アリシア・キーズ×ケラーニ対談 フェイクな世界でリアルを追求する二人の哲学

作り手としての不安と自信

アリシア:(新しい作品をリリースする前は)どんな感じ?

ケラーニ:怖い。わからないけど。作っている最中は、周りに誰もいないのではないかと思うくらい、孤独に感じる。でも実際は一緒に作っている仲間がいる。作っている人間の感じ方と、他の人々の受け止め方は必ずしも同じではない、ということ。つまり、中には共感してくれる人もいるかもしれないけれど、私とプロデューサーと演奏者など作り手側が気に入った曲でも、他の人に気に入ってもらえるとは限らない。「私にとってどれほど重要な作品か、あるいはどれほどの自信作か、本当に伝わるだろうか? 最初にリリースした曲からどれほど変わったかが、理解されるだろうか?」といった恐怖感がある。私にとっては、過去の作品とかなり印象の異なる音楽を作ることが重要なのよ。音的に過去の作品とは同じジャンルにしたくない。「ケラーニが全く新しい音楽に取り組んでいる」と感じてほしいから、実際はどうなるかと怖さを感じる。自分と同じ感覚を持ってくれる人たちと一緒に、クリエイティブな方向転換をしているつもりなの。

アリシア:そうね。

ケラーニ:ナーバスになりすぎかもしれないけれど、不安になる自分を抑えなければならなかったのよ。高いところから広く全体を見渡して、「これから5枚のアルバムを出そう。もっと時間をかけて経験を積もう。恐れることなく湯水のように作品を出して行こう。他人の評価は気にせずに進もう」と考える。いつでも作品を作った時の初心に帰りたいの。

アリシア:ナーバスになる原因は、他人からの評価だと思う? 正直に言って、そうでしょ? 私たちは皆、自分が思いもよらぬ形で評価されるのを恐れている……。

ケラーニ:評価ではなく、受け止め方だと考えているわ。面と向かって、あなたが私の好みについて話しても、それが実際の私かしら?

アリシア:その通りね。

ケラーニ:あなたは私を受け止め、私を理解してくれている。人々に自分を受け入れてもらえないと感じて、辛い時もある。私の作った音楽やクリエイティビティやインタビューなど、表面的に見えるものをどのように感じるかを、認識することはできる。でも、全体的に理解されたり受け入れられるには、心の中まで見せなければならない。だから作品に込めた気持ちが届いていないと感じたら、ナーバスになる。曲を聴かせても、作り手が意図したように受け止めてもらえない時がある。「ちゃんと歌詞を聴いてくれた?」と言いたい。

アリシア:つまり「私の言葉が届いている?」ということね。

ケラーニ:「言いたいことを理解してくれた?」ということ。私はそういうプロセスを辿っている。曲を気に入ってくれようが嫌われようが構わないタイプなので、評価も気にしない。作品を好きになってもらえれば、それは嬉しい。私は自分の作品を愛している。でも、ちゃんと伝わっているかどうかが気になるわ。


Photographed by Kanya Iwana for Rolling Stone. Produced by Rachael Lieberman. Fashion direction by Alex Badia. Set design by Dureen Troung. Keys: Styled by Jason Bolden. Tailored by Erin Castle. Hair styled by Kendall Dorsey for Factory Downtown. Makeup by Tasha Reiko Brown for the Wall Group. Manicure by Temeka Jackson for CMNsoon Entertainment. Top, jacket, and choker by Chanel. Earrings by Cartier. Kehlani: Styled by Oliver Vaughn. Hair styled by Cesar Ramirez for Cesar Ramirez Styling. Makeup by Pircilla Pae for Hendrix Artists. Manicure by Brittany Boyce for Nails of LA. Jacket and shirt by Valentino.

アリシア:あなたの理解力は素晴らしい。誰もが個人的に関わってくるから、人々のエネルギーを集めることは簡単よ。彼らは、あなたのくだらない話からでも何かを得たり失ったりしている。だから彼らのエネルギーに頼りすぎると、実際は自分の考えでなくてもまるで自分のもののように感じ始めて、従ってしまうのよ。

私は長年の経験から、自分の本当の思いがどこにあるのかを慎重に理解する方法を学んだわ。他人の感情をそのままなぞっているだけのことも多い。とても危ういわ。特にこの業界では、自分が仲間内に作品を披露して感想を聞く前に、さまざまな意見が飛び交うから。

ケラーニ:「これぞ最高傑作」と言われて、「へぇ、そう思うの? おかしいんじゃない?」という感じね。

アリシア:あるいは「好きな作品だが、しかし……」と言われて、彼らの本心が見える感じ。あなたの考え方はとても好きだわ。将来を感じるし、共感する。正に私が今置かれている状況だと思う。人々に自分を認めてもらおうという考えは捨てた。そうすると、とても気が楽になったわ。

ケラーニ:私にはまだ数年かかるわね(笑)。

アリシア:もう目の前よ。

ケラーニ:1年前よりは、ずっと近づいていると思う。

アリシア:そうよ。正直言って、「アリシア、自分では強固な自意識などないと言うが、君は十分に強い」と言われることが多い。でも私自身は全く自覚がない。でも強い人間にはありがちなことだと思う。本当に強い人こそ、頻繁に自覚する必要がある。

ケラーニ:強い人は、多くの人の役に立つからよ。

アリシア:その通りね。あなたは間違いなくそのレベルに達しているわ。すごい。超素晴らしい。


From Rolling Stone US.




アリシア・キーズ
『KEYS』  
配信中
視聴・購入:https://AliciaKeys.lnk.to/KEYS_ALBUMRS

Translated by Smokva Tokyo

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