eillが語るネクストステージ、BE:FIRSTとの出会い、映画とのコラボから得たもの

『プレロマンス / フィナーレ。』について

―eillさんの新作EP『プレロマンス / フィナーレ。』に関しても聞かせてください。これも単に「楽曲提供」というか、「映画との共作」みたいな部分が大きいですよね。

eill:「プレロマンス」は、使われるシーンが決まっていたんですね。アニメがまだできあがってなくて声優さんのお声だけが入っている状態の映像を見て作りました。なので、秒数も、どういうアクションが起きるかとかも決まっていて。初めてここまで緻密に計算して作ったな、という感じでした。



―約80分の映画の中でeillさんの曲が4回も流れるから、壮大なコラボレーションだなと思いました。映画とミュージシャンのタイアップとして滅多にない形じゃないですか?

eill:お祭りみたいですよね(笑)。完成したものを観たときに、富貴(晴美)さんが劇判でアレンジしてくださった「片っぽ」のストリングスが流れるところで感動して泣いちゃって。やばかったですよね。

―「ここでストリングスバージョンが流れるのかー!?」ってなりました(笑)。「プレロマンス」は☆Taku Takahashiさんがアレンジに参加されていますが、J-POPライクなストリングスの使い方はeillさんの中で珍しいなと思ったし、全体的に新鮮なアレンジだなと。

eill:そうですね、ツーステップで。ストリングスは、いつもはもう少し難しい旋律が多いんですけど、あえて印象的なポップなものにしました。実はTakuさんにアレンジを頼む前に、いつものメンバーと一回アレンジを作って、ストリングスもギターもピアノも全部入れて。いつものようにアレンジしたものを、Takuさんがちぎってビートを足した曲になっているんです。

―へえ!

eill:今までやったことがないアレンジの仕方でした。「このくらいにしておいたら、きっとTakuさんがかっこよく仕上げてくれるだろう」って作ったものを、チョキチョキちぎられまくっていて、作った人たちはみんな笑ってました(笑)。でもすごく愛があって。何回もTakuさんが「嫌だったら絶対にやめるから」とおっしゃってくれて、すごく尊重してくれながら一緒に作らせていただきました。

―めちゃくちゃ面白い作り方ですね。「フィナーレ。」はまた違ったベクトルのこだわりがアレンジにも歌詞にも詰め込まれていると言えそうですが、いかがですか?

eill:「プレロマンス」は、ビートとかアレンジもすぐに思い浮かんで短い時間でできた曲だったんですね。でも「フィナーレ。」は悩んで、めちゃくちゃ時間がかかって。映画の「時空を超える」とかをどう音楽で表現しようかなと思って。最終的に、三拍子で始まって、時計のチクタクという音をきっかけに四拍子に変わる構成にして、時計とともに世界がガラッと変わる様子を曲自体に込めました。あと、効果音。海や雨の音とか、江ノ電に乗って音を録ったり、トンネルも走ってみたり。映画を見たあとの帰り道で聴いたらハッと思い出せるような楽曲であってほしいなと思って、そういう仕掛けみたいなものを考えて作りました。

―歌詞も、映画を見る前は「ラブソングなのにどうしてこんなに寂しげなんだろう」と思ったのですが、映画を見たあとに聴くと最後の“味気ないね”の意味が180度変わって聴こえてくるというか。声の使い方もいいですよね。最初は一本で歌っていて、“君がいいんだよ”と耳元で囁かれる感じがあったり。

eill:ありがとうございます。何もかも失ってでも、何かや誰かを選ぶということ――“ふたりぼっち”という言葉があるんですけど、「ふたりぼっち」って本当に寂しくて静かで。でも、悲しみさえも美しく見えるような楽曲であってほしいなって。それがすべてを包み込む愛であってほしいなと思って。歌も張るところは張って、張らないところは張らないで、ということを意識しました。メロディも2つしかないので、ボーカルを積むのか積まないのかとかはいつも以上に考えて作った曲ですね。歌詞はもう、しわくちゃになるくらい台本を読みました。閉じなくなっちゃって(笑)。

―しわくちゃすぎて?

eill:そうです。自分が気になる言葉と、そのときにどんな感情なんだろうっていうのを全部書いて。「自分だったらこう思う」とか。探しにいくような感覚で作ったので、いつもと真逆のやり方かもしれないですね。自分とリンクしていないと歌うときに感情が入らないので、そこをバランスよくやった感覚でした。

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