フジロックで名演、Dawesが語るジョニ・ミッチェル復活劇と音楽的チャレンジ

最新作での音楽的チャレンジ

—さて、ようやくアルバムが初めて日本でリリースされ、フジロックでの初来日となりました。

テイラー:YES!! 

—これまでもアルバムごとにチャレンジをし、変化を見せてきましたが、今回はまた大きな変化を見せてくれましたね。正直、驚きました。今は、やりたいことをやり遂げたぞ、という心境なのでしょうか。

テイラー:今回は、マイルス・デイヴィス、ハービー・ハンコック、フランク・ザッパ……自分たちがずっと聴いてきたルーツでありながら、これまでアルバムに反映させたことはなかったから、やってみようってことになったんだ。僕たちはステージで、昔の曲を演奏しながら新しいパーツを加えて長くしていくようなこともしていたから、それをアルバムでやってみようとも思った。アルバムだから9曲や10曲にまとめなくちゃ、というようなこだわりは捨てて、1曲が長くなったらなったでいいし、という感じで。ミュージシャンとしての自分たちを祝福するような作品にしたかったんだ。お互いのいいところを全部引き出そうとも思った。僕もベストな曲を書く努力をしたけれど、同時に、それぞれのメンバーにスペースを与えて、みんなの素晴らしさをフィーチュアして作り上げたのがこのアルバムなんだ。




—全員揃って「せーの」でライブ・レコーディングしたんですか?

テイラー:録音し直しは何度かしたけどね。それが10分とかだから、すごく大変だったけど(苦笑)。でも、途切れ途切れではなく、1曲丸ごとライブで録音することによって、ライブのダイナミズムやエネルギーがアルバムのリスナーにも伝わると思うんだ。多少ギターやキーボードを重ねたりはしているけど……、そこはライブで再現できない部分だね。

—最近のインタビューの中で、本作制作のそもそものきっかけになったのはウェイン・ショーターだったと話していましたが、彼の音楽のどこにそんなにハマったのですか?

テイラー:他のメンバーはジャズが好きで、僕ももちろん聴いたことはあったけど、理解するまでには至らなかったんだよね。心からエンジョイすることができなかった。でも、ウェイン・ショーターの『Speak No Evil』は、初めて自分の耳に残った、心から「いいな」と思えた作品だった。いまだに演奏を真似することは、難しくてできないけど(笑)、大好きな作品だよ。聴いていると、まだ若い音楽リスナーだった頃の気持ちに戻れる気がする。ロックを聴いている時はコード進行や曲の構成とか、大抵のことは詳細まで理解できる。でも、このアルバムに関しては、どうやって作ったのかがわからない。いい意味で10歳の子供に戻って楽しめるんだ。



—新鮮な驚きみたいなものを味わったんですね。

テイラー:まさに。僕たちは2009年に最初のアルバムを制作したけれど、あのときの気持ちに戻れたのが今回のアルバムだとも言えるかな。自分たちに何ができるのか、どの程度のことができるのか、何をやり遂げられるのか、何もわからなくて、でもそのことにすごく興奮したんだ、未知の世界の広がりに……当時はね。それから、2枚、3枚と作り続けていくと、慣れてきて心地よく作品を作ることができるようになる。弾き方も作り方もわかっているからね。でも今回は違った。新しいことに挑戦したから、あの新鮮さを再び味わって、未知の世界にエキサイトしながら作ることができたんだ。まるでデビュー・アルバムを作ったときのようにね。

—本作のプロデュースを、これまで一番多くあなたたちの作品を手掛けてきたジョナサン・ウィルソンに依頼した決め手は何ですか?

テイラー:パンデミックのせいで遠出はできなかったから、同じロサンゼルスに住んでいるジョナサンにお願いするのがいいと思った、というのが小さな理由。それより大きな理由は、彼が僕たちのアンビションをよく理解してくれるプロデューサーであること。彼は、スペイシーで長尺な曲も得意としているし、2年にわたるロジャー・ウォーターズとのツアーを終えたばかりだった。ロジャーの横で毎晩「Shine On You Crazy Diamond」を演奏していた彼には、その世界観がよくわかっているはずだと思った。10〜15分の曲をどうやって観客に楽しませればいいか、とか、音のテクスチャーの面で大きな助けになってくれると思ったんだ。



—そして実際助けになった。

テイラー:もちろん。彼はマルチな楽器奏者でもあって、しかもすべてがエキスパート。ギター、ベース、ドラムス、ピアノ……、何にしても、その演奏者同士でないと通じない言語も共有できるからすごく助かっているよ。「Ghost In The Machine」は2つのドラム・セットを使用して一方はグリフィンが、もう一方はジョナサンが叩いているんだ。これをライブで再現できたらおもしろいいと思っているんだけどね。プロデューサーの中には、歌詞のことや曲構成に関しても口を出したがる人がいるけど、彼はそうじゃなくて、あくまでもサウンド、サウンドが描き出す世界観に特化していて、他は好きにやらせてくれる。今回、とりわけ音のトーンの面では大きな助けになってくれたよ。

—彼は以前フジロックに出演しているから、もしかしたら今回一緒に来日かな?と少し期待したんですけど。

テイラー:だったらよかったんだけど(笑)、今またロジャーとのツアーの真っ最中だからね。

Translated by Miho Haraguchi

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