ドージャ・キャットが語る、「ポップ界の問題児」としての本音と葛藤

 
「無関心」というアイデンティティ

彼女のこういった不真面目な態度には、自己防衛という目的がある。何もかもどうだっていいというな投げやりなアティテュードによって、ドージャは中身のない投稿を連発するShitposterとして認知され、批判をうまくかわしてきた。「ほとんどあるいは全く意味のないことを呟くけど、言いたいことがある時ははっきりと言う。私にとってTwitterはそういうもの」。本音を発した後はジョークでオブラートに包む、それが自分のやり方だと彼女は説明する。「アイドルズ(Idles)は世界最高のパンクバンドの1つだと思うから、そうツイートする。でもって、その直後に『おっぱい』とか呟くの」。彼女は例を挙げながらそう説明する。「正直、有意義な何かよりもロクでもないことをツイートする方がいいと思う。だって、誰も何も気にかけてやしないんだから」

ドージャは自身のソーシャルメディア戦略についてそう話すが、それが公のペルソナの表現であることはまず間違いない。ミュージックビデオの撮影に備えて口パクの練習を繰り返していた「Get Into It (Yuh)」のヴァースの1つは、そのキャラクターを端的に表現している。「あんたはパーティしたいだけ/ラップダンスしたいだけ/バットマンみたく間抜けどもの頭上に颯爽と現れたいだけ/高級ブランドの服を着て親友と豪遊したいだけ」

ドージャは世間が抱く自分のイメージがアンフェアだと感じている。「胸とお尻が売りの退屈なラッパーで、頭空っぽ。カメラに向かって何かやってると、『こいつ、やってること全く変わってないな』なんて言われる。テレビに出てる芸能人がみんな頭すっからかんなんていう考えは、浅はかもいいとこよ」


Photograph by Kanya Iwana for Rolling Stone. Outfit by KNWLS. Earring by Wasee. Rings by German Kabirski. Shoes by Juanita.

少なくとも公のイメージでは、彼女はあらゆる既存の政治概念やアジェンダを露骨なほど嫌っている。彼女は「Dindu Nuffin」の一件で批判された後、Justice for Breonna Taylor基金に10万ドルを寄付しているが、ソーシャルメディア上では自身の政治的見解には一切触れていない。

「私は政治には全く興味ないの」。彼女はZoomミーティングの場でそう言った。「退屈そうだもの。私の脳はそういうのに反応しないの。私はなんて言うか、いつもふざけてるタイプの人間だから。毎日くだらないことをやったり踊ったりしながら生きてる」。バイデン大統領の就任後1年間の仕事ぶりについて意見を求めると、彼女は無関心ぶりを隠そうともしなかった。「知らない。私が知ってることといえば、彼に顔や足や腕があって歩けるってことだけ」

どのような問題にもまるで関心を示そうとしないその姿勢には、もはや清々しささえ感じてしまう。しかし、それはShitposterとしてのアイデンティティの一部であり、公の場で誠実さを見せることは、キャンセルカルチャーのあらゆるリスクよりもはるかに危険なのだろう。「私が学んだのは、誰も気にかけちゃいないってこと。誰かが何かについて腹を立てていようがいまいが、どうだっていいの。相手が恐ろしい存在で、すごい力を持っていない限りね。どっかの誰かが作ったキャセロールに対する誰かの不満なんて、一体どこの誰が気にすんのって感じ」。彼女はソーシャルメディア上で怒りをぶちまける人々についてそう話す。「ただおかしな奴を演じてる方がよっぽど楽しいわ」

ドージャは自身のプライベートな一面について語ることも嫌う。「誰かが自分の恋愛事情とかをTwitterで発信してるのを見るとイラつく。みっともないし、バカなことだってわかんないのって感じ。プライベートなことを進んで世間に晒すなんてどうかしてる」。後ろにいた飼い猫のAlexが急ぎ足で去っていくなか、Zoomでの追加取材の場で彼女はそう言った(理由は不明だが、彼女のZoomのハンドルネームは一時「ニコラス・ケイジ」となっていた)。「今自分はシングルだとか、そんなこと絶対に公表したくない。すごくヤりたい気分だとかは言ったりするけど、今は恋人いませんとか絶対に言わない」。(一応記しておくと、彼女は今はシングルだと語っていたが、ツアーマネージャーによると元々は猫嫌いだったボーイフレンドがいるはずだという)

Translated by Masaaki Yoshida

 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE