Saucy Dog、マカロニえんぴつと新たなバンドシーンー先ほど名前が挙がった、Saucy Dogやマカロニえんぴつについても伺いたいです。柴:今年の初め、芦澤さんと「Love music」(フジテレビ系列の音楽番組)に出演したとき、ロックシーンの新しい流れが2022年に始まっているという話をしたんです。
芦澤:コロナ禍でなかなかライブが盛り上げづらく、ロックシーンにとっては難しい時期であったと思うのですが、グッドメロディを奏でる新世代バンドがシーンを賑わせ始めていて。あの頃はちょうど、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」がロングヒットになっていた時期で。Saucy Dogもまだ「シンデレラボーイ」が大きく伸びる前でしたが、ヒットの予感は漂っていました。トレンドの芽が出始めたような。
柴:2組とも男性ボーカルが歌う女性目線の歌詞がフックになっている印象があります。そういう視点を持つバンドがブレイクしてきているのも2022年の傾向かなと。もちろんback numberやクリープハイプとか、上の世代にもいたわけですけど。
Saucy Dogは「シンデレラボーイ」が〈国内で最も再生された楽曲〉2位のほか、〈国内で最も再生されたアーティスト〉で10位にランクイン。マカロニえんぴつは「なんでもないよ、」が〈国内で最も再生された楽曲〉4位、〈国内で最もいいねや保存された曲〉5位のほか、『ハッピーエンドへの期待は』が〈国内で最も再生されたアルバム〉で10位にランクイン。芦澤:Saucy Dogのブレイク以降、その潮流からヤングスキニー、ねぐせ。といった新しいバンドが続々と出てきています。彼らも女性目線の歌詞の楽曲が多く、コロナ以降に結成してライブはあまりやらないまま、TikTokを通じて若いリスナーの共感を集め、ストリーミングでリスナーを増やしていくという。そういうバンドのワンマンに行くと、初めてライブに来たという若いオーディエンスがたくさんいて、特に女性が多い印象。これもコロナ禍以降の新しいトレンドだと思います。
柴:ヤングスキニーがまさにそうなんですけど、他にもMr.ふぉるてとかマルシィとか、今の若手のギターロックバンドってよくライブの縦動画をTikTokにあげて明朝体のフォントで歌詞を重ねてるんですよ。個人的には「縦書き明朝系」って勝手に呼んでます。それともう一つ、驚いたのは〈国内で最も再生された楽曲〉の上位5曲が全部ラブソングなんですよね。優里の「ドライフラワー」「ベテルギウス 」は昨年リリースですが、ここまでJ-POPのヒットチャートがラブソング一辺倒になったのはムードが変わった感じがするというか。近年は見られなかった傾向で、「着うた」全盛期くらいまで遡ると思います。
@yangskinny_official
ーその要因として、どういったことが考えられますか。柴:2010年代後半にSpotifyが日本で普及しだした頃は、ストリーミングで聴くことがある種のオルタナティブというイメージがありましたよね。そんなふうにアーリーアダプターが使うサービスだったのが、特に10代〜20代のマジョリティが使うサービスというふうにリスナー層が広がったことによって、より多くの人々から共感されるものがランクインするようになったのかなと。
芦澤:その話でいうとSpotifyでは、〈一番再生されたプレイリスト〉でも1位になった「令和ポップス」、ラブソングを集めた「恋するプレイリスト」というZ世代向けのプレイリストを今年ローンチしましたが、若い層から多くの支持を集めています。
柴:やっぱりラブソング人気はあるんですね!
芦澤:もともと、日本はチャート人気の高い国ですよね。Spotifyでも日本では毎日更新されるTOP50チャートのプレイリストへのアクセス数が多く、そこで今のトレンドをキャッチアップしている方がどの年齢層にも相当数いますし、「Tokyo Super Hits!」「Hot Hits Japan」といったプレイリストが、ローンチ当初から人気を集めています。ただ今年はそういったチャート系プレイリストに比肩するほど「令和ポップス」「恋するプレイリスト」が人気を集めていて、これは新しい傾向かと思います。