「ツタロック DIG LIVE vol.9 -OSAKA-」大阪初開催、個性豊かな若き才能9バンドが集結

トップバッターは「murffin discs オーディション2020」の準グランプリアーティストにも選ばれたpachae。ところがライブ前夜、バンドの公式Twitterにて突如デカ(Dr.)の脱退が発表された。音山大亮(Vo.)は曲に入る前にそのことに触れ「急な報告になって本当にごめんなさい。ここからもpachaeは止まることなくやっていくつもりなのでよろしくお願いします」と全員で深々とお辞儀。この日はみっつー(Ba.)とカムラ(Dr.)をサポートに迎えた新体制でライブが行われた。ファンにとってはバンド創設メンバーの突然の脱退に戸惑いもあっただろう。しかし音山の指パッチンを合図に「エゴイスティック・レスキュー」からスタートしたライブは、ロック、ポップ、ファンク、歌謡曲などのジャンルをクロスオーバーしたキャッチーな楽曲たちの連発で、確実に客席を踊らせていった。曲の構成は個性的だが、耳に残るメロディや音山の歌声、自然に体を任せてしまうグルーヴには中毒性がある。バンバ(Gt)のギターソロが炸裂した「ムスカイ・ボリタンテス」や、さなえ(Key.)の高音がアンサンブルを生み出した「遣る方無いブルース」など演奏力の高さもしっかりと提示。唯一無二の世界観をカラフルに彩った。音山の実験的なMCを含め、まだまだ秘めた創造力と野心がありそうだ。未知数を感じたステージだった。


pachae(photo by 松本いづみ)

圧倒的な生命力とエネルギーを全身で解き放ったのは、東大阪発の3ピースバンド・ammo。リハから感じた3人の気合いは、爆発力を伴って演奏に集約された。1曲目の「未開封」から空気をビリビリ震わせるような疾走感と勢いで突っ込んでくる、その熱量は言わずもがな会場に伝わり、のっけから手が上がる。岡本優星(Vo.Gt.)の叫びにも似た歌声、北出大洋(Dr.)のパワフルで重量感のあるビート、川原創馬(Ba.Cho.)の支えるベース。川原が左足を軸に、くるんと片足を蹴り上げる仕草も癖になる。「寝た振りの君へ」につながる弾き語りでは「憧れ、BIGCAT歌ってる、俺らを、見てて」と岡本が力強く歌う。リアルな心情を叙情的に歌い上げ、しっかり会場を掌握した。MCで岡本は言った。「この目で今見たもの、それだけを信じてもらって大丈夫なんで」。潔いほどの現場主義。彼らは2021年、125本のライブを行った。単純計算で3日に1本。まるで「俺たちの生きる姿をその目で見て、その耳で聴いて、その体で示して」と叫んでいるようだ。「CAUTION」にある〈身体に閃光猛スピード走る衝動 奏でていたいんだ〉をそのまま体現するかのように豪速球でたたき込み、「生きて音楽を鳴らすバンドがここにいる」という証を刻みつけた最高のステージを見せてくれた。


ammo(photo by 松本いづみ)

Rolling Stone Japan 編集部

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