さかいゆう4年越し野音ライブを総括 「春の嵐」も味方につける2部構成・3時間の熱演

 
第2部 origami PRODUCTIONと夢の共演

第2部は、さかいがorigami PRODUCTIONの面々と共に作り上げたシティポップの名曲カバー集『CITY POP LOVERS』を、そのorigami PRODUCTIONのミュージシャンたちと共に再現するスペシャルライブ。mabanua(Dr)、Shingo Suzuki(Ba)、関ロシンゴ(Gt)というOvallのメンバーに、Michael Kaneko(Gt, Cho)、さらさ(Cho)、Hiro-a-key(Cho)が加わった賑やかな編成で、まずはアルバムでも冒頭を飾った山下達郎「SPARKLE」から。歯切れの良いイントロのギターカッティングが野音の空を切り裂き、さかいの伸びやかで力強い歌声が会場いっぱいに広がると、フロアのあちこちから歓声が上がった。

続いて披露されたのは、「ムッシュかまやつ」ことかまやつひろしによる和製レアグルーヴのマスターピース「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」のカバー。抑制の効いたOvallのリズムセクションと、さらさとHiro-a-keyによるクールなコーラスワークが、まるで青白い炎のようにじわじわと会場を盛り上げていく。そして、「きっと、みんながこの編成で聴きたいと思っている曲をやります」というさかいのMCに続いて演奏したのは、オリジナルラブ「接吻」のカバー。Ovallは2021年、本家とすでにこの曲をコラボしており、まさに「お墨付き」のアンサンブルでさかいの歌をしっかりと支えた。


Photo by Atsuki Iwasa

その後も曲ごとに楽器編成を変えながら、『CITY POP LOVERS』でカバーした楽曲を中心に披露。竹内まりや「プラスティック・ラブ」のカバーは、音数を極限まで減らしたOvallのミニマルなアンサンブルが、さかいのビロードのようなファルセットボイスを引き立てる。かと思えばブレッド&バター「ピンク・シャドウ」では、さかいとMichael Kanekoが息の合ったハーモニーを日比谷の空に響き渡らせ、Nenashiを迎えた鈴木雅之「夢で逢えたら」のカバーでは、アブストラクトなヒップホップビートに乗せて、さかいとHiro-a-keyがアーバンでシルキーな掛け合いボーカルを披露した。

個人的に白眉だったのは、Michael Kaneko、さらさを迎えたはっぴいえんど「風をあつめて」のカバーだ。Michael Kanekoのアコギとさかいのエレピのみのシンプルな伴奏により、3人それぞれが持つ唯一無二の歌声を存分に堪能することができた。


Photo by Atsuki Iwasa

気がつけば雨もだいぶ小降りに。しかし凍えるような寒さは相変わらずで、ステージにいるミュージシャンたちもみな辛そうだ。「もう、(寒さで?)頭が痛いから激アツな曲をやります!」とさかいが叫び、赤いライティングの下で鈴木茂「砂の女」をカバー。曲のエンディングでは、ラテン風味のリズムに乗って関ロが延々とギターソロを披露してみせた。

さらに、さかい曰く「「プラスティック・ラブ」と双璧をなす、シティポップの名曲」である「真夜中のドア」を、Masa Shimizu、Shingo Suzuki、関ロシンゴという編成でカバーし本編は終了。アンコールでは、今年3月に逝去したボビー・コールドウェル「What You Won't Do For Love」のカバーをエレピで弾き語り、「これで終わるの寂しいから,あともう一曲聴いてもらおうかな。ほいたら、全員来なさい!」と、この日の出演ミュージシャン全員をステージに呼び込み、シュガー・ベイブ「DOWN TOWN」を総勢10人でカバー。途中、まるでエレクトリック・マイルスのような阿鼻叫喚のジャズファンクを展開し、再び曲に戻るとこの夜一番の大歓声が起きた。

「春の嵐」の中で披露された、およそ3時間に及ぶステージ。悪天候をも吹き飛ばすような、否、むしろ悪天候さえも味方につけるような素晴らしい演奏と歌に酔いしれた一夜だった。


Photo by Atsuki Iwasa



SAKAI YU “LOVERS” CONCERT 2023 in YAON
セットリスト

●第1部
01. まなざし☆デイドリーム
02. ストーリー
03. 煙のLADY
04. リベルダーデのかたすみで
05. Get it Together
06. 嘘で愛して(Tell Me a Lie)
07. 愛の出番
08. 君と僕の挽歌
09. 薔薇とローズ

●第2部
10. SPARKLE
11. ゴロワーズを吸ったことがあるかい
12. 接吻
13. プラスティック・ラブ
14. PINK SHADOW
15. 風をあつめて
16. オリビアを聴きながら
17. 夏のクラクション
18. 夢で逢えたら
19. やさしさに包まれたなら
20. 砂の女
21. 真夜中のドア〜stay with me

●アンコール
22. What You Won't Do For Love
23. DOWN TOWN

プレイリスト:https://lnk.to/yusakai_yaon2023_setlist

 
 
 
 

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