ルシンダ・ウィリアムスが語る、ロックンロールの新境地とスプリングスティーンとの邂逅

 
スプリングスティーンとの邂逅

「前のアルバムは時代を反映して、重苦しくダークな作品が多かった」と、2020年のアルバム『Good Souls Better Angels』について彼女は語っている。同アルバムには、ドナルド・トランプや悪魔をテーマにした楽曲が収められていた。しかし今回の彼女は、もっと自由なスタンスでの曲作りを目指した。アルバムのオープニングを飾る「Let’s Get the Band Back Together」は、酔っ払ったザ・フェイセズのメンバーが楽しそうにコーラスしている感じだ。「トム(・オーバビー)のアイディアで、バーでみんなが楽しく一緒に歌うイメージを出したかった」という。「だから、ちゃんとした歌い方は必要なかった」。

対照的に、スプリングスティーンとスキャルファが参加した作品には細部まで気を遣い、美しく仕上げた。オーバビー曰く、Eストリート・バンドのスーパーカップルに楽曲を送ったところ、16パターンのボーカルトラックが返ってきたという。「Rock N Roll Heart」で2人はコーラスに徹しているが、「New York Comeback」におけるスプリングスティーンのボーカルは、ルシンダの声に絡み合い、絶妙なデュエットソングに仕上がっている。

「彼の歌声が聴こえる瞬間は、何度聴き返しても興奮する」とルシンダは言う。「それからパティ(・スキャルファ)からは、 “こんなに素晴らしい楽曲は今後誰も書けないでしょう。あなたのアルバムに参加できてハッピーでした”というお褒めのメールをもらった。彼女は本当にクリエイティブな人よ」。



ルシンダがスプリングスティーンと初めて出会ったのは、2005年に遡る。スプリングスティーンはアルバム『Devils & Dust』のソロツアーの最中で、場所はロサンゼルスのパンテージズ・シアターのバックステージだった。彼女は、アルバム『Devils & Dust』の作品の中でも特に、娼婦をテーマにした生々しい歌詞の「Reno」がお気に入りだった。「ブルースに、あなたはものすごく勇敢なソングライターだと伝えると、彼からは“君だってそうじゃないか”と返ってきた。私はもう嬉し過ぎて絶句した」とルシンダは振り返る。

コンサート後にルシンダは、スプリングスティーン、T・ボーン・バーネット、U2のギタリストのジ・エッジ、(ジェシー・)マリンらと食事に出かけた。彼らはさらに別のテーブルを囲み、さまざまな「ストーリー」に花を咲かせた。ルシンダとオーバビーは、彼らとの楽しかった食事の思い出を決して忘れないだろう。しかしルシンダは、「ストーリー」という言葉をアルバムのタイトルに使うのを躊躇したという。

「アルバム全体がストーリー仕立てになっていると思われる気がしたから」と彼女は言う。「でも実際は、『Car Wheels on a Gravel Road』とは違うのよ。」

アルバム『Stories from a Rock N Roll Heart』は、ストーリーである必要はない。ルシンダ自身が言うように、ロックを楽しめばよいのだ。「私たちは皆パンデミックを経験し、乗り切った。また以前のように集まって、一晩中騒ぎましょう!」

From Rolling Stone US.




ルシンダ・ウィリアムス
『Stories from a Rock N Roll Heart』
発売中
再生・購入:https://orcd.co/rocknrollheart

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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