米屈指の進学校でナチス式敬礼、街に潜む「差別」の悪魔

学校側の対応

エップスさんは多くのクラスメートにナチス式敬礼は間違っていたと白状させることに苦労していた。「みんなが完全な反ユダヤ主義者だとは思いません。でも、問題だと気づかずに、ただ言われた通りにするなんて」と彼はため息をついた。「ほかの子たちに話しても、みんな『先生はただ教えようとしてるだけだよ』としか言いません。誰も問題点に気づいていないんですよね」

人種差別のみならず、存在を否定されること、ひいては取り組むべき問題があるという事実を否定されることがどれだけ自分を傷つけるか、彼はわかっているのだ。ナチス式敬礼事件後、2週間以上が経ってから校長はようやくエップスさんの両親との面談に応じた。「校長先生は、多忙で私たちと面談する時間がないと言いました」と母のマリヤさんは言った。「彼の言葉には、ひどく傷つきました。クラスでナチス式敬礼が行われているというのに、対応する時間がないと言うのなら、この学校は果たしてほかにどれだけ重大な問題を抱えているのでしょうか?」

エップスさんの一家は、ナチス式敬礼事件を最初に報道したメディアに接触した覚えはない。いったい誰がどのようにしてメディアに伝え、なぜ全国的に取り上げられるようになったかは不明だ。だが事件が報じられた当日、住民の中には彼らに詰め寄る者もいた。夕方には、エップスさんの家をリンチして家を燃やすという脅迫を受けた。その日の夜、エップスさんは「彼らは、僕がマウンテン・ブルックの評判をおとしめていると言うのです」と語ってくれた。その声は小さいながらもしっかりとしていた。「ある時、知らない人に『自分がやっていることの意味をわかっているのか? あんたのせいで大学の友愛会に入れなくなるじゃないか』と言われました」

新たな法律により、アラバマ州の学校でナチス式敬礼のような行為が今後は禁止されることは間違いないだろう。事件後にマウンテン・ブルック高校がとった唯一の対策は、クラスでのスマホの使用禁止だった。

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from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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