矢沢永吉が語る、50年かけて行き着いたライブ哲学

ライブにおけるアレンジの考え方とは

ーアレンジのことでお伺いしたいんですが、今回の収録曲の中にはライブの度にアレンジが変わる曲や、あまり変わらない曲があると思います。例えば「バイ・バイ・サンキュー・ガール」は、ハードなサウンドでやっていたライブもありましたけど、今回収録されたライブ(「Come On!」1993年 日本武道館)ではすごくメロウなアレンジになっています。こうしたライブアレンジについてはどんなところにポイントを置いて考えているのでしょうか。

矢沢 やっぱり、レコーディングされた音がステージに立つとなったら、今度はレコードで聴くのとは違いますからね。お客さんがいるし、どうやってこのお客さんにこの曲を聴かせようかって考えると、アレンジは当然変わっていきますよね。それも、両方が答えですよ。レコードのオリジナル、それはそれでやっぱりいいし。僕はもう結構長くやっているから、いろんなアレンジをやりましたね。

ーその都度その都度、インスピレーションで「今回のステージはこうしてみよう」と考えるわけですね。

矢沢 そうです。例えば、「背中ごしのI LOVE YOU」(特典ディスクに収録)という曲なんかも、あれはオリジナルのレコーディングしたものがちゃんとあるわけですけども、ステージに立ったあるときに思ったんですよ。これは、パンクじゃないけども、ちょっと壊れ気味なギターの音で「グワーン、(ドラムの)ドンッドドンッパンッ、ドンッドドンッパンッ」って、「Be My Baby」(ザ・ロネッツ)みたいな感じで始まって、「何も見えない~」って歌い出す。ギターとドラムだけですよ? カッコイイのよ。それで1万人総立ち。

ー昨年行われた2年ぶりの有観客ツアー「I’m back!! ~ROCKは止まらない~」ファイナルの横浜アリーナ公演では、3曲目に歌われました。

矢沢 そう、あのアレンジ、カッコいいでしょ? だから、あの手この手ですよ。じつは本人が一番楽しんでいるんじゃないですか? 僕自身が、「今年はこういうアレンジで行っちゃおう」みたいな。どっちかというと、初期の頃の簡単なアレンジをちょっとバカにしてる自分が40歳ぐらいのときはいたんだけど、最近は全然そう思わないですね。

ー「ニューグランドホテル」もライブ定番曲ですが、矢沢さん自身お気に入りの曲じゃないですか?

矢沢 これは、ちょうど僕がイギリスに行きはじめた頃の曲ですね。(歌い出しを口ずさみながら)「Please Go~タラララララ~」っていうメロディなんですけど、それをイギリスのジョージ・マクファーレンとかと出会って、みんなでああでもないこうでもないって、曲を料理するわけですよ。そうすると、アレンジでゴロっと変わるんだよね。あの時代、僕はアレンジの面白さに魅了されたね。

ー今回収録されているのは「NEW STANDARD」~ Rock Opera2 ~(2006年 日本武道館)からのテイクで、普段のアレンジとはガラッと変わっていますよね。

矢沢 「Rock Opera2」ですよね。またそこで変えたりしましたね。だって、面白いじゃないですか? 例えば、「YAZAWA CLASSIC」を1回目のとき(2002年)に国際フォーラムでやったときだって、ファンのみなさんも「何やるのかな?」って思ってたんじゃないですか? そうしたら、小学生ぐらいの子どもたちが出てきてコーラスをしながら「時間よ止まれ」に入ってきて。あれは面白かったね。

ーやっぱり、ライブ会場によって色んな演出やアレンジが浮かんでくるわけですか?

矢沢 そうですね。やって、ハマったときは「ワオ!」って。僕は、自分で面白がってるなって思いますよ。だって、あの頃にああいうオーケストラを使ってライブをやったのは、僕が最初なんだもん。「ロックの矢沢」とは言うけど、オーケストラ入れてストリングス入れて、「時間よ止まれ」を劇場みたいにやっちゃったらどうなるのかな?って思った「YAZAWA CLASSIC」が、ああいう演出のはしりですよ。あれをやってしばらくしたら、みんな、ストリングスを使い始めたじゃないですか?



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