スラッシュが語る最新作『4』とライブ復活への想い、飛ばされないギターソロの条件

 
マイルス・ケネディへの信頼感、パンデミックの影響

―今はすでにガンズ・アンド・ローゼズのツアーが始まっているわけで、ザ・コンスピレイターズを引き連れてのツアーの続きはしばらく先になるのかもしれませんが、『4』に伴うツアーでの日本公演の可能性はありそうですか?

スラッシュ:正直、俺にはまったくわからない。というのも、計画していたスケジュールをパンデミックがすべて白紙にしてしまったからね。だから今も、キャンセル分の埋め合わせをしながらいろいろやっているわけで。だけど日本でやることが決まったら、真っ先に君たちが知ることになるはずだよ。

―朗報をお待ちしていますよ。実際、ザ・コンスピレイターズとのツアーとガンズでのツアーの際において、あなた自身の中での精神的なモードに違いはあるんでしょうか? スイッチを切り替えるような部分というか。

スラッシュ:俺にとっていちばん重要なのは、ライブで演奏すること自体なんだ。もちろん自分でも良いと思える曲が書け、それをレコーディングするというのも最高の体験だけど、それはライブで演奏するための手段でしかない。ただ、ライブをやるってこと自体は同じでも、一緒に演奏する顔ぶれが変わればダイナミックスが変わってくるから、当然違いは生じてくる。ライブは昨日よりも今日、今日よりも明日という具合に毎回成長させられる経験なんだ。「ここをどう弾こう?」「ここはどうしよう?」と1本1本のショウに挑みながら、そのたびに新しい何かを知ることになる。だからこそものすごい充足感を得られるし、楽しいんだよ。

―今やマイルス・ケネディは、他の誰よりも多くのオリジナル・アルバムをあなたと共に録ってきたボーカリストということになります。彼についていちばん素晴らしいと感じているのはどんな点でしょうか?

スラッシュ:1stソロ・アルバムで「Back From Cali」と「Starlight」をマイルスと一緒にやった時、本当にウマが合ってね。アルバム発売に伴うツアーをするにあたって「バンドを作らなきゃ」となった時、まずマイルスに「やってくれないか?」と声をかけた。彼の声域なら、あのアルバムの曲だけじゃなく、ガンズやヴェルヴェット・リヴォルヴァーの曲も全部網羅できると思ったからだよ。そして実際にツアーを一緒に回ってみて、俺たちの間には何をしなくてもうまく行くケミストリーがあるってことがすぐにわかった。曲を書くのも彼とだと楽だ。シンプルでオープンマインドな人柄だから、本当にやりやすいよ。マイルスだけじゃなく、ブレント、トッド、フランク……バンド全員がすごくやりやすい連中なんだ。ザ・コンスピレイターズは曲を書き、レコーディングし、ライブでプレイするのが大好き、というシンプルなバンドなのさ。難しいことは何もない。だからこそ、こうして長く続いているんだと思う。


スラッシュfeat.マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズ

―そういえば『4』のレコーディング中、あなたもマイルスもコロナ陽性になってしまったんですよね。そのことはアルバム制作に影響しませんでしたか?

スラッシュ:何が起こったかというと……新しいスタジオ・アルバムを作ると決めると、まずデモを作ってメンバーたちに送ったんだ。そんなことをしたのは初めてだったよ。コロナでバンドが集まれなかったから、そうするしかなかった。

―全員でジャムをしながら曲を作るというのが不可能だった、ということですね?

スラッシュ:そう。だからプリ・プロダクションの段階で初めて全員が集まり、2週間ほどでアレンジをある程度まで作り上げていった。そしていざレコーディングとなった時には、メンバーのほとんどがラスヴェガス在住ということもあって、そこに集まり、コロナ対策でツアーバスを借りてナッシュヴィルに移動した。バスに乗る前にPCR検査を受けた時点では全員が陰性だった。レコーディング自体は1日2曲の速いペースでスタジオ・ライブ的に進めていったので、5日間で終わった。ところがその最終日、俺がコントロール・ルームに居たら、マイルスが電話をよこしてきてね。「同じスタジオに居るのにどうして電話してくるんだ?」と聞いたら「陽性だった」と言うんだ。しょっちゅう検査をしていただけに「くそっ!」と思ったよ。で、マイルスはナッシュヴィルの宿泊先のAirbnb(アメリカの貸別荘チェーン)の自室で自主隔離になった。その直後、ブレントもトッドも陽性となり、全員が隔離となった。俺とプロデューサーとフランクは、それからの半日でオーバー・ダブの作業もやり終えた。幸いマイルスのヴォーカルはすべて録り終えていたから、そのミキシングもやろうということになったんだけど、そこで今度は俺自身の陽性が判明した。そんなわけで全員が自主隔離ということになり、その期間が解けた段階でまたスタジオに戻ってミキシングの作業を終えたんだ。



―パンデミックにより精神的ダメージを受けたという人はミュージシャンの中にも多いはずです。あなたの場合、何かそうした影響というのはありましたか?

スラッシュ:コロナ禍において俺がいちばん思ったのは、今の自分がもうドラッグをやっていなくて良かった、ということだな。もしもいまだに使っていたなら、パンデミックを生き延びられなかったかもしれない。もうひとつ痛感させられたのは、今現在のパートナーのありがたさだね。仮に今の自分と一緒に居るのが元カノたちのうちの誰かだったとしたら、俺かその誰かのどちらかが命を落としてたんじゃないだろうか。ただ、パンデミックは少しばかり良いことももたらしてくれた。まずは、子供たちと過ごす時間を持てたこと。これまではツアーで家に居られなかったから、子供たちとはすれ違いばかりだったし、長い期間一緒に過ごすことができずにいた。そしてもうひとつ、愛猫の最期を看取ることができた、というのがある。うちで飼っている猫のうちの一匹が持病を抱えていてね。コロナのおかげで家に居られたことで、その最後の時間を一緒に過ごすことができたんだ。パンデミックがもたらしてくれたポジティブな面がそれだったとすれば、ネガティブな面というのはここでは語りきれないほどたくさんあったし、まるで我慢大会のような日々でもあった。ただ、それは同時にクリエイティブな期間でもあった。このアルバムに収録された曲以外にもたくさん書いているんだ。今回使ったのは、いわばパンデミックに関係した曲のみ。それ以外にも結構あるから、それらは次のアルバムで使うことになると思う。

―つまり『4』にはパンデミックに触発されながら生まれた曲ばかりが収められている、ということなんですか?

スラッシュ:そういうこと。パンデミックのフラストレーションから書けた曲がいくつかあったから、そこに2019年のツアー当時に書いた曲を加え、10曲に絞ったんだ。10曲を超えない曲数のアルバムというのを一度作ってみたかった、というのもあってね。だから使われなかった良い曲がまだまだ残っているし、それは次回のアルバムで使うことにするつもりなんだ。

―『4』の収録曲の中で、あなた自身が特に気に入っている曲というと?

スラッシュ: 1曲を選ぶのは難しいけども、ツアーでやっていてすごく映えたのは「Spirit Love」だな。クールでスリージーなリフの曲で、マイルスが書いた歌詞はスピリット、つまり霊とセックスするという内容でね。ちょっと黒魔術的というか(笑)。あと、俺たちのアルバムには長目の大作が1曲つきものだけど、今作でのそれにあたるのが「Fall Back To Earth」だ。楽曲自体も歌詞もすごくクールだ。1stシングルになった「The River Is Rising」も当然気に入っている。今現在のザ・コンスピレイターズというバンドを一言で言い表すような、最高にいい曲だと思ってるよ。


Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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