16歳のトランス女性刺殺事件、追悼集会で怒りと悲しみが噴出 英

ジャイさんの死に、イギリスはもちろん海外も衝撃を受け、困惑した。彼女は2月11日、イングランドのチェシャーの公園で刃物に刺されて死んでいるのを発見された。15歳の若者2人が逮捕され、殺人容疑で起訴された。リアン・ギャラガー検事は事件について、「極めて残酷で、痛ましい死」と表現した。2人の若者は7月に公判を迎える予定だが、当面はジャイさんが殺された理由をめぐって疑問が飛び交っている。

当初警察は事件が憎悪犯罪ではないとの見方を報道陣に伝えていたため、事態は混乱した。発言はのちに撤回されたものの、すでにダメージは大きかった――トランスコミュニティは傷つき、困惑した。「警察はブリアナがいじめられていた過去を調べて、状況を確認してから、ヘイトクライムかどうかしっかり把握するべきでした」とケンジーさんは言う。ローリングストーン誌が取材した友人は3人とも、いじめを受けていたことをジャイさんから聞いていたそうだ。「私の中では(憎悪犯罪だったと)感じています――コミュニティの他のみんなも同じように感じています」。

イギリスのメディアによるジャイさんの死の取り上げ方も、トランスコミュニティを安心させてはくれなかった。タイムズ紙はジャイさんを10代の女性として報道したが、後に出生時の名前で記事を改訂し、「数カ月間女性として生活していた」と記載した。一方テレグラフ紙は、元警察官でFair Copという団体を創設したハリー・ミラー氏(反トランスジェンダー的な発言をしていた過去がある)にインタビューした。同氏は事件について、憎悪犯罪でないなら「痛ましい青年の死亡事件として扱うべきだ」と意見した。Fair Copという団体は、「治安活動から政治を除外することを目的とする、性別に厳密な弁護士・警察官・作家・専門家の集団」を自称している。

「(ジャイさんのことで)なぜわざわざ彼に質問したんでしょう?」。イギリスの調査団体Trans Safety Networkの研究員、マロリー・ムーア氏はローリングストーン誌にこう語った。「ミラー氏は2020年、トランスジェンダー追悼記念日の前日に、#SayYesToHate(憎悪は正義)という運動を立ち上げた人ですよ。先月も、反LGBTQ的なツィートで逮捕されたネオナチ活動家のジェームズ・ゴダール氏を擁護していました」と彼女は続けた。「ちなみに今回の記事では、初稿から最終稿まで、トランスジェンダーは1人もコメントを求められていません」。

「マスコミの取り上げ方には、ものすごく腹が立っています」とヴィヴィアンさんも言う。「出生時の名前を公表する必要なんてなかったのに。すごく失礼だと思います」 ローリングストーン誌はタイムズ紙とテレグラフ紙の記者にコメントを求めたが、返答は得られなかった。

Akiko Kato

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