インスペクター・クルーゾが語る「ロック農家」の戦い方、イギー・ポップの局部を歌う理由

 
イギー・ポップの局部と「真のロックンロール」

―さっき話題に上がった「Rockphobia」にはコメントを寄せるという形でイギー・ポップが参加していますね。

ローレント:そう! とてもおもしろい曲になっていると思うんだけど、実は真面目なテーマがあって、現代におけるロックンロールとは?と問いかけているんだ。というのは、ヨーロッパではFuckをはじめ、いわゆる四文字言葉を使ったらダメだみたいにロックンロールが軟弱になってきているからなんだけど、イギー・ポップの時代は局部を露出することも含め(笑)、やりたい放題だっただろ? それに比べて、今はどうだ? そんな状況を表現するためにイギー・ポップの名前を象徴的に使ったんだけど、コラボレーションしようなんて気持ちはこれっぽっちもなかった。ただ、イギー・ポップの名前を使っているから、念のためマネージャーに曲を送ったら、なんとイギー・ポップが気に入ってくれて、WhatsAppで「Fuck you!」ってボイス・メッセージを送ってくれた。それを最後に使ったんだ。そんなふうにシンプルにコラボレーションが実現しちゃうところがロックンロールだと思う。おもしろいよね。



―当然、2人はイギー・ポップの大ファンなんですよね?

ローレント:イエス、イエス。もちろんだ。

マシュー:(日本語で)はい。

―彼のアルバムでは、どれが好きですか?

ローレント:ストゥージズならどれでも。

マシュー:俺もそうだね。そう言えば、この間、イギー・ポップのドキュメンタリーを見たんだ。デヴィッド・ボウイとの出会いも含め、彼のキャリアがすべて詰まった、すごくロックンロールな内容だったんだけど、それを見ながら、こういうロックンロールは、今はもうないなと感じたよ。

―そんな中でもインスペクター・クルーゾは真のロックンロールをやっている、と?

ローレント:それはわからない(笑)。

―えっ⁉

ローレント:もちろん、俺達はベストを尽くしているけど、それをどう思うかはリスナーやオーディエンスしだいだからね。より良いロックンロールを作るために、そしてより良いロックンロール・バンドになるために大切なことがあると思うんだ。1つはインディペンデントであること。もう1つは歌詞がディープであること。俺達はその2つが重要だと考え、実践している。リスナーとしてもポップなだけの曲は楽しめない。ニール・ヤングやパール・ジャムをリスペクトしながら、彼らに近づけるように活動を続けたいと思っているよ。


Photo by Cyril Vidal

―最後に新しいアルバムの推し曲を1曲ずつ教えてください。

ローレント:クソッ(笑)。

マシュー:1曲だけかよ(笑)。

―2曲でもいいですよ(笑)。

マシュー:まず1曲は「The Outsider」だな。俺達の町に住んでいるアメリカ人の友人について歌った曲と言うか、外国人である彼の視点でフランスやガスコーニュのことを歌った曲なんだけど、とても美しい曲になったと思う。

ローレント:そうだね。俺も「The Outsider」を推したいな。力強い曲だと思うし、ライブでやると、曲の世界に入り込めて、どんどんイメージが広がっていくんだよ。

マシュー:もう1曲挙げるなら、さっきも話題に上がった「Wolfs At The Door」だね。俺達の農場では200羽のアヒルを飼っているんだけど、その200メートル先に10000羽のアヒルをぎゅうぎゅう詰めにしている工場がある。この曲はそこの悲惨な状況や、鳥インフルエンザの感染拡大を防ぐために健康なアヒルやニワトリまで殺処分することを求めて、プレッシャーをかけてくる政府に対する抗議を歌っているんだ。

―ローレントももう1曲、いかがですか?

ローレント:そしたら「Swallows Back」だな。殺虫剤の影響でツバメがどんどん姿を消しているんだけど、俺達の農場には毎年たくさん戻ってくるんだよ。俺はそのことをまるでオペラのように美しいものだと感じているんだ。

―その「Swallows Back」は見事なファルセットも聴きどころですね。

ローレント:俺達がデビューした頃からの売りの1つだからね。あの声が自然に出てくるんだよ。俺達はよくギターとドラムのデュオと言われるけど、ボーカルも楽器の1つとして考えている。だから、アルバムを作る時は毎回、歌にも力を入れているのさ。




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