについてのリリックをライムすることで、アリアナからのバトンを受け取っている。

Edited by The Sign Magazine

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