テイラー・ホーキンス追悼LA公演を総括 フー・ファイターズとレジェンドの濃密な6時間

 
クイーン、フー・ファイターズが登場

個人的にこのコンサートでもっとも感動的だったのが、サウンドガーデンのキム・セイルとドラマーのマット・キャメロン、ニルヴァーナのベーシストだったクリス・ノヴォセリック、フー・ファイターズのデイヴとパット・スメア、そして女優の活動でも知られるシンガーのテイラー・モムセンらによる「Black Hole Sun」だった。テイラー・モムセンのハスキーな歌声と迫力満載の演奏に度肝を抜かれながら、サウンドガーデン、ニルヴァーナ、フー・ファイターズのそれぞれが「メンバーの死」というトラウマを経験していることに気づき、驚がくした。


サウンドガーデン+クリス・ノヴォセリック+テイラー・モムセン(Photo by Timothy Norris)

会場に詰めかけた多くのファンにとってのハイライトは、おそらくクイーンのブライアン・メイとロジャー・テイラーが、フー・ファイターズのメンバーと演奏した「We Will Rock You」だろう。この曲でドラムを叩いていたのは、ロジャー・テイラーの息子であるルーファス・テイラー。彼はテイラーを師匠と仰ぐだけあり、ドラミングのスタイルも似ていたのも印象深い。

さらにブライアン・メイが、「もともとこの曲は今日演奏しないつもりだったんだけど、テイラーの奥さんから『結婚式でもかけたし、二人の大好きな曲だったからぜひ演奏してほしい』と頼まれたんだ」と話し、ギターとボーカルの弾き語りで「Love Of My Life」を熱唱。多くのファンが涙をこらえながら合唱していた。テイラーの奥さんと子ども達がステージに立ち、ブライアン・メイとハグする光景にも胸が締め付けられる。


ブライアン・メイ(Photo by Marotta Aysia)


ルーファス・テイラー(Photo by Oliver Halfin)

そして、多くのファンが待ち望んでいたフー・ファイターズのステージでは、テイラーの盟友ドラマーが次々とゲスト出演。「The Pretender」では再びP!NKをボーカルに迎え、ドラムはマーズ・ヴォルタのジョン・セオドアが担当。 「Walk」はトラヴィス・バーカー、「Low」はマット・キャメロン、「This Is A Call」ではレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのブラッド・ウィルク、「The Sky Is A Neighborhood」はウィーザーのパトリック・ウィルソンがそれぞれフィーチャーされた。また、「Medicine At Midnight」にパーカッションで参加した伝説的ドラマーのオマー・ハキムは、「Run」でドラムも担当した。


フー・ファイターズ(Photo by Timothy Norris)


マット・キャメロン(Photo by Danny Carey)


ブラッド・ウィルク(Photo by Timothy Norris)


パトリック・ウィルソン(Photo by Timothy Norris)


オマー・ハキム(Photo by Timothy Norris)

この日、もっとも意表を突かれたゲストといえば、全米一の人気コメディアンであるデイヴ・シャペル。なんと彼はフー・ファイターズと共にレディオヘッドの「Creep」を披露。会場中で大合唱が巻き起こる。フー・ファイターズの大ヒット曲「Best Of You」でドラムを叩いた上述のルーファス・テイラーが、曲を演奏し終えてから思わず泣き出した光景も印象的だった。

そして、テイラーの息子であるシェーン・ホーキンスが、大反響を巻き起こしたロンドン公演に続いて「My Hero」でドラムを演奏。これには誰もが笑顔がこぼれてしまう。シェーンの顔もドラミング・スタイルもテイラーとそっくりで、そこもまた微笑ましかった。フィナーレとなった「Everlong」ではチャド・スミスがいつも以上にエモーショナルにドラムを叩き、デイヴの「We love you, Taylor!」というMCを聞いたあとに周りを見渡すと、号泣しているファンも多かった。


フー・ファイターズ+チャド・スミス(Photo by Andreas Neumann)


デイヴ・グロール(Photo by Timothy Norris)

6時間以上もあるトリビュート・コンサートだったが、これでもかというくらいのロックヒーローたちがゲスト出演し、終わったあともまったく疲れを感じさせないほどの濃い内容だった。テイラーがいかにロック・ミュージックを深く愛していたのか、彼自身が様々な世代やシーンのミュージシャンからどれだけ愛され、その橋渡し的役割を果たしていたのかも痛感させられた。

そんなテイラーは、きっと今頃、天国で大好きなミュージシャンたちとセッションを続けているに違いない。そして今後もフー・ファイターズの動向から目が離せない。


Photo by Oliver Halfin

 
 
 
 

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