ボカロP・きくおが語る、海外でファンダムを築く方法

きくお

いまや海外にもリスナーが広がるボーカロイドカルチャー。その人気筆頭格のボカロPの一人がきくおだ。2010年に活動を開始し、2013年に発表した代表曲「愛して愛して愛して」は2023年1月、ボカロ曲としては初の快挙となるSpotifyでの1億回再生を突破した。

特筆すべきは、きくおは海外で人気を誇り、リスナーの数も日本より圧倒的に圧倒的に多いということだ。歌詞は全て日本語。北米やヨーロッパのトレンドに合わせた音楽性でもない。アコースティックな歌モノから実験的なエレクトロニカまで多彩かつオリジナリティあふれる曲調で、どこか不穏さやダークさを漂わせる作風も特徴だ。レーベルや事務所に所属せず、インディペンデントな形で活動を行ってきたきくおは、なぜ海外にファンダムを築き上げることができたのか。詳しく聞いた。



きくお
1988年生。2003年、音楽制作を開始。ゲーム音楽や、BMS・Muzie等のインターネット音楽に浸りながら、ゲーム音楽、アイドルソング、東方アレンジなど、裏方としての楽曲提供を中心に活動。2010年、ボーカロイド楽曲初投稿。2017年、高等学校用教科書「高校生の音楽1」(教育芸術社)、きくお feat. 初音ミクとして楽譜と顔写真掲載。2022年、「愛して愛して愛して」がSpotifyにおいて、ボーカロイド楽曲再生数世界1位を達成。同年、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀 究極の歌姫 バーチャル・シンガー 初音ミク」長期密着取材を経て出演。最新アルバムは2023年3月リリースの『きくおミク7』。



―Spotifyで「愛して愛して愛して」が1億再生を突破した実感は?

きくお:正直、あまり実感はないんです。何故かと言うと、国内の人たちに騒がれなさすぎなんじゃないかって思って。数字的には結構すごいことだと思うんですけど、それについてメディアに突っ込んで訊かれた機会が驚くほどない。海外の人たちの熱量はすごいんですけど、国内にいる状況ではあまり実感がわくことはないんですよね。

―Spotifyではどの国のリスナーが多いんでしょうか。

きくお:一番多いのがアメリカです。次にメキシコ、ブラジル、イギリス、カナダ、フィリピン、日本と続きます。日本のリスナーはチリと同じくらいでかなり少ないですね。



―「愛して愛して愛して」を最初に作ったときは、海外に向けた意識はありましたか?

きくお:もちろんなかったです。曲を作ったのは2013年で、その頃は日本ではSpotifyもなかったし、ボカロ曲についても、そもそもニコニコ動画で聴くべきものであって、YouTubeですら「誰が聴くんだ?」とバカにされていたくらいだったんです。でも、自分としてはいろんな方面に種まきをしておきたいっていうのがあって。YouTubeで音楽を聴く人も今後は増えてくるのかな、何が起こるかわかんないから海外で出てきたSpotifyというわけのわからないサービスにも一応配信登録してみるかみたいなノリで、先に手を出しておくということはやってました。

―ミュージックビデオの公開は2015年3月ですが、それ以前に曲は発表していた。

きくお:そうですね。まず雑誌のコンピレーションCDの企画のために作って、その後『きくおミク3』という同人アルバムに収録して、MVとして公開したのがその2年後でした。

―実は今回、この曲がなぜ海外で聴かれるようになったのか、僕なりに仮説を立ててきたんです。

きくお:そうなんですね。それは僕も聞きたいです。

Editor = Yukako Yajima

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE