サンダーキャット×フライング・ロータス対談 創造力が育んできた2人の絆

グラミー賞とボクシング

ーあなた方はどちらも精力的に活動していて、常にコラボレーションや新プロジェクトのローンチを進めています。お2人はパンデミックの世の中にどう順応していますか?

フライング・ロータス(以下、FL):俺はピアノの練習と、クラシック音楽の勉強に励んでる。自分のスタイルをもっと広げたいんだ。このプロセスを通じて、自分がアーティストとして成長したって感じたいんだよ。学ぶことをやめ、前に進もうとしないのはアーティストとして失格だ。マジでさ。俺がこれまでに身につけた技術や知識に、より磨きをかけようとしてるんだ。あれ(Netflixのアニメシリーズ『Yasuke』のサウンドトラック)は面白いプロジェクトだったし、グラミーを受賞したことも嬉しかった。なぜかというと……。

サンダーキャット(以下、TC):自宅のソファに座ったまま受賞した(笑)。

FL:士気が下がってたからな。グラミーの受賞はいい刺激になった。



ーグラミー賞の最優秀プログレッシブR&Bアルバム賞に輝いた『It Is What It Is』は、Brainfeederにとって初のグラミー賞受賞作品となりました。世界が今のようなムードにある中で、こういった素晴らしい成果をあげられたことをどう思っていますか?

TC:ちょっと複雑な気分だった。家族やBrainfeederのチームと一緒にお祝いできたことは、素直に嬉しかったよ。もし授賞式に出席してたら、そういう親しい人たちとは一緒にいられないだろ?

FL:確かに、それはすごくよかったよな。

TC:一緒に祝うべき人たちといられたわけだよ。それはすごくクールだったね。ただ、会場でもらえるはずのギフトバッグが届いてないことは納得できない。すごく上等なスキンケアのクリームやお菓子が入ってるやつさ。

FL:お菓子は欲しいな。

TC:そう簡単に諦めるつもりはないよ。グラミーのお菓子、マジで欲しいからさ。それはともかく、すごくクールな経験だったよ。感謝の気持ちでいっぱいさ。アルバムを出したときには、こんな風に評価されるなんて思っていなかった。あれを出した時は、世の中が静まり返ってたからね。(アナウンサー調の声色で)「満を持してアルバム発売! いや、ちょっと待った」みたいな感じさ。(『It Is What It Is』は)世の中が完全にストップした後に出たんだ。




FL:何もかもが急停止したタイミングだった。予定されてたツアーも中止になったしね。計画が全部お釈迦になって、作品を出したっていう実感さえ得られないような状況だっただけに、グラミー賞の受賞っていう形で報われたのは嬉しかったよ。ところでキャット、最近はどういう曲の練習をしてるんだ? 今も手に持ってたりするのかい?

TC:最近は週5でボクシングをやってるよ。これはマジな話(笑)。

FL:ベースはもうやめたのか?

TC:あぁ、僕は『ブラッド・スポーツ』の世界に進む。なんてね、冗談だよ。不思議に思うだろうだけど、僕は多くのことをステージ上で学んでいるんだ。曲を覚えたり、練習したりっていうのは常にやってるけど、オーディエンスの前で演奏するっていう体験は他の何にも置き換えることはできないんだ。

FL:完全に別物だよな。ボクシングの練習はそれに近い部分があるのかもね。どんなに訓練を積んでも、実戦の代わりにはならないだろうからさ。

TC:そう、顔面にパンチを食らわなきゃダメなんだ。10歳の頃からステージに立っている僕の人生は、ずっとライブを中心に回ってきたんだよ。そこで常に何かを学んでいるからこそ、作品という形でアウトプットできるんだ。

FL:ライブって、自分自身とオーディエンスとの対話だからな。それを糧に成長するわけだから、相乗効果みたいなもんだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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