アヴリル・ラヴィーンのパンク回帰、トラヴィス・バーカーらキーマン達を通して解説

アヴリル・ラヴィーン(Courtesy of ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)

アヴリル・ラヴィーンが『Let Go』でアルバム・デビューを飾り、「Sk8er Boi」を大ヒットさせたのが2002年。2002年と言えば、ポップ・パンクやエモが音楽シーンを席巻していた時代である。男性が多かったパンクの世界に、アヴリルは芯の強い女性アーティストとして登場して、音楽だけでなく、ファッション、アティテュードの面でも多くの人たちに多大な影響を与える、強力なミレニアル世代のアイコンとなった。

そして20年後の2022年。アヴリルはニュー・アルバム『Love Sux』をリリースする。『Love Sux』はポップ・パンク色全開で、ほぼバンド演奏によって作られた初の全編ロック・アルバムとなった。楽曲のアティテュード的には『Let Go』を彷彿とさせ、サウンド的にはいわゆるポップ・ミュージック的な過剰な味付けが全くない、シンプルでストレートなものになっている。にも関わらず、100%アヴリルを感じさせるアルバムとなっていて、パンクなアヴリル復活というイメージを強く感じさせるものだ。逆に、何故今までこういうアルバムを作らなかったのかという疑問すら生まれてくる。

■「Bite Me」MV字幕ヴァージョン



今回のパンクなアヴリル復活を支えたキーパーソンたちにも触れよう。アルバムの楽曲をプロデュースしているのは、トラヴィス・バーカー、ジョン・フェルドマン、モッド・サンの3人である。中でもトラヴィス・バーカーの存在は大きい。blink-182のドラマーとしてポップ・パンクの頂点に輝いた後、今やプロデューサーとして大活躍中で、コートニー・カーダシアンとの婚約でセレブのニュースにも取り上げられる人物だ。トラヴィスがスゴいのは、パンクもヒップホップも好きで、この異なるジャンルを結びつける音楽制作をずっとやり続けてきたところだ。ここ数年のトラップのブームから、ヒップホップがポップ・ミュージックの主流になっていった流れの中で、90年代~2000年代にロック・バンドがヒップホップを取り入れた 「クロスオーバー」が形を変えて、2010年代末からはヒップホップがロックを取り入れる逆「クロスオーバー」が始まって、そのスタイルが今人気を博している。

そこでは、ラッパーたちが子供の頃に聴いて育ったポップ・パンクやエモの要素をヒップホップに取れ入れるということが起こっているのだ。トラヴィスは、自らドラムを叩きながら数多くのラッパーのプロデュースを手がけて制作を続ける中、2020年にはマシンガン・ケリーのポップ・パンク・アルバム『Tickets to My Downfall』が大ブレイク。以降、Z世代によるニュータイプのポップ・パンクのアーティストが次々と登場するという現象も起こっている。

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