ライドが明かす、「シューゲイザーの象徴」が歩んできた濃密な音楽遍歴

ライド解散〜再結成とリスナーとしての変化

─ライド解散後、ローレンスはマークとアニマルハウスで活動、アンディはハリケーン#1を経てオアシスに加入しました。別々のバンドで活動していた90年代の終わりから2000年代初頭にかけては、何を好んで聴いていた記憶がありますか? 世の中的にはブリットポップのブームが終わって、ドラムンベース以降のクラブ・ミュージックが流行っていたと思います。

ローレンス:ブリットポップの末期には紛い物が次々に出てきてうんざりしたし、やんちゃな感じのバンドも増えてきて個人的には楽しめなかった。90年代の終わりにはダンス・ミュージックの方に興味が移って、ドラムンベースやエレクトリックなサウンドの方を好んでいたよ。

アンディ:僕はオアシスに加入した頃はラーズをよく聴いていたし、初期のフリートウッド・マックも好きだった。日本へ行ったときはラーズのアルバムにボーナス・トラックがたくさん入っているCDを買えてうれしかったな(笑)。ピーター・グリーンがいた時代のフリートウッド・マックはどのアルバムも大好きで、取りつかれたように聴きまくってたよ。

─2000年代に入ってからは、IDMやポストロックなど新しいサウンドに触れる機会もあったと思います。アンディはDJも頻繁にやるようになりましたよね。

アンディ:その頃、僕はスウェーデンに住んでいた。物凄くインパクトが大きかったのがムーディーマンで、それから僕はDJを始めたんだ。一度はまったら気持ちを抑えられなくなって、随分そういうレコードを聴き漁ったよ。ミニマル・ミュージック、ダウンテンポ、エレクトロニカ、ミスター・フィンガーズもよく聴いた。




─アンディのもうすぐ出る新しいソロ・アルバム『Tidal Love Numbers』は、Masalというユニットとのコラボ作で、フローティング・ポインツやアリス・コルトレーンにインスパイアされた作品だそうですね。

アンディ:アンビエントな作品で、聴く人によってはジャズっぽいとも言われる。僕としてはカンからインスパイアされたところが大きいし、フローティング・ポインツのアルバムからかなり刺激を受けてるよ。あとファラオ・サンダースや、アリス・コルトレーンのハープを使ったサウンドとかね。モジュラー・シンセ、テルミン……さまざまな影響をミックスした感じのサウンドになっている。




─ライドはライブでも新曲「Monaco」を聞かせてくれましたが、ニュー・アルバムはどれくらいまでできていて、どんな内容になっているんでしょうか?

アンディ:実にライドっぽいサウンド(笑)。録音は終わっていて、ミキシングを始めたところだけど、ツアーがまだしばらく続くので年内にはリリースしない。ゆっくり腰を落ち着けてミックスが完了してから、来年に出そうと思っているよ。再結成してからの僕らは、それぞれが得意なことや、自分たちの持っている天性の才能を尊重してきた。それが続いているのはとても良いことだと思うし、そうやって各人の色が出せたら良いアルバムになると思うんだ。『Weather Diaries』や『Going Blank Again』がそうだったようにね。


Photo by Kazumichi Kokei

─ライブの終わりに、坂本龍一とデヴィッド・シルヴィアンの「Forbidden Colours」を流してくれて、日本のオーディエンスがとても喜んでいました。やはり亡くなったばかりの坂本龍一を追悼する意味でかけたんですよね。

アンディ:うん。この曲はイギリスではとてもポピュラーなんだ。僕が坂本龍一の作品を聴き始める上でイントロダクションになった曲なので、今回かけたいと思った。

ローレンス:本当に美しい曲だよね……美しいメロディだからこそ、たくさんの想い出が宿る曲だと思うよ。過去のことを思い出す、というか。

─ちなみにローレンスさんはテコンドーの黒帯をお持ちだそうで。いかにも格闘技をやっている人っぽいムーヴが入ったドラミングだなと思ってました。今もトレーニングはされてますか?

ローレンス:いやあ、最近は忙しくてなかなか時間が取れなくてね。また練習を再開して、子供たちに技を伝授しなきゃと思ってるよ(笑)。

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