映画『エルヴィス』オースティン・バトラーとバズ・ラーマン監督が語る制作秘話

エルヴィス・プレスリーの伝記映画『エルヴィス』でプレスリー役を演じたオースティン・バトラー

7月1日から日本でも劇場公開されたエルヴィス・プレスリーの伝記映画『エルヴィス』。同作でプレスリー役を演じたオースティン・バトラーとバズ・ラーマン監督が、音楽史に名を刻んだアイコンの物語を映画化するまでの道のりをローリングストーンUK版に語ってくれた。

米国出身の俳優のオースティン・バトラーは、バズ・ラーマン監督作『エルヴィス』の“キング・オブ・ロックンロール”役に抜擢されたことを知ると、近代アメリカ文化に最も大きな影響を与えたエルヴィス・プレスリーという人間を掘り下げることを決意した。プレスリーの人間性とは何か? バトラーは、その答えを探そうとした。数カ月かけて数えきれないほどの文献やドキュメンタリーを漁ったバトラーは、プレスリーと自分の間に深い悲しみをめぐる共通点があることを知る。

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「エルヴィスの人間性を知るための鍵を探していたら、まさにその時、エルヴィスが23歳の時に母親が他界したことを知ったんだ」とバトラーは本誌に語る。「僕も、23歳で母を亡くした。彼と同い年で母親を失ったことを知って、僕はかつてないほどの親近感を覚えたね。母の死は、僕にとって人生最大の悲しみだったし、きっとエルヴィスもそうだったと思う。それを知って、人間としてのエルヴィスの姿に触れることができたよ。エルヴィスがひとりぽつんと部屋にいる時の気持ちが良く理解できたし、母親の死を経験すると、心のなかにぽっかり空いた穴の存在を絶えず感じるんだ」



母親の死という共通の体験は、バトラーにとって大きな助けとなった。これがあったからこそ、バトラーは映画史に残る名演を実現することができたのかもしれない。ありとあらゆる方面からプレスリーの特徴を見事につかんだバトラーの演技は、アカデミー賞に値するだけでなく、彼がオースティン・バトラーであることを観客に忘れさせるくらいリアルなものになった。

バトラーは、アメリカ社会を揺り動かした青い瞳の青年を一見簡単そうに演じている。そんなバトラーの名演がさらに冴え渡るのは、プレスリーが自らの弱さや死へとつながる個人的な葛藤を見せる時だ。

だが、同作の本当のハイライトは、プレスリーの魅力を余すところなくとらえたラスベガスの常設公演のシーンだ。圧倒的にリアルなバトラーの演技は、目の前に本物のプレスリーが立っているかのような錯覚をもたらす。煌びやかな演出で知られるラーマン監督による過剰なまでに華やかなラスベガスの雰囲気もよく合っている。

Translated by Shoko Natori

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