追悼ジェフ・ベック ベストソング11選

ヤードバーズ「Stroll On」(1966・映画『欲望』より)


イタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニの映画『欲望』(1966)には、記憶に残るシーンが数え切れないほどある。デヴィッド・ヘミングス扮する主人公がカメラのフィルムに収められた死体の謎を解こうとする途中でヤードバーズが演奏するクラブに立ち寄るシーンはそのひとつだ。このシーンでは、熱唱するキース・レルフに寄り添うように、若きジミー・ペイジが演奏する。その一方でベックはアンプに苛立ち、ギターを破壊してしまう。「アントニオーニ監督に自前のギターを破壊してくれと言われたときは、冗談じゃないと思った」と、ベックは1971年のローリングストーン誌のインタビューで語った。「だから私は『でも監督、それは(ピート・)タウンゼントのパフォーマンスじゃないですか』と反論した」。さらにベックは、映画を初めて観たときの感想を次のように述べている。「死ぬほど恥ずかしかった。だって、よく見るとアソコが立ちまくってるんだ! 照明のせいで体がどんどん熱くなったのを覚えている。それにもしかしたら、窮屈なズボンを履かされていたせいかもしれない」— A.M.


「Beck’s Bolero」(1967)



短いながらも、狂気と隣り合わせの才能に満ちあふれたプロト・プログふうのこのインスト曲は、そうそうたる面々によって演奏されている。ドラマーはザ・フーのキース・ムーン、ベーシストは後にレッド・ツェッペリンのメンバーとなるジョン・ポール・ジョーンズ、ピアニストはローリング・ストーンズと何度も共演を果たしたニッキー・ホプキンス。ベックとともにツインギターを務めるのは、ヤードバーズのメンバーであり、後にレッド・ツェッペリンのキーマンとなるジミー・ペイジだ。「Beck’s Bolero」は、ラヴェルの「ボレロ」のリズムを刻むペイジのアコースティックギターの音色とともにはじまり、そこにベックのエレキギターのメロディーが重なる。その後もメロディーは上昇を続け、やがては壮大なサイケデリックサウンドと史上最高のハードロックサウンドとともに爆発する。— B.H.


ジェフ・ベック・グループ「I Ain’t Superstitious」(1968)

レッド・ツェッペリンがデビューすると、一部のロックファン(ロック評論家のジョン・メンデルスゾーンが本誌上でレッド・ツェッペリンをこき下ろしたのは有名)は、ジェフ・ベック・グループの安っぽい偽物としてしか見ようとしなかった。その理由を知りたい人は、ジェフ・ベック・グループによるウィリー・ディクソンの名作ブルース「I Ain’t Superstitious」(この曲を最初にレコーディングしたのはハウリン・ウルフ)のカバーをぜひ聴いてほしい。曲全体を通じて朗々とかき鳴らされるベックのワウ・ペダルのサウンドにヒントが隠されているはず。— B.H.

BY ANGIE MARTOCCIO, BRIAN HIATT, ANDY GREENE, DAVID BROWNE

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