ロシアのサイバー攻撃をリークして逮捕された米女性が語る、情報源秘匿の問題

「彼らが情報源の素性を明かしたのは私が初めてではありません」

2017年、ウィナーは初めてNSAの内部サーバーで問題の書類に出くわした。The Interceptに書類を提供することにしたのは、エドワード・スノーデンがグリーンウォルド氏とポイトラス氏の助けを借りてリークしたのを評価していたというのが大きかった。また、2016年の大統領選挙にロシアが介入を試みたのではないか、と疑っていたからでもある。

メールでグリーンウォルド氏にコンタクトしたところ、彼はこう返答した。「リアリティ・ウィナーに関する私の主張はただひとつ、仮にThe Interceptがきちんと対処していたとしても、リアリティ・ウィナーはいずれ捕まっていたでしょう――彼女が愚か者だからではありません。アメリカ政府は広大な監視システムを敷いているので、政府が本気を出せば情報筋が素性を隠すのは非常に困難だからです」。彼はさらにこう続けた。「私はどこにも“潜伏”などしていません。私がブラジルに住んでいるのは夫と子供たちがブラジル人で、結婚当時はビル・クリントン政府の結婚保護法でアメリカ移住権を取得できなかったからです。私は頻繁に渡米しています」

グリーンウォルド氏も「かつてはジャーナリズムの信頼性を代弁していました。多くのThe Intercept関係者もそうでした」とウィナーは言う。この4年間の経験から、彼女はどちらにも、とくに情報をリークしたメディアに対してはシニカルになった。

「彼らが情報源の素性を明かしたのは私が初めてではありませんし、間違いなく最後でもありません――彼らのずさんさ(のせい)で刑期を務めている人が他に2人います」。ウィナーが言わんとしているのは、アメリカ軍のドローン攻撃計画に関する書類をリークした罪で有罪を認め、今年初めに懲役45カ月を言い渡されたダニエル・ヘイルと、FBI情報提供者の処遇に関する書類をリークして2018年に懲役4年を言い渡されたテリー・アルベリーだ。「情報源の1人が刑務所に送られるたび、メディアで取り沙汰されます。それが彼らのやり方です――かつて自分たちが信じていたジャーナリズムではなく、情報源の身元をばらすことメディアとしての体裁を保っているんです」

The Interceptのベッツィ・リード編集長は声明の中でこう述べた。「2017年のロシアの選挙介入に関する記事の取材で、匿名で送られてきた書類を検証する際にミスを犯したことは我々もすでに認めております。彼女の勇気を称えるとともに、彼女の経験を心苦しく感じています……我々もリアリティさんの事件から学び、内部告発者のリスクを最小限にとどめるよう努めています」。これとは別に、リード編集長はヘイルやアルベリーの件でThe Interceptの取材に手違いがあったという証拠はない、と語った。

ウィナーは自らの状況を振り返ってこう言った。「彼らは私の件で大きな間違いを犯しました。私が刑務所行きになったからではありません。私も自分のしていたことは自覚していましたし、その結果も受け入れました。それは構いません。彼らの態度やずさんさが問題なんです……彼らには悔しさで胸がいっぱいです」

Translated by Akiko Kato

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