スラッシュが語る最新作『4』とライブ復活への想い、飛ばされないギターソロの条件

 
レニー・クラヴィッツと1991年の記憶

―今回登場する日本盤デラックス・エディションは、ロサンゼルスのStudios 60での無観客スタジオ・ライブの映像が収められたDVDとの2枚組仕様になっています。昨年5月28日に行なわれているこのライブについては、どんなふうに記憶していますか? 

スラッシュ:アルバムをレコーディングしたのはパンデミック真っ只中の2021年3月のことでね。作ってはみたもののリリースまでに長い時間待たされることになったんで、その間を利用して撮影することにしたんだ。俺たちだけで倉庫のようなスタジオに入ってセットアップし、今作の全曲にこれまでのアルバムからの曲もいくつか交えながらライブをやり、それを撮ったんだ。家から出て演奏できるというだけで楽しかったよ。バンドは常にツアーに出てライブをやる生活が染みついているものだから、ロックダウン中、一箇所に閉じ込められて、長期間にわたり何もできずにいるというのは耐えられないことだった。だからその撮影現場がどんなサイズの場所だろうと、家から出てプレイできるのは大歓迎だった(笑)。無観客ではあれ、あの時にみんなでジャムできたのは嬉しかったし、自分たちにとってすごく意味のあることだったと思う。



―どんなアーティストもオーディエンスの前でプレイするめにこの道を志し、人々に披露するために曲を作ってきたはずですもんね。去る2月、ザ・コンスピレイターズとのツアーが始まった時はどんな気分でしたか?

スラッシュ: ツアーがようやく始まった時は本当に興奮したよ。ロックダウンの閉塞感たるや、とんでもないものだった。まるで「正気を保ちながらどこまで我慢できるか」を試すテストみたいな感じでさ(笑)。だからオーディエンスの前でライブをやれる機会が訪れた瞬間、「やった!」という気分だった。とはいえ、ある意味まだパンデミックは続いている。今もコロナと日常的に付き合っているわけだし、ライブを行なうためには制約や守らないとならないプロトコルも多い。ステージで演奏するうえでは特に何の支障もないけども、ツアー生活に伴うそれ以外のいろいろな場面で影響を受けている。ただ、面白いのは、オーディエンスの前で演奏できさえすれば、そんな息苦しさは一切気にならないってことだよ。ステージに上がっている2〜3時間に限っては、超が付くくらいエキサイティングだからね。実際、2月から3月にかけて実施したUSツアーは、このバンドにとって過去最高のツアーになった。だから今後のツアーについても、今から期待感しかないんだ。

―そのツアーの際には、かつてあなたがレニー・クラヴィッツと共作した「Always On The Run」もセットリストに組み込まれていましたよね。あの曲をセレクトしたことには何か理由があるんですか?

スラッシュ:実は過去にも何度かやったことはあったんだけど、あのツアーの際には正式にセットリストに入れてみた。べつに話し合ってそう決めたというわけではないよ。この曲をやって、あの曲をやって……じゃあ「Always On The Run」もやろうか、みたいな話の流れになって「おお、やろう!」ってことになっただけの話なんだ。

―その曲が収録されたレニーのアルバム『Mama Said』がリリースされたのは1991年のことでした。同じ年にはガンズの『Use Your Illusion Ⅰ / Ⅱ』も出ているわけですが、31年前のこの年をどんなふうに記憶していますか?

スラッシュ: 年号の記憶はあんまり定かじゃないんだけど(笑)、レニーに会った時のことはよく憶えているよ。俺は、彼のアルバム『Let Love Rule』の大ファンだったんだ。ガンズで何かのアワードの授与式に出席した際に楽屋でレニーに遭遇して、あのアルバムがどれほど好きかって話をした。その時、直後にガンズでのパフォーマンスを控えていたから俺はギターを抱えていて、そこでたまたま弾いたリフに対してレニーが「それは何?」と反応してきたんで「最近ちょっと温めてるリフなんだ」と答えたんだ。するとそれから数ヵ月後、彼から連絡があって「あのリフを録音しよう」と言われてね。それが「Always On The Run」になったというわけなんだ。そのことは今もはっきりと憶えている。彼とはそれ以来の友達だよ。(注:参考までに、スラッシュとレニーには同じ高校の同級生だったという過去があるが、当時は顔見知り程度の関係だったようだ)



―なるほど。そのツアーの際にはエルトン・ジョンの「Rocket Man」のカバーも演奏していましたよね? それについては?

スラッシュ:そっちについては少々長い話になるんだけど……。映画のスタントマンをやっている友人がいてね。彼がスネーク・リヴァー・キャニオンの上をロケット(人間大砲)で飛び越えることになったんだ。昔、エヴェル・ニーヴェル(命知らずの冒険家として知られた伝説的スタントマンでありエンターテイナー。2007年に他界)が挑んだみたいにね。その挑戦は見事に成功し、それがドキュメンタリー映画『スタントマン』(2021年公開のアメリカ映画。日本でも同年夏よりディズニープラスにて配信)になった。で、その映画のために音楽を提供して欲しいと言われ、ザ・コンスピレイターズと一緒に「Rocket Man」を録音した。ただ、映画の配給権をディズニープラスが買ったので俺たちの音源はリリースできなくてね。俺たちのアルバムが出るちょっと前に映画の公開を経ていたことで、ようやくライブで演奏できることになったんだ。


Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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