アジカン後藤正文のサマーソニック談義 フェスの思い出と注目アクトを語る

今年の注目アーティストを語る

矢島:今年だとやっぱり、The 1975がいちばん楽しみですね。20代前後のミュージシャンをインタビューすると、影響を受けているアーティストとしてThe 1975の名前がよく挙がるんですよ。今回のライブもまた誰かの人生を動かすものになるんじゃないかなと思います。個人的に、2019年に出たときのライブが人生ベスト級というくらいよくて。翌年の春、マシュー・ヒーリーに電話インタビューをしたとき「スーパーソニック楽しみにしています」と伝えていたんですけど、結局その年は中止になってしまって残念でした。

後藤:マシューさん、めちゃくちゃいい人そうですよね。俺が知っているマンチェスター出身のフロントマンでいちばん性格が良さそう(笑)。

矢島:ロックスター然としてない感じがありますよね。インタビューもすごく真摯に答えてくれました。

後藤:僕らを置いてけぼりにするロックスターというより、寄り添うような距離にいてくれる隣人という印象。同じ時代を生きている人間という感じがしますよね。

小熊:2014年と2019年にサマソニの楽屋でマシューに取材しましたが、前者のときに「ポップもロックも対等に聴いてきた」という話をしていたのが印象的で。デビュー当初はチャラい印象もありましたが(笑)、そういう感性を持ち合わせていたからこそ、The 1975は今日の最重要バンドになれたんだろうなって。矢島さんの話した2019年のライブを観たとき、そんなことを考えました。



後藤:なるほど。ほかには誰が楽しみですか?

小熊:リンダ・リンダスとザ・クロマニヨンズが同じ日、同じステージに出演するのも粋な計らいだし、やっぱり楽しみなのはリナ・サワヤマ。世界中のマイノリティをエンパワーする説得力の塊みたいな表現者が、ニューアルバム『Hold The Girl』(9月2日リリース)発表直前のタイミングで来てくれるんだから嬉しいですよね。曲調もアップリフティングで勇ましいものが多く、かと思えば包み込むような優しさもある。コーチェラの配信ライブも素晴らしかったし、見逃せないステージになると思います。




つやちゃん:私はマネスキンですね。彼らもコーチェラの配信でファンになった人が多いみたいです。自分も観て、ライブがめちゃくちゃヤバいなと思いました。

後藤:彼らは一見キワモノのようですけど、ロックスターとして飛び抜けそうな要素をたくさん感じます。なにより笑えるのがいい。すごい音楽家はみんな笑える要素を持っていると思うんです。ボブ・ディランもそうだし、キース・リチャーズだってそう。そういう力をマネスキンにも感じます。

つやちゃん:昨今のロック復権における象徴的なバンドだと言われがちですけど、自分はーーもしかしたら若い人たちも、彼らをロックという意識では聴いていないのかもしれません。むしろ、あらゆる音楽をシアトリカルに昇華させていく、ポストジャンル的で非常に今っぽいグループというイメージです。マネスキンって、ライブでもカバー曲を披露したりするじゃないですか。その選曲にもすごく批評性が感じられていつも唸らされるんですよね。ロックからポップスまで幅広くて、いわゆる大衆的なヒット曲みたいなものもフラットにカバーしてしまうという視点がすごく現代的。煌びやかな衣装で、運動神経の趣くままごく自然にこなしちゃう。

後藤:ああいうファッションやスタイルを意図的に選んでいるんでしょうね。日本の人も特に抵抗なさそう。数々のヴィジュアル系バンドを目撃してきた我々からすると、あのくらいのコスチュームを受け入れる度量はありますよ、という感じ。

つやちゃん:加えて、やっぱりダミアーノ・デイヴィッドがすごい。今はボーカリストに多種多様さが求められている時代ですが、彼の歌はそういう点でも現代的。ちょっとラップっぽいテイストもありますし、オリジナリティを備えた歌唱だと思います。



小熊:この日のメインステージは、The 1975からKing Gnu、マネスキン、リナ・サワヤマやビーバドゥービー、Mrs. GREEN APPLEまで一堂に会するという。

後藤:もはや異種格闘技戦といった趣だね(笑)。




矢島:Rolling Stone Japanとしては、BE:FIRSTにも注目してほしいですよね。彼らは去年のスーパーソニックが初ステージだったんですけど、この1年でかなり進化していて、先日のワンマンもグローバル基準の演出に挑戦しようとしていることが伝わってくるものだったので、今年のサマソニも期待していいと思います。

あと、最後にひとつ言っておきたいのは、去年のスーパーソニックはクリマンがめちゃくちゃがんばってくれた、ということ。隔離期間とか面倒くさい手続きとかを全部乗り越えて、海外からアーティストを呼んでくれた。それがコロナ禍でのフェスのあり方を前進させてくれたと思うんです。そういう意味で、スーパーソニックありがとう、そのなかで日本に来てくれた海外アーティストにもありがとう、というのは言っておきたいです。

後藤:たしかに。コロナ以前は、フェスがあること自体が当たり前になっていましたけど、やっぱり喜びを噛みしめながら行くべきですね。一生に何回行けるかわからないもの、なので。






SUMMER SONIC 2022
2022年8月20日(土)〜21日(日)
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※ASIAN KUNG-FU GENERATIONは8月20日(土)大阪会場、21日(日)東京会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/


APPLE VINEGAR -Music+Talk-
Spotifyで配信中、毎週水曜日18時に新しいエピソードを公開
番組リンク:https://open.spotify.com/show/6dkTPluL6El48dHAc8eVXp


ASIAN KUNG-FU GENERATION
『プラネットフォークス』
発売中
特設サイト:https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/PlanetFolks/

Tour 2022「プラネットフォークス」
9月30日(金)11月19日(土)
詳細:http://www.akglive.com/tour2022/

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