次なるアーカイブ・ボックスセットの企画―話題を変えます。未発表アルバムを含むボックスセット『Tracks』第2弾の噂が出ています。リリースの計画は本当でしょうか。BS:1988年以降の未発表曲を中心とした、5枚組のボックスセットを準備している。90年代の作品も聴いてくれているファンの中には、「90年代の作品はイマイチだ。やっつけ仕事のようだし、Eストリート・バンドもいない……」と評価する人もいる。実際に俺は90年代に多くの曲を書いたし、アルバムも作った。タイミングが悪かったとか、いろいろな理由で、リリースしなかったものがある。
それがここにきて、なんとなく(素材が)集まってきた。ある年の冬に、その時期の作品をまとめて整理したんだ。『Tracks』シリーズの一環として、いずれリリースしようと思う。バンドとやっていた頃の古い作品もあれば、90年代以降に構想を練っていた新しい曲もある。90年代のブルース・スプリングスティーンを再評価する機会になるだろう。中には酷い作品も多い。どんな評価を受けるか、楽しみだ(笑)。
―かなり以前から、ドラムループを使ったアルバムが存在するという伝説があります。BS:想像の通り、酷い出来だと思うよ(笑)。全編にドラムループを採用し、シンセサイザーも使った。個人的には気に入っている。でもまずは、一連のアルバムをリリースする。全部が俺のお気に入りの作品だから、ファンからの反応が楽しみだ。
―リリース時期はいつ頃でしょうか?BS:今は言えない。ニューアルバムを出したばかりだからね。「近い将来」とだけ言っておくよ。
―『Born in the USA』ボックスセットの話もあります。こちらも準備が進んでいるのでしょうか?BS:いや(笑)。『Born in the USA』ボックスセットについては、何もしていない。言っておくが、『Born in the USA』のアウトテイクの美味しいところは、ほとんど『Tracks 1』に収録されている。残っているのはたいしたことの無い音源か、ほとんど残っていないかだ。俺には分からない。俺たちは何も隠していないよ。それから残念なことに、『Born in the USA』ツアーの映像は、どれも上手く撮れていないんだ。俺たちが管理する素材が足りていないというだけなんだが、もっと調べようと思う。時期が来たら、リリースできるものが分かると思う。でも『Born in the USA』に関しては、『Darkness』や『The River』のように大々的なボックスセットは期待できない。第一に、素材があるかどうかすら分からないんだからね。
―『Nebraska』についてはいかがでしょう。収録曲のさまざまなバージョンを含むブートレッグが存在すると耳にしました。BS:『Nebraska』に関しては、確かにいろいろなアウトテイクがある。まとめて出せるかもしれない。俺にもアイディアがある。ただ、今のところは可能性でしかない。それから、『Nebraska』関連の書籍が出る。言ってしまっていいのか分からないが。著者の出版計画を台無しにはしたくない。とにかく、誰かがアルバムをテーマにした本を書いていたのは事実だ。これも今後の話だ。
―『Nebraska』の素晴らしいブートレッグを聴いたことがあります。あなたが歌いながらノートをめくる音が入っています。歌詞もまだラフな状態で、いろいろなフレーズが含まれていました。多くのファンにとって、そそられる内容だと思います。BS:ファンには受けるかもしれないな。俺は「完全な形で聴かせてくれ」というスタンスで、仕上がった曲を聴くのが好きだ。俺は、ひとつの曲の無数のバージョンが収録されたボックスセットには興味がない。たぶん俺が特殊なんだろうな。『Nebraska』の周辺について、詳しく調べているところだ。何か見つかれば、公開するよ。
―オンライン上では毎月、コンサートのブートレッグ映像を公開しています。ご自身で映像を選ぶことはありますか?BS:専門のチームがいる(笑)。俺はただ「これはいいね。これもいいね。これもOKだ」と言うだけだ。映像は見るが、積極的には関わっていない。
―1975年以前の映像が少ないですね。スティール・ミルやブルース・スプリングスティーン・バンドなど、初期の素材を公開するのには反対ですか?BS:そういう訳ではない。75年以前の、例えばスティール・ミルのコンサート映像が見つかったら、出しても構わない。たぶん、あまり質は良くないと思う。ただ、当時の俺がどんな感じだったのかを知ることはできるだろう。検討してみるよ。もしも質の良いスティール・ミルのコンサート素材があれば、リリースしてもいいな。
―『Human Touch』と『Lucky Town』をまとめたボックスセットも素晴らしいでしょうね。当時を振り返り、新鮮な感覚で作品を聴ければ最高です。BS:『Human Touch』と『Lucky Town』は、俺のソロ作品だ。『Lucky Town』ではなく『Human Touch』からは、いくつかのアウトテイクが見つかるかもしれない。でもボックスセットを出す予定はない。この2枚は、リリースされたありのままの形でいいんだ。
―最後になりますが、ツアーを本当に楽しみにしています。かなり久しぶりです。BS:そうだな。俺自身も本当に楽しみだ。全員で目一杯楽しむよ。
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