メガデス『破滅へのカウントダウン』 デイヴ・ムステインが語る30年目の真実

メガデスのデイヴ・ムステイン、1992年ロンドンにて(Photo by Martyn Goodacre/Getty Images)

メガデス(Megadeth)の6年ぶり来日公演が、2月24日に東京・豊洲PIT(追加公演)、2月27日に東京・日本武道館、2月28日に大阪・グランキューブ大阪で開催される。昨年には最新アルバム『ザ・シック、ザ・ダイイング…アンド・ザ・デッド!』をリリース。好調が続くフロントマンのデイヴ・ムステインが、メガデスの最高傑作と称される1992年の4thアルバム『破滅へのカウントダウン』を振り返った。




メガデスをメインストリームへと一気に押し上げた1992年のアルバム『破滅へのカウントダウン』(原題:Countdown to Extinction)制作時を振り返るとき、デイヴ・ムステインは当時のクリアな精神状態に感謝していると言う。長年アルコールとドラッグを乱用したのち、赤毛のシンガー・ギタリスト・ソングライターのムステインは、スラッシュの傑作と呼ばれる1990年のアルバム『ラスト・イン・ピース』に取り掛かる前にシラフに戻った。そして、その新たな精神状態ゆえに、スピードメタルをシンプルで能率的にプレイするアプローチへの興味が沸き起こり、『破滅へのカウントダウン』からのシングル曲「狂乱のシンフォニー(Symphony of Destruction)」「スウェッティング・ブレッツ」誕生に至ったのである。

「『ラスト・イン・ピース』を作った時、俺はシラフに戻ったばかりで、当時の悪い習慣を止めてすぐにスタジオに入ったのさ。自分の内側に燃えたぎるものを感じていたよ。あの時、何が起きていたのかは自分でもわからないし、(依存者が集う)会合にも行かなかった。それまでの俺はアル中だったけど、今は違う。断ち切ることができたんだ。これは完全にHP(高次の力)のおかげだと信じているが、それについては話をしないようにしているよ。だって、みんなビビるから」と、現在61歳になったムステインがローリングストーン誌に語る。



『破滅へのカウントダウン』を思い起こすと、彼の脳裏にエディ・クレイマーが浮かぶと言う。クレイマーはジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンのアルバムにクレジットされているレコーディング・エンジニアだ。ムステインは次のように言う。「彼はジミ・ヘンドリックスのレコーディングを行って、すべての生物にヘンドリックスの音楽を知らしめた男だよ。俺たちが作業している最中に、そんな人間がコントロールルームに入って来るんだぜ。“俺は大物だぞ”って態度で。彼が誰だろうと俺には関係なかった。でも、彼が繰り返しそんな態度を取るから、不快感がどんどん増して行ったよ」

当時、メガデスはマックス・ノーマンとともにバーバンク・スタジオ・ジ・エンタープライズでレコーディングを行っていた。ノーマンはムステインと一緒に本作をプロデュースしたのだが、クレイマーが誇示する巨大なエゴへの軽蔑が、ムステインとノーマンの絆を深めたのだった。「マックス・ノーマンは汚い言葉をたくさん知っていて、彼も俺も相手に何かを言う時にわざと大きな口を叩くようにしたのさ。そうしているうちに、エディ・クレイマーを立入禁止にするために、大きな貼り紙を入り口のドアに貼ることにした。その貼り紙には“媚びへつらう道化師恐怖症はお断り―そうだよ、お前だよ、エディ・クレイマー”と書いた」

Translated by Miki Nakayama

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