リンダ・リンダズが語る音楽的ルーツと4人の成長、ブルーハーツと日本への想い

アルバムに刻まれた「成長」

―アルバムのテーマについて教えてください。作品全体を通じてどんなことを歌いたい、伝えたいと考えましたか。

ルシア:どの曲も基本はロックダウン中に書いたの。予定していた何本かのライブがコロナのせいでキャンセルになって、凄く悲しかった。でも、お陰で、初めてきちんと曲作りに専念する時間ができたのは不幸中の幸いだった。みんなで「よし、アルバムを頑張って作るぞ」ってなって、家の裏庭とかに集まって、アイデアを出し合ったりしたのは楽しかった。アルバムでは、私達が若いミュージシャンとして学んでることだったり、いきなり自分達に起きた様々なことを自分達なりに噛み締めている思いを歌っていると思う。まだ学校に通いながら、バンドもあって、それ以外にも初めてのことが目まぐるしくあって。やっていて本当に楽しいし、何物にも代えがたい経験をしていると感じるから。

ミラ:このデビュー作には、いくつもの物語が込められていて、一つの大きなメッセージがあるわけじゃない。でも、あるとしたら、それは「若いうちは楽しむこと」だったり、「自分らしくいること」「自分らしさを受け入れること」とかじゃないかな。

ルシア:テーマを決めて曲を書いたわけじゃない。ただ、「今、自分達に起きていることを、どう噛み締めたらいいんだろう」ってみんな思ってて、その中の気持ちを歌にしていった。曲を作る過程で、自分達についての発見もあった。それまできちんと腰を据えて曲を書いたことがなかったから。(リンダ・リンダズとして初めて作曲した)「Claudia Kishi」はあったけど、それくらいだった。今は、もっと自分達自身と向き合いながら、「ここを目指さなきゃ」とか「もっとこう成長したい」という思いが芽生えてきてる。

ミラ:「Claudia Kishi」はドキュメンタリー(Netflix『クラウディア・キシ倶楽部』)用に書いた、登場人物についての歌だったしね。

ルシア:アルバムの曲のほうが、より私達の内面が出てるから、少し怖さもあった。自分達にとって身近な曲をあえて世に放つ、ということが。他にも書いた曲はあったけど、アルバムには、これを世に出したいという思いが強かった曲を選んだ。私が書いたものだと、ハッピーな曲が多いんだけど、それはアルバムにハッピーな曲を入れたいと思ったから。別にハッピーな曲ばかりを書いてるわけじゃなくて、一番誇りに思えた曲を選んで、今回入れたってこと。



―あなた達の初期の動画を見ると、エロイーズさんがドラムを叩いていたりして、インタビューでもメンバー間でよく演奏楽器を交換するとの旨を話されていました。アルバムのクレジットを見ると、現在はミラさんがドラム、エロイーズさんがベース、ルシアさんとベラさんがギターという担当で固定されたようですが、ここに至るまでにバンド内で何か変化があったりしたのでしょうか?

ベラ:みんなでそれぞれ一つの楽器に専念しようってことになったんだと思う。あなたが言ったように、前は楽器を交換したりしてたけど、それを経て、何か一つに専念するタイミングが来た、という感じ。例えば私はギターが好きだし、ルシアもギターが好き。そういう風に、自分が一番好きなものに打ち込んで、その道を極めたいと思ったってこと。

ルシア:私達は、そこまで長く楽器を演奏してきたわけじゃないけど。一番長くやっているのはベラで、ギターを始めて6年になる。他のメンバーは楽器を弾くようになってからせいぜい3年くらい。最初は、とりあえずステージに立って、とにかく自分達が好きな曲をやる!というノリで、歌う人によって楽器を取り替えていた。前までミラは歌いながらドラムを叩けなかったけど、今は歌いながら叩けるようになった。持ち回りで楽器を弾くのは楽しかったし、ドラム、ベース、鍵盤、それぞれの楽器を弾くのがどんな感じかを体験できたのもよかったと思う。でも今は、プレイヤー、そしてソングライターとして各々がもっと成長したいと思っているの。



―アルバム・タイトル曲「Growing Up」のミュージックビデオはネコの視点で作られてますよね。「Nino」もネコについて歌った曲ですが、普段ネコと一緒にいてどんなインスピレーションを受けますか?

ルシア:ネコはパンクな生き物だと思う!

―(笑)

ルシア:最近誰かにそう言われたんだけど、本当にそうだって思うようになった。

エロイーズ:小さい頃からみんなネコが好きだったから……。

ルシア:ビデオは、隠喩でもあるんだけどね。監督のウンベルト・レオンに、「君達のMVを撮ることになったんだけど」って言われて、私達も「やった!」ってなって。で、彼に説明されたんだけど、いまだに一体どうやってああいうビデオに仕上がったのか、さっぱり分からない。彼に「君達がネコになって、ネコが君達で、大人になって、みんなネコになってて、おそろいの服を着てる」って言われて、みんな「はぁ……」ってなった。

エロイーズ:「なるほど。楽しそうね」って……。

ミラ:でも、ネコが登場するんだから、ハズしようがないと思った。

ルシア:で、最高のビデオが出来上がって、今でも信じられない。

ミラ:ネコは鉄板でしょ。

ルシア:最後に私達の小さい頃のビデオが登場するのもよかった。私も見るのが凄く久しぶりだったし。

ミラ:監督から最初にビデオの説明をされた時、実は全然違うものを想像していた。でも、ああいうビデオに仕上がって、本当によかった。最高のビデオだと思う。



―アルバムのサンクス・リストにアリス・バッグの名前がありました。アミル&ザ・スニッファーズのエイミー・テイラーもアリス・バッグが好きとのことで、近年のパンク系ミュージシャンからアリス・バッグが強く支持されているのを感じるんですが、あなた達はどうやってアリス・バッグの音楽と出会ったのですか? 彼女のどういうところが素晴らしいと思いますか?

エロイーズ:あの辺のシーンとは前から凄く繋がりがあって。私の両親は学校の音楽教育を充実させる為の寄付を募るコンサートを主催したりしてたんだけど(「Save Music In Chinatown」)、それに出演してくれてたのが昔のLAパンクのアーティストだったの。アリス・バッグだったり、ディルズやアレイ・キャッツといったバンド。そして、それがリンダ・リンダズの原点になった。初めてライブをやったのも、そこだしね。


1979年に解散したLAの伝説的パンクバンド、ディルズが「Save Music In Chinatown」出演のため2019年に再結成。ライブにはエロイーズも参加。

ルシア:一度、ハイ・ハットで彼女のライブの前座を務めたこともあった。あれは凄く楽しかったよね。彼女に感謝を捧げたのは、その素晴らしい功績だけじゃなくて、彼女が私達を直接後押ししてくれたことが何度もあったから。EPのアナログ盤リリースの際には、私達についてのコメントまで寄せてくれた。

エロイーズ:彼女は、私達のリンダ・リンダズとしての初ライブも観に来てくれてたの。ライブが終わると、アンコールを求める拍手までしてくれて、思わず「!!!」ってなった。信じられなかった。

ルシア:そのアンコールでは、ジョイ・ディヴィジョンの「Love Will Tear Us Apart」をやったね。

エロイーズ:念の為に用意しておいた曲だったんだよね。アリス・バッグの音楽の凄いところって、本当に大事なことを歌にしているから。ビキニ・キルもそう。音楽を通して、変革を起こしている。音楽が実際そういう影響をもたらすものだって教えてくれた。

Translated by Yuriko Banno

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