米有名ポルノ女優が語る、Pornhubを題材にしたNetflixドキュメンタリーに出演した理由

人身売買反対運動が実はポルノ反対運動だ、と暴露することには私も興味がある。ニュース媒体でこうした問題を書くようになったのもそうした理由からだ。抗議活動をする理由もそこにある。もし私がドキュメンタリーに出演しなかったら、他に誰がいるだろうか。最悪なのは、製作側がとくに低能なポルノ女優をつかまえてきて、アメリカを代表するバカ女たちとして私たちを描くことだ。だから私はインタビューを引き受けた。

安全上の理由から、Jigsaw側にはインタビュー用の家を用意させた。製作側はロサンゼルス郊外の丘に立つコテージを借りてくれた。上品な家だったが、私はコンテンツクリエイターなので、カメラではいろいろごまかしがきくことを知っている。バカ女とかビッチとして描かれる可能性も考慮して、意図的に露出を押さえた。かませ犬に見られるのも嫌だったので、証言ビデオ風にならないよう、色合いをソフトにしてもらいった。親近感を出したかったのだ。

4時間強にわたるインタビューでは、私のポルノ現役時代について、キリスト教福音主義者が合法的なポルノ業界の撲滅を図っていることについて、私が記事を書くようになった理由など、様々な話題を取り上げた。私がノートパソコンでセックスワークについての記事を執筆する様子も撮影された。

こうした場面は『Money Shot』には出てこない。他のポルノ俳優と同じく、私も頭数の1人に過ぎない。およそ90分間のドキュメンタリーはPornhubの歴史を時系列にかいつまんで紹介する。第1部では、Pornhubが誰もが知る存在になるまでの経緯から誰もが知るテーマソングまで、Pornhubの成長が面白おかしく、巧妙に描かれる。ポルノ俳優とのインタビューや再現ドラマ、ときにはTikTok動画を交えながら話は進んでいく。なかなか面白い。一部重要な点が省略されているものの(MindGeekはPornhubを買収したのであって、生みの親ではない)、全体的には的を得ている。

だが私の意見では、第2部に入るとうさん臭くなる。右派宗教団体のExodus CryやNational Center on Sexual Exploitation(全米性的搾取告発センター:NCOSE)の活動家が、Pornhubでレイプや児童ポルノの違法動画が掲載されていることを知った経緯が紹介される。NCOSEの弁護士ダニ・ピンター氏は顔出しで出演しているが、Exodus Cryの旗頭的存在のライラ・ミッケルウェイト氏はインタビューに応じなかった。ピンター氏は会社のオフィスにスーツ姿で現れ、正面からのショットで撮影されている。合間に大手NPO団体「全米行方不明・被搾取児童センター」の専門家のカットが差し込まれ、まるでピンタ―氏が団体と関係があるかのように見える。だが実際の雇い主は過激なキリスト教一派だ。



ピンター氏と「全米行方不明・被搾取児童センター」の広報担当者が、Pornhubのおぞましいコンテンツについて語る。コンテンツの存在を知ったクリストフ記者がニューヨークタイムズ紙に暴露記事を掲載し、それがきっかけで政府の捜査が始まる。インタビューを受けたMindGeek関係者はほぼゼロで、内部告発者と思われる2人の話だけだ。1人は匿名のコンテンツモデレーターで、もう1人はまるで関係のない人事部の社員。モデレーターはMindGeekが違法コンテンツを削除しなかったと強く非難しているが、匿名なので視聴者の信用を得るのは難しい。人事部の女性についていえば、MindGeekについてどれほど詳しく知っているのか怪しいものだ。

製作側は内部告発者を勇気ある市民として描く一方、私やエイサ・アキラなどポルノスターは上からのアングルで撮影した。アダルト映画の被害者であるかのように、カメラがゆっくりと遠ざかっていく。私たちそれぞれの経歴はほとんど語られない。たとえばアキラはMindGeekの広報で、私はフリーのポルノ俳優兼ライターだが、2人とも同じ境遇の人間かのように描かれている。画面に映る女性たちと知り合いでなかったら、私でも1人1人を区別できなかっただろう。被害者風のアングルといい――Pornhubはその他多くのプラットフォームでしかないのに、私たちが経済的理由でPornhubを利用せざるを得なかったかのような物言いといい――まるでPornhubを擁護するよう強要されているようにも感じただろう。だが実際は、私たちの大半がPornhubではなく、ポルノパフォーマーを苦しめる戦いについて語るために取材を引き受けたのだ。

Akiko Kato

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