RADWIMPS、熱狂の初北米ツアーファイナル NY公演現地レポート


(Photo by Takeshi Yao)

会場のPalladium Times Squareはブロードウェイと44番街の角にあり、まさにニューヨークのど真ん中に位置するベニューだ。前方から中央にかけてスタンディングフロア、後方にはスロープ状に設置された椅子席がありライブハウスとホールが融合したような縦長の造りになっている。2200人収容キャパで、オープン前から長蛇の列を成していたニューヨークらしい多様な人種のオーディエンスたちによって埋め尽くされた会場の光景は壮観だった。

開演時刻の20時を数分過ぎたころに日本で言うところの前説=間もなくライブが始まるというアナウンスからオーディエンスは歓喜の声を上げ、オープンニングのSEとともにメンバーがステージに現れると、その様相は叫びに近いものとなった。

バンドの編成は野田洋次郎、桑原彰、武田祐介に森瑞希とエノマサフミのツインドラムを加えた5人編成。ここからヨーロッパ、日本国内のライブハウスツアー、アジアと続いていくためセットリストの詳細な記述は避けるが、新海誠作品の主題歌群を映像演出とともに要所要所に散りばめながら、RADWIMPSというロックバンドの肉体性を5人編成で際立たせるにはうってつけの構成だった。


野田洋次郎(Photo by Takeshi Yao)

序盤で披露された「グランドエススケープ」(『天気の子』主題歌)や「前前前世」(『君の名は。』主題歌)、終盤の「カナタハルカ」(『すずめの戸締まり』主題歌)における、イントロの時点で示されたオーディエンスのヴィヴィッドな反応に新海誠作品の影響力をまざまざと感じた。それと同時に、海外で目撃するライブだからこそあらためてRADWIMPSの楽曲がいかに繊細なコードや旋律、重層的な生楽器のアンサンブルとシーケンスの組み合わせによって編まれているかを俯瞰的に思い知るという新鮮さもあった。あるいはRADWIMPSがここまで強靭なグルーヴをたたえたバンドであることに驚きを覚えたオーディエンスも少なくなかったかもしれない。自らピアノを弾く楽曲を除き自由なフォームでステージを縦横無尽に躍動する野田と、下手側と上手側でそれぞれダイナミックにギター、ベースをプレイする桑原と武田のアクションに対してダイレクトに呼応するように会場の熱量は右肩上がりに上昇していった。特に「おしゃかしゃま」で野田が指揮者となり各パートのソロバトルが繰り広げられる日本ではお馴染みのセクションでは、緩急自在のグルーヴを浴びてステージ横にいたセキュリティーさえも我慢できないとばかりに身体を大きく揺らしていて、非常に痛快だった。


桑原彰(Photo by Takeshi Yao)


武田祐介(Photo by Takeshi Yao)

「音楽は言語や国境の壁を越える」という言説は疑いようのない真理だと思うが、バンドがオーディエンスと温度差なく交歓するうえで、野田がネイティブといって遜色のない流暢な英語でメッセージを届けられるのも大きなストロングポイントだったと思う。

「昨日と今日のライブのこと、いや、この北米ツアーすべてのことを絶対に忘れません。こんなにオーディエンスの反応があることを想像していませんでした。僕らの想像をはるかに超えてます。本当に夢のようです。ありがとう。桑原と僕は22年前に出会ったんだけど、22年後にこうやってニューヨークでステージに立っているなんて、まったく想像してなかった。みんなのおかげです。これからも僕たちは音楽を作り続けます。その音楽でこれからもみんなを楽しませ続けたいと思うし、音楽とエンターテイメントで繋がっていけることを願ってます」

この日、RADWIMPSは〈ロックバンドなんてもんを やっていてよかった 間違ってなんかない そんなふうに今はただ思えるよ〉という歌い出しから始まる「トアルハルノヒ」も響かせたが、そこに込められたバンドの思いはどこまでもリアルな温度で迫ってきた。

オーディエンスが一体となった「ワン、モア、ソング!」の連呼に応えて、バンドは3曲のアンコールを演奏。ライブを終えると野田がフロア前方にいたオーディエンスからたくさんのメッセージが書き込まれたフラッグや星条旗を受け取り、メンバーは鳴り止まない歓声を背に名残惜しそうにステージをあとにした。


(Photo by Takeshi Yao)

終演後、ドレッシングルームで10分ほどメンバーに話を聞くことができた。北米ツアーを終えたばかりの彼らの言葉を残し、このニューヨーク公演のライブレポートを閉じたいと思う。

Rolling Stone Japan 編集部

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