ブルース・スプリングスティーンが語る最新R&Bカバー集、ツアーの展望、さらなるアーカイブ企画

ブルース・スプリングスティーン(Photo by DANNY CLINCH)

 
ソウル/R&Bカバー集となった最新アルバム『Only the Strong Survive』を発表した、ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)の最新インタビュー。

約束の7分前、携帯電話に見知らぬ番号が表示された。ニュージャージー州のポイント・プレザント・ビーチからの着信だ。その日は、R&Bの名曲の数々をカバーしたニューアルバム『Only the Strong Survive』をリリースしたばかりのブルース・スプリングスティーンと、ローリングストーン誌の電話インタビューがセットアップされていた。通常はまずマネージャーや広報担当者と、インタビュー内容について打ち合わせるものだが、電話の向こうには一人だけだった。「よぉ、ブルースだ」と、聞き慣れたしわがれ声が話しかけてきた。

ブルースは、ロサンゼルスでロックの殿堂入りしたジミー・アイオヴィンのプレゼンターとしてステージに立ち、ニューヨークで毎年開催される退役軍人を支援するイベント「スタンド・アップ・フォー・ヒーローズ」で演奏した。それからロンドンへ飛んでBBCの『グラハム・ノートン・ショー』に出演した。さらに、ラジオ番組『ザ・ハワード・スターン・ショー』に初出演すると、引き続きジミー・ファロンの『ザ・トゥナイト・ショー』を4夜「乗っ取り」、大掛かりなバンドを率いて4曲披露するという、激動の数週間から解放されたばかりだ。このインタビューでブルースは、ニュージャージーのホームスタジオでレコーディングした『Only the Strong Survive』について語った。アルバムには60年代、70年代、80年代のR&Bの名曲が収められている。今回のアルバムでは、長年プロデューサーを務めてきたロン・アニエロにほとんどの楽器を任せたため、ブルース自身はボーカルに専念できたという。

インタビューではその他、次に計画しているカバーアルバムや、Eストリート・バンドの2023年のツアー、アーカイブ・ボックスセットの企画、オンライン・ブートレック・シリーズ、さらに、コンサート・チケット価格の高騰や価格変動制(ダイナミック・プライシング)の導入に反発して広がるファンの激しい怒りに対する想いなど、実に多くのトピックを30分に凝縮して語ってくれた。




―(ジミー・)ファロンの番組はいかがでしたか?

BS:楽しかったよ。とても面白かった。20人編成のバンドを組んで演奏したが、いわばミニ・オーケストラといった感じだった。

―Eストリート・バンドのオリジナルメンバーだったキーボーディストのデヴィッド・サンシャスとの共演を見られたのは、嬉しかったです。

BS:特別な出来事だった。デイヴィはハワイから飛んできてくれた。楽しい時を過ごせたよ。



―番組を見て、「もしもデヴィッドと(ドラマーの)アーネスト・“ブーム”・カーターがバンドに残っていたら、今頃どうなっていただろうか。彼らがいたら『Born To Run』、『Darkness』、『The River』などのアルバムは、どのようなサウンドになっただろうか」などと考えていました。もちろん今や、ロイ・ビタンやマックス・ワインバーグ抜きのバンドは考えられませんが、あり得た話ではないでしょうか。

BS:そうだな。ブームは元々ジャズ畑の人間だったから、Eストリート・バンドに加入した当初は、物凄いプレッシャーがかかっていたと思う。だけど彼は、ロックンロールの技術をあっという間に身に付けた。

そもそもは、(ドラマーの)ヴィニ・ロペスが脱退したことがきっかけだった。次の日の晩にライブを控えていたが、ギャングが経営するクラブだったから、キャンセルする訳にも行かないしな(笑)。もしも俺たちが姿を表さなかったら何をされるか、奴らの態度からはっきりと分かった。

するとデヴィッドが「ブームという名前のドラマーを知っている」と言うんだ。そこでブームを呼んで、真夜中から翌朝まで徹夜で、バンドの全セットリストを覚えてもらった。それからフォート・ディックスまで車を飛ばして、サテライト・ラウンジで夜の11時から深夜2時まで演奏した。ブームの加入は、怪我の功名といったところだ。彼のドラムは常にスイングしていたが、バンドにマッチしたロックの切れ味も持ち合わせていた。

彼が残っても上手く行っただろう。ただバンドのサウンドは今とは違い、ファロンの番組で演奏した時のようにスウィングした音楽になっていたかもしれない。おそらくね。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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