「ツタロック DIG LIVE vol.9 -OSAKA-」大阪初開催、個性豊かな若き才能9バンドが集結

対バンライブの醍醐味は、前の出番のバンドが良いライブをすると連鎖反応的に熱量が伝播してゆくところだと思う。続いてステージに立った名古屋の4ピースバンド・ねぐせ。も気合いを感じさせるライブで魅了した。彼らは2020年のコロナ禍に結成された。ルーツがMrs.GREEN APPLE、影響を受けたのがMr.ふぉるてやKALMAというから、本当に次世代バンドであることを実感する。なおと(Dr.)がパワフルにドラムを叩きこみ「BIGCATから宇宙へ!」とりょたち(Gt.Vo.)が高らかに叫ぶ。「片手にビール」からの丸い歌声と良質なメロディが会場を満たし、しょうと(Ba.)がクラップを煽るとあっという間に会場の後ろまでクラップが広がる。ツタロックに出るのが念願だったという彼らは、とにかく笑顔で楽しそうに演奏していた。その姿を見ているだけでこちらも幸せになってしまう。途中、りょたちのギターの弦が切れるトラブルもあったが、りょたちが戻るまで3人のセッションと観客のクラップで場をつなぎ、お互いの絆を確かめる瞬間が生まれたこともこの日のハイライト。自然に体が跳ねた新曲「グッドな音楽を」や、なおや(Gt.)のギターソロがバッチリ決まった「スーパー愛したい」などグッドメロディを連発し、客席を魅了した。コロナ禍で結成されたねぐせ。は観客が声を出せる状況でライブをしたことがない。これから声が出せるようになる日が来たのなら、どんどんパフォーマンスを更新してゆくのだろう。バンドというものの良さを存分に見せつけたライブだった。


ねぐせ。(photo by 松本いづみ)

続いては3月に行われた「ツタロックフェス2022」のO.A.もつとめたユアネス。事前インタビューで古閑翔平(Gt.Prog.)が「これからのユアネスの定番曲になるであろう」と答えていた「アミュレット」から音を奏でてゆく。曇りない一筋の強さを貫いて、会場の一番後ろまでくっきり届く黒川侑司(Vo.Gt.)の歌声は、一瞬でその場の空気を変える力を持つ。安定感がありつつもダイナミックな小野貴寛(Dr.)のドラム、主張しすぎないが確実にサウンドの厚みを担う田中雄大(Ba.)のベース、古閑の感情に触れるギターが作り出す重厚なアンサンブルが黒川の歌声を支える。さらに変拍子やアレンジでドラマティックに世界観を増幅させ、ピアノの旋律と歌詞が物語性を引き立てる。ユアネスの生音をくらったらもう釘付けになるしかない。『「私の最後の日」』での、髪の毛一本にまで染み渡るほどの黒川の限りなく高く響く歌声は、あまりに美しすぎて息が止まりそうになった。ラストの「籠の中に鳥」では古閑のギターソロが天井まで羽ばたき、世界観の美しさにただ虜になった。圧倒的な表現力と存在感を示し、すさまじい余韻を残してステージを去ったユアネス。いつまでも鳴り止まなかった拍手が何よりの証拠だろう。


ユアネス(photo by 松本いづみ)

折り返し地点で登場したのは、2019年に大阪で結成された「ハク。」。平均年齢19歳で十代才能発掘プロジェクト「十代白書2021」でもグランプリを獲得した実力派。「ワタシ」「ハルライト」といった爽やかでメロディアスなサウンドに、あい(Gt.Vo.)の透明感のある歌声が会場を満たしてゆく。なずな(Gt.)、カノ(Ba.Cho.)、まゆ(Dr.)が彼女の歌声を支える。軽やかな歌声とディレイのきいたギターがドリームポップ的な「ナイーブ女の子」、流れる水を連想させるたゆたうアンサンブルが心地良い「ame.」など、浮遊感のある軽やかでポップなロックで柔らかく会場を包んでいった。終始笑顔で朗らかに演奏する彼女たちのサウンドは丸くてまろやかで、ひだまりの花畑で駆けているようだった。「皆の1日が幸せなものになりますよーに!」との言葉から、ラストは「BLUE GIRL」でロックに締める。透明感があるだけではなく、曲によってシズル感や浮遊感を出すなど、細やかに変化するあいの歌い方には表現力の深さを見たし、カノのコーラスはそこにもうひとつ華を添えていた。インタビューで「どこか純粋さを感じるライブになるのではないか」とあいは語っていたが、佇まいや表情も含めてまさにピュアなパフォーマンスを見せてくれた。


ハク。(photo by 松本いづみ)

「関西出身のジャンル不特定6人組」と謳うOchunismは、揃いのツナギを着て登場。1曲目は「Mirror」。凪渡(Vo.)の高い歌声がグルーヴィに響き、イクミン(Dr.)の繰り出すリズムに思わず体が揺れる。ちゅーそん(Gt. )からkakeru(Ba.)のソロのカッコ良さに痺れ、Sampler okadaのサンプラーさばきに釘付けに。ソウルフルな「freefall」で熱量を上げ、たいち(Key.)の高音がアダルトな「rainy」でメロウに聴かせる。ジャンルレスを掲げる彼ららしく、ロックやR&B、HIPHOPなど様々な要素を織り込んだ楽曲を次々に繰り出し、BIGCATをダンスフロアに変えていった。MCでは凪渡が「ステップ踏んだり好きなように楽しんでくださいね。大阪のバンドですからBIGCATに立てて本当に嬉しいです」と述べる。後半はプチョヘンザと手拍子で会場の一体感を高めた「Mongoose」、EDMの要素が入ったダンスミュージック「shinsou」など、問答無用で客席を巻き込んでゆく。縦横無尽に駆け巡るサウンドの波に内から湧き出る情熱を刺激される。ラストは4月に配信リリースされた新曲「夢中」。彼らはこの曲でメジャーデビューした。楽曲の幅広さとOchunismワールドで客席を魅了したライブだった。


Ochunism(photo by 松本いづみ)

Rolling Stone Japan 編集部

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