POP YOURS総括 2年目を迎えたフェスとヒップホップの最前線で目の当たりにした「変化」

2年目を迎えた大型フェス

昨年はここまで巨大なキャパでの公演を経験したことのあるラッパーがほとんどいなかったため探り探りのパフォーマンスも多かったが、今年は多くの演者が“いかに魅せるか”を意識し準備してきたことで一気に舞台上の表現力が高まった。まず目立ったのは、ダンスを交えての演出。目を惹いたステージはMFSとJP THE WAVYで、背後にダンサーを従えつつ、自らもそのノリをラップに活かしていた。両者ともに昨年は息が上がりやや声が出ていなかった場面もあったが、今年はその点も大きくカバー。同じくダンサーを率いたLANAの舞台も印象深い。他にも、アート性高いビジュアルをスクリーンに投影しながらのショウを展開したCreativeDrugStore、生サックスとの共演を果たしたKEIJU、安定のやり取りで楽しませてくれたPUNPEE & BIMも、緩急をつけた“魅せる”ライブができていた。BAD HOPやAwichに象徴的だが、ライブや新作リリースといったニュース発表の場にステージを使う手法も昨年より増加。コーチェラなどと同様に、ライブ配信を見込んだ上での宣伝効果を狙うがゆえの背景もあるのだろう。

他方で、演出に頼らずともラップのみで空気を支配し観客を没入させる優れたラッパーもいた。guca owlやOMSB、ralph、C.O.S.A.のステージは、マイクを通し言葉を発するという凄みだけで会場全体を惹きつけ、異次元の力量を誇示。MCを巧みに織り交ぜ盛り上がりを作り出すという点では、フェスに引っ張りだこのRed Eyeやジャパニーズマゲニーズの手腕も相変わらず目立っていた。ヒップホップの大型フェスに限らず、ロック系のフェスなどにヒップホップアーティストが出演することも多くなってきた昨今、今後は巨大な会場で観客を惹きつける舞台表現の重要性が増していくだろう。昨年から今年にかけて国内ツアーに出ていたJP THE WAVY、LEXなどのステージングはさすがに鍛えられていたし、中でもAwichの構成力は別格だった。


MFS(DAY 1)


JP THE WAVY(DAY 2)


CreativeDrugStore(DAY 2)


PUNPEE & BIM(DAY 1)


guca owl(DAY 1)


OMSB(DAY 1)


C.O.S.A.(DAY 2)


多彩なビートの希求

既存のブーンバップ~トラップ主軸のビートでは自らの表現を規定しきれないアーティストが増えている中で、隣接するロックミュージックやハイパー・カルチャー、レイブ音楽といった領域と共振しつつオルタナティブなヒップホップを標榜する潮流がますます勢力を増している。今年のPOP YOURSでもTohjiとゆるふわギャングという二大勢力を筆頭に、主に「New Comer Shot Live」のステージでフレッシュなリズムとテクスチャが鳴らされた。UKガラージやジャージーで颯爽と駆け抜けたYvng Patra、ダンスミュージックのグルーヴを使い盛り上げたTokyo Young Vision、ロックサウンドを引用したCreativeDrugStore等、拡散するビートで会場に多様なヒップホップを見せた面々が挙げられる。

「New Comer Shot Live」は非常に意義深いステージであるが、STARKIDSとPeterparker69を見て2日間の空気の違いによる難しさも感じた。両日通しで来場している観客も多い中、1日目の会場の方がよりストレートなヒップホップを求めており、2日目はやや飢餓感が満たされ疲労も見えてくるためオルタナティブな音を受け入れやすい空気が出来上がっているのだ。2日目の冒頭、Peterparker69の疲れを癒すオアシスのようなサウンドが会場に染み渡る様子を眺めながら、タイムテーブルの残酷さを痛感した。


Tohji(DAY 2)


ゆるふわギャング(DAY 2)


Yvng Patra(DAY 1「New Comer Shot Live」)


Tokyo Young Vision(DAY 2)


STARKIDS(DAY 1「New Comer Shot Live」


Peterparker69(DAY 2「New Comer Shot Live」)

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