Alex G 孤高のソングライターが語る人生と宗教観、曲作りのミステリー

 
謎めいた存在感、宗教に対する考え方

現在のアレックス・Gのキャリアがあるのは、彼のファンがその音楽に深い意味を見出しているからに他ならない。2012年発表の悲しみをたたえた「Change」を彼がステージ上で歌う時、オーディエンスは口を閉ざしてじっくりと聴き入っているが、彼がインタールードで思いがけずシャウトすると、皆大きな歓声を上げる。彼がソーシャルメディアをほとんど使用せず、多くのインディーロックのアーティストのようなセレブレティらしさが皆無であるという事実は、その謎めいた存在感に拍車をかけ、ファンを強く惹きつけている。

「僕自身がそういうリスナーだったんだ」と彼は話す。「子供の頃はモデスト・マウスやエリオット・スミス、レディオヘッドなんかが好きで、特定のアーティストの作品を徹底的に聴き込んでた。他のことは全部どうでもいいってくらい夢中になって、そのアーティストが自分の親友であるかのように感じてた。僕の音楽のそういう中毒的な部分を、リスナーも感じ取ってくれているんだと思う」


Photo by Sacha Lecca for Rolling Stone

過去の作品には見られなかった『God Save the Animals』における最大の特徴は、宗教観が一貫したテーマとなっている点だろう。アルバムの冒頭の緩やかに下降していくメロディをバックに、彼はこう歌い始める。“誰もがやって来ては去っていく/そういうものなんだろう、でも神様だけはずっと僕のそばにいてくれた”。アルバム前半の別の曲では、偉大な存在を大胆に加工されたボーカルでこう表現する。“神は僕の創造主/ジーザスは僕の弁護士”

これらのモチーフは、必ずしも彼の信仰に対する考え方が大きく変化したことを示唆しているわけではなく(「そもそも一貫した考えを持っていないんだ」)、身近で起きた出来事に対する見解に過ぎないという。「友人のあるカップルが、突然信心深くなったんだ」と彼は話す。「信じる力はこれほどに人を変えてしまうのかって、心底驚かされたよ」。彼は最近、作家のジョイ・ウィリアムズが2016年に発表した短編小説集『99 Stories of God』を読んだという。「それが彼女の意図したことかどうかは分からないけど、僕はあれを読んだことで、たとえ自分が明確な考えを持っていなくても、そういうテーマについて議論してみたいと思うようになった」



アルバムのハイライトというべき「Miracles」は、大人としての責任と向き合おうとする若者の視点が描かれている。“いつかは子供が欲しいねって君は言う/でもベイビー、今の僕は自分のことで精一杯なんだ”。モリー・ガーマーが奏でるスウィートなカントリー調のメロディーに合わせてそう歌う彼は、続くヴァースで漠然とした疑問を投げかけている。“一体あと何曲書けばいいのだろう/全ての電源を落として眠りにつく前に”

来年2月に30歳の誕生日を迎えるジアンナスコーリは同曲について、「一時的に頭をよぎったこと」を形にしただけに過ぎず、特に深い意味はないと話す。「腰を据えて曲を書こうとするけれど、何のアイデアも浮かばなくて、結局ただダラダラしてることも多いよ」と彼は話す。「正直、歳をとるにつれて湧いてくるアイデアの数も頻度も少なくなってる。このレコードを作るのにとりわけ時間をかけたつもりはないけど、キャリアを重ねるごとに、アルバムをリリースするペースは落ちていくだろうね」

彼は肩をすくめてこう言った。「何かを制御しようとする行動は必ず裏目に出る。流れに身を任せるしかないんだよ」

From Rolling Stone US.




アレックス・G
『God Save the Animals』
発売中
国内盤CD:解説・歌詞対訳、ボーナストラック収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12871

Translated by Masaaki Yoshida

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