ソニックマニア総括 プライマル、カサビアン、スパークスらがもたらした熱狂と多幸感

 
映画で人気沸騰中、スパークスの快演

続いてSONIC STAGEにてトリオ編成で熱演中のCorneliusを横目で眺めながら、スパークスを観にPACIFIC STAGEへ移動。レオス・カラックス監督の『アネット』と、ドキュメンタリー『スパークス・ブラザーズ』、2本の映画が日本でも公開されて、御年73歳のラッセル・メイルと77歳のロン・メイルが俄かに人気沸騰中。その効果か、これまでの来日公演ではあまり見かけなかった若いファンがステージ前方に多数集まっていた。ショウは『アネット』のオープニング曲、「So May We Start」で開幕。軽やかにジャンプを連発するラッセル・メイルは動きにも歌声にも切れがあり、年齢をまったく感じさせない。


スパークス(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)


スパークス(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

50年を超える長い活動の間に、ギターが核となるハードなロックンロールから、ディスコ、エレポップと変貌を続けたグループだが、ライブではそれら時代も作風も異なる楽曲を取り混ぜて披露していく。『Balls』リリース後、2001年の初来日時はメイル兄弟+ドラマーのみで打ち込み主体、エレポップ寄りの演奏に徹していたが、現在のようにツイン・ギター編成のバンドの方がグラム・ロック時代のレパートリーも断然映える。かといってどちらのサウンドにも寄りすぎないよう、アレンジの匙加減にも工夫が感じられた。


スパークス(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)


スパークス(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

なので、初期~ジョルジオ・モロダー期の人気曲ばかりでなく、「Angst In My Pants」「Tips For Teens」「Music That You Can Dance To」といった80年代のひねくれポップや、キーボードのロンが前に出てきてポエトリー・リーディング風に歌う怪曲「Shopping Mall Of Love」、フランツ・フェルディナンドとの合体ユニット=FFSの「Johnny Delusional」、そして現時点での最新作『A Steady Drip, Drip, Drip』(2020年)から選ばれた「Stravinsky’s Only Hit」「Lawnmower」「All That」まで、違和感を覚えることなくスムーズに聴けてしまう。そこから浮かび上がってくるのは、変わり続けた彼らの変わらない側面……予想を裏切る曲展開の斬新さと、飛び抜けたメロディの美しさ。圧倒的な楽曲の強度があってこそ、初めて成り立つショウだ。

もう何千回耳にしたかわからない「The Number One Song In Heaven」や「This Town Ain’t Big Enough For Both Of Us」がいまだにフレッシュに聞こえるのは何故だろう……と考えながら観ていると、早くもライブは終幕に。最後はそれらクラシックスに負けない、コロナ禍でなかったらシンガロングが起きるはずの名曲「All That」を朗々と歌い上げ、ドラマティックに締め括った。


ボーイズ・ノイズ(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)


ボーイズ・ノイズ(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

一方、カサビアンやスパークスの裏では、2000年代からエレクトロ・シーンを牽引し続けてきたボーイズ・ノイズ、近年は自身のボーカルを前面に出し、音と映像のシンクロで圧倒的な世界観を届けるマデオンが、ダンスを求める観客たちを大いに沸かせていた。彼らを筆頭としたDJアクトや、国内で人気を誇るラッパーたちを目当てに、若いオーディエンスが大勢訪れていたことも強調しておきたい。この幅広さこそ、ソニックマニアというイベントならではの醍醐味と言える。


マデオン(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)


マデオン(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

 
 
 
 

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