ルエルが語る「成長の過程」で見つけたもの、日本のウィスキーについて歌う理由

 
2023年5月23日 東京・渋谷WWW X
ライブレポート

まずはニューアルバム『4TH WALL』から、冒頭曲「GO ON WITHOUT ME」。歯切れ良いピアノのバッキングに合わせ、飛び跳ねながらルエルがステージに姿を現すとフロアからは大きな歓声が沸き起こる。カラフルなシャツを身に纏った長身の彼が、無造作に垂らしたブロンドの前髪をかき上げる姿はまるで若き日のレオナルド・ディカプリオのようだ。会場は外国人を含む多くのファンですし詰めだったが、女性ファンの黄色い声援だけでなく若い男性ファンからも、「やべえ!」「めちゃくちゃカッコいい!」と声が上がる。


Photo by Kazumichi Kokei

続く「GROWING UP IS _____」は、成長する過程で経験する「痛み」について切々と歌うミドルテンポの楽曲。どこかオリエンタルな響きを持つサビのメロディが日本人の琴線に触れる。疾走感あふれるビートとポップなメロディがThe 1975を彷彿とさせるエレポップチューン「YOU AGAINST YOURSELF」は、駆け上がるようなサビのメロディに続く激しいキメのパターンで、オーディエンスと一体になって拳を振り上げる。

スリリングなワルツ曲「Dazed & Confused」は、パントマイムのような振付を交えてシアトリカルに表現。かと思えばスタンダードなソウルチューン「Face to Face」では、“Strolling the streets back in Rome”の部分を「Tokyo」に替えてソウルフルに歌い上げフロアを大いに盛り上げる。「次は、アルバムの中でもお気に入りの曲を演奏するよ」と言って「IF AND/OR WHEN」を振り絞るように歌い上げ、「もう少し悲しい曲を続けてもいいかな。ハッピーな気分の時に、こういう曲が聞きたくなる時ってない?」と悪戯っぽく笑ったあと「MUST BE NICE」を披露。新しい恋人ができた元カノに対し「Fuck」と思わず心の中で毒づいてしまう、誰しも一度は経験したことのあるほろ苦い失恋ソングだ。怒りの奥にある悲しみを、振り絞るように歌うルエルに応えるかのように、スマホのライトをペンライトに見立ててかざすオーディエンスたち。


Photo by Kazumichi Kokei

ライブ中盤では、ピアノの前に座ったルエルがワン・ダイレクションの「Night Changes」をカバーしてみせると、大歓声と共に自然発生的にシンガロングが沸き起こる。「次の曲は、ピアノを弾きながら歌うのが難しいんだよね」と言いつつ、「Hard Sometimes」を心のこもったピアノの弾き語りで歌う。まるで彼の部屋に招かれ、目の前で演奏してもらっているような親密な空気に思わずうっとりしてしまう。さらに、自身がリミックスで参加したJVKE(ジェイク)のロマンティックで壮大なバラード「Golden Hour」をつなげると、会場は大きな感動に包まれた。

「日本のウィスキーについて歌ってみたら?」という、プロデューサーPJのアイデアから生まれた「JAPANESE WHISKEY」を歌う前に、「実は今日、東京のバーへ行ってウィスキーを飲みながらこの曲のMVを撮ったんだよ」と明かしてくれたルエル。「とても楽しかった」と言っていたが、果たして苦手なウィスキーを克服することはできたのだろうか。続く「Flames」は、彼がロンドン出身のシンガーソングライター、SGルイスとコラボしたエレクトリックなナンバー。妖しげな赤い照明に包まれながら、サビの4つ打ちキックに合わせて全員でジャンプすると、フロアが大きく波打った。


Photo by Kazumichi Kokei

どこか60sポップを彷彿とさせる「SOMEONE ELSE'S PROBLEM」を、エレキギターを抱えて熱唱し、ファルセットと地声を巧みに使い分けながらハチロクの力強いバラード「SITTING IN TRAFFIC」を、アコギをかき鳴らしながら歌い上げるとライブもいよいよ終盤に。成長する過程で親友と疎遠になってしまう、10代の切ない気持ちを綴った2018年のナンバー「Younger」は、イントロが鳴り響いた途端に大歓声。ステージ狭しと駆け回りながら歌っていたルエルだが、感極まってフロアへと降りていく。オーディエンスと同じ目線で一緒に歌ったあと、巨大な風船をフロアに幾つも飛ばしながら「Painkiller」を歌い、ファンからプレゼントされたという寄せ書き入りの日本国旗をステージに飾り付け、スタッフやファンに感謝の言葉を述べたあと「End Scene」を歌って本編は終了。鳴り止まぬアンコールに応えて「I DON'T WANNA BE LIKE YOU」を披露し、全員でシンガロングしこの日のライブを締めくくった。

10代の頃のあどけなさとやんちゃさを残しつつも、歌声や身のこなしから時おり見せる「色気」に成長を感じさせたルエル。次に会うときには、どんな大人へと変貌を遂げているのか、今から楽しみだ。

>>>当日のセトリ・プレイリストはこちら

【写真を見る】ルエル来日公演 ライブ写真ギャラリー(記事未掲載カット多数)




ルエル
『4TH WALL | フォース・ウォール』
再生・購入:https://SonyMusicJapan.lnk.to/Ruel4thWall

Translated by Kyoko Matsuda

 
 
 
 

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