WONKが語る、結成10周年で到達した新たなスタートライン

 
合宿での学びと発見

―『artless』は山中湖のスタジオで合宿レコーディングを行ったそうですね。

井上:あらゆる課題を解決するための合宿でしたね。

江﨑:曲作りもそうだし、みんなのスケジュールを合わせるのもそうだし、自分たちでレーベルをやってるから、資金繰りのこともあるし(笑)。

井上:健斗も監視できたし(笑)。いつも昼過ぎまで寝てる人だと思ってたけど、いざ一緒に生活してみたら普通に起きててびっくりした。


長塚健斗(Vo) Photo by Masato Moriyama

―あはは。長塚さんは合宿でのレコーディングはいかがでしたか?

長塚:楽しかったですよ。最近はデータだけのやり取りだったけど、実際にその場で話しながら、楽器と合わせながらメロを決められたのは面白かったですね。

荒田:初日に長塚さんの歌詞があるっていう感動体験もあって。あのとき合宿は実質終わってたよね(笑)。

井上:でも本当にそうで、健斗が最初から4曲書いてなかったら仕上がらなかったと思う。

江﨑:ずっと曲先だったから、詞先でこんなに作れたのは初めてです。

荒田:ただ、2日目か3日目の夜に3時間くらい話し合いがあってね。

江﨑:長塚さんの歌詞を軸にアルバムを作っていったものの、リリース後のフェスラッシュを考えると、もっとフェスで多くの人が盛り上がるような曲を作った方がいいんじゃないかと思ったんです。一時期フェスに出まくってたときのことを思うと、そういう勢いのある曲がないと自分たちのモチベーションも保てないっていうのがあるから、「ライブを意識した曲も作った方がいいんじゃない?」って僕が言って。そこからすごく深い議論が始まって。

荒田:でも、「盛り上がり」というものをお客さんに合わせて作るんじゃなくて、自分たちがグッと来るような曲を作れれば、今回はそれでいいんじゃないかと思ったんです。そこも含めて「無理をしない」っていう。そこで一致団結できたので、それからはスムーズに進んだ感じがします。

江﨑:そのとき荒田が言ったことがすごく心に残ってて。「盛り上がる」っていうのは、お客さんが飛び跳ねたりとか、そういう状態のことだけを言うんじゃないっていう。イントロが流れた瞬間にグッと来るとか、落ちサビの歌が心にジワッと染みるとか、むしろそういうことの方が一番の盛り上がりになってるかもしれないよねって話をして。その通りだなと思ったんです。


荒田洸(Dr) Photo by Masato Moriyama

―今の話からはシーンの移り変わりを感じるというか。2010年代の半ばくらいに、ロックバンドたちが今話してくれたような問題と向き合ってたと思うんですよね。でもそこからシーンの流れが変わって、ジャズやヒップホップのバンドもフェスに出るようになって。それが一般的になったからこそ、もう一度ライブのあり方を考える時期に来たんだなって。

井上:たしかに。僕らは特に微妙な立ち位置にいるから、そういう悩みがあるのかなって思うところもあって。それこそロックバンドと並べられることもあるし、ジャズ界隈の人と一緒のこともあるし。どっちの良さも知ってるがゆえに「じゃあ、どうする?」っていう。でも結局、いいバンドはそれぞれ自分たちなりの盛り上がりを持ってるから、自分たちもそれを持とうぜっていう話ができたのはすごくよかったですね。

―おそらくは、コロナ禍でライブの環境が変化したことも関連があるのかなって。

荒田:今は何をしたら盛り上がるのかとかもわかりにくいですよね。お客さんの声も聞けないし、表情もあんまりわかんないし。

―だからこそ、外に合わせるんじゃなくて、自分たちなりの正解を見つけることの方が重要だった。

井上:そうですね。アルバムの曲をすでにライブでもやってるんですけど、ライブを意図して設計してなくても、実際にやってみると「ここ盛り上がるな」みたいな発見もあるし、その盛り上がりをちゃんと自分たちでも感じられるから、結果的によかったんでしょうね。

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