川谷絵音とpH-1が語る、indigo la Endで両者がコラボレーションした意味

「フュージョンってなんだっけ?」というところからスタートした。

―2020年に結成10周年を迎えて、今年2月に『夜行秘密』が出ているわけですけど、あのアルバムも作っていたのは2020年だと考えると、今回の曲が11年目の新たなスタートで、だからこそ新しいチャレンジをしたという側面もあったりするのでしょうか?

川谷:うーん……今また新しい曲をいろいろ作ってるんですけど、その中ではこの曲だけちょっと毛色が違っていて。今回はもともと別のデモを作ってたんです。ラップを入れやすいように、循環コードで、ミドルテンポの4つ打ちで、僕もループのギターフレーズを弾いて、そこにラップを入れてもらってから、またアレンジを考えようと思っていて。その方がコラボっぽいじゃないですか? でも、一回ZoomでpH-1と話したら、もともとドラマーで、日本のフュージョンが好きで、インディゴの曲だと「夜行」が好きだって言われて、「そっちか」と思って。それでフュージョン色強めの曲に変更したので、この曲が新しいインディゴのモードを示してるのかというと、そういうわけでもないんですよね。

―なるほど。

川谷:なので、「フュージョンってなんだっけ?」というところからスタートして……結局できた曲がフュージョンなのかと言われるとそれもわからないですけど、バンドとしては特に何かを考えて作ったわけではなくて、最後の変拍子とかも、僕たち的には結構思い切りが必要だったんですよ。今のindigoのファンのみんなからは必要とされてないアレンジなんだろうなと思ってたんで……。

―ははは。でも仕上がりの完成度は流石ですけどね。「夜行」よりもアッパーで、その中にコライトの美味しい展開がギュッと詰まってるし、グリッドミュージック的な良さもありつつ、あくまでバンドの生演奏によるグルーヴがはっきり伝わってくるし。

川谷:いつもの曲作りだと僕らだけで完結するから、途中でゴールが見えるんですけど、今回はラップを入れてもらうまで全くゴールが見えなかったんですよね。でも、ラップを入れてもらったら、自分たちでも予想してなかったかっこいい仕上がりになって、それはよかったなって。もしかすると、昔の曲作りに近いかもしれない。最近はわりとゴールが見えてる状態で作ってて、一回目のスタジオから構成ができたりしてたけど、今回は「フュージョン」というワンワードで作ってたので、誰もゴールが見えてなくて……言ってみれば、『PULSATE』くらいまでのインディゴの作り方に近かったかもしれないですね。『濡れゆく私小説』のときは考え過ぎたから、そういうのからは一回離れよう、みたいな感じもあって。

―そういうタイミングだからこそ、フィーチャリングを入れてみようと思えたのかもしれないですね。ゴールを見て作るときは、他の人が入るとずれちゃうわけで。

川谷:今回はちゃんとしたフィーチャリングにしたいと思って、普通ラッパーが入ってくるのって2番からが多いじゃないですか? でも僕ああいうのを聴くと、「まだ出てこないのかな?」と思っちゃうんですよ。ライブだったら2番から出てくる「満を持して感」もいいと思うけど、音源だと曲の雰囲気がわかった時点で飛ばしちゃったりするから、そういうのにはしたくなくて、ずっと掛け合いにしようって。それは最初から決めてました。

―まさに、この曲は川谷さんとpH-1の掛け合いが一番の魅力ですよね。そのうえで、後半の盛り上がりの部分でがっつり3か国語のラップが入るのもかっこいいし。

川谷:もともとギターソロのパートだったんですけど、ここにラップが入るのが一番かっこいいなって。そもそもチルなトラックにはしたくなくて……だから、やっぱりトレンドとかは意識していない。でも、もともと「夏夜のマジック」を作ったときも、あれは実際にカップリングだったし、何も考えずに作った曲だったので、そういうときの方がいい結果になることもあるから、どっちがいいとかは何とも言えないですけどね。

―「夏夜のマジック」は特にリズムに関してかなり遊んだ曲だったわけですもんね。

川谷:今回のリズムで言うと、最初はバンドであまり攻めない方が、ラップでリズムが作れてかっこいいかなと思ったんです。ただ、どういうラップが乗るのか全然わからなかったので、リズミカルに作っておかないと怖いというか、インディゴっぽさがなくなるかもしれないと思って、結局やり過ぎなくらいやりましたね。こういう速いテンポのラップは最近あんまりないし、それも新鮮でいいのかなって。

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