MONSTA X密着取材 LAで語ったファンへの感謝、メンタルヘルスと人生設計

 
メンタルヘルス問題、苦しかった練習生時代

アルバム『The Dreaming』のリリースを祝うパーティーの夜のことだ。I.MとJOOHONEYがバーカウンターからそれぞれカクテルを手にするや否や、賑やかな屋内からロサンゼルスの温かい風が吹く屋外へと連れ去られてしまった。JOOHONEYがドアから出ようとする直前に何とか彼の気を引くことができた私は、どこに行くのかと訊ねた。彼は肩をすくめて、わからないと答えた。

翌日のインタビューでJOOHONEYが詳細を教えてくれた。「本当はもっといたかったのですが、長い1日を控えていたので、早めに切り上げることにしました。プロフェッショナルらしくありたいと思ったのです」。5人は、所属レーベルの快適な一室に押し込まれたソファに座っていた。「もし、僕らに判断が委ねられていたら、酔っ払って人生最高の時間を過ごしたのですが」と、JOOHONEYは満面の笑みで部屋の反対側を指差した。「あそこで寝ました」

I.Mが「もし僕らが飲みはじめたら、とても手に負えませんよ!」と言い添えると、全員が声を出して笑った。K-POPアーティストは、パーティーでは飲まないと言われている。コンサートでパフォーマンスを披露し、ファンと交流しながら楽しいひとときを過ごす——これが彼ら流のパーティーなのだ。


待望のミート&グリートイベントに備えて、アルバムにサインをするMONSTA X(Photo by Jesse DeFlorio)

MONSTA Xのキャリアは容易に摩耗したり、ぐらついたりするようなものではない。彼らの両親は、グループの活動を誇りに思う一方、心配もしているとメンバーは語った。「どの親も、子供のことが心配だと思います。その子のことを心から愛しているのであれば。でも僕らは、両親とともに世間の目にさらされています」とI.Mは言う。「有名人全員がこうなのかはわかりませんが、僕らのスケジュールは文字通りノンストップです。本当ですよ。だから、僕らの健康や精神力のことを心配しているかもしれません」

KIHYUNは、次のように言い添えた。「K-POPアイドルにとっても、メンタルヘルスは極めて重要な課題です。ですから、親たちはこの点についても心配しているんです」

MINHYUKは、昨今のK-POP練習生のトレーニングの実態はわからないものの、彼らにとっては過酷な経験だったと語る。「僕らが練習生だった頃のシステムは、いまとはかなり違っていました。(しっかりとした)枠組みがなかったので、素晴らしい環境と言えるものではありませんでした」と彼は言う。「それ以来、飛躍的な改善がなされました。芸能事務所が正式なシステムを取り入れ、メンタルヘルスをはじめとするさまざまな課題に取り組むようになったのです」。K-POP練習生の平均年齢は若く、中学生が理想的と言われている。MONSTA Xが練習生だった頃、メンバーは昼休み、あるいは1日の授業の終わりに学校を出て芸能事務所の練習室まで移動し、夜の10〜11時まで練習に励んだ。最終バスで帰宅し、5時間ほど寝てから学校に行き、このプロセスを繰り返すのだ。「残って練習したければ、いくらでも残ることができました」とJOOHONEYは言う。「徹夜で練習して、学校に直行する人もいました」

I.Mは、苦しい練習生時代を過ごした。「練習生だった頃は、終わりのない暗いトンネルを歩いているような気分でした」と彼は言う。「どうしたらデビューできるかもわからないし、どうしたらステージに立てるかもわかりません。事務所が僕を残してくれるかどうかもわからないんです。だから、すごく不安になりますし、プレッシャーも相当あります。ですから、デビュー後の生活のほうが好きです」。デビューしてから積極的に活動するK-POPグループの一員になれたおかげで、全体的に物事を見られるようになったのだ。MONSTA X曰く、グループのメンバーになることは最高のパフォーマーになるために個人で努力することではない。仲間と協力しながら、チーム全体で成功を勝ち取ることなのだ。



もうひとつの重要な要素がルックスだ。K-POPでは、清潔で透明感のある、純粋でボーイッシュな魅力という美意識が欠かせない。これらは、アイドルグループに求められるタイトなダンスのルーティンや、完璧なボーカルパフォーマンスを反映しているのだ。MONSTA Xにとって重要なのは、外見的なかっこよさよりも、自分自身を労わること。早熟な老化は、K-POPスターの生活につきものの仕事、ストレス、移動のボリュームからくる一種の職業病なのだから。

I.Mは、自分がモノとして見られることに慣れるのに当初は苦労したと明かす。「デビューした頃は、自分の写真を見ることに戸惑いました。たくさんインタビューを受けて写真を撮られ、記事がネットにアップされていましたから。とても不思議な気分でした。自分の顔が好きではありませんでした」と彼は振り返る。「でも、あの頃の経験のおかげで『OK、これも僕だ。これも僕の一部なんだ』と思えるようになったんです。徐々に自分を受け入れられるようになりました。いまはすっかり慣れました。数年間、自分を見てきましたからね」。I.Mを助けてくれたのは、ファンの反応だった。「時々、自分のかっこ悪い写真を見て悲しくなったり『最悪!』と思ったりもしますが、ファンのみんなが見てくれるので気にしません。ファンのみんなは、僕らの変な顔も喜んでくれます。だから、気にしていません」

その言葉が示すように、すべてはファンのためにある。『MONSTA X: THE DREAMING』の中で、MINHYUKはファンを母親にたとえている。「母親」という言葉の選択は意外かもしれない。アーティストが頻繁に使う言葉といえば「友人」や「家族」だ。彼はなぜ、母親という言葉を選んだのだろう? MINHYUKは、答える前に少し考え込んだ。「ファンは、いつも惜しみなく与えてくれます。そこで、惜しみなく与え、支えてくれる人は誰だろう?と探しはじめました。愛を表現する方法はさまざまですが、もっとも多様で包容力があるのは母の愛です。考えてみると、ファンとの交流の中核は金銭的なやり取りです——ファンは僕らの音楽を購入し消費していますから。でも、それだけではありません。単なる双方向の交流よりも、もっとたくさんのことを与えてくれるんです」。ならばミート&グリートのようなファンイベントは、親子の再会の場と言えるかもしれない。

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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