ノエル・ギャラガーが語る『Council Skies』誕生秘話、ツアーの展望、春にこだわる理由

 
スペシャル・エディションは大嫌い

―「There She Blows!」には「リバティ船」「司令官」「愛の七つの海」という驚くべき海洋性のメタファーがあり、同時に「天国の門」もありますね。この曲はどのようにして生まれたのですか?

ノエル:あのマザーファッカーね! ロサンゼルスで作ったんだけど、向こうは大麻が合法なんだよ。当時、別のプロジェクトに取り組んでいたんだけど、店に行って大麻を買ってさ。曲の内容は全く分からんが、船に乗っている男の話だろ? ビージーズやビートルズっぽい60年代の雰囲気もいいし、ギターソロもそうだ。それで十分だろ?



―たしかに、オアシスにもナンセンスな歌詞はよくありましたね。

ノエル:ファンのみんなに説明するのは難しいんだけど、「fuck-all」(どうでもいい)な曲が好きなんだ。「Holy Mountain」もそう。いい音さえ鳴っていれば、歌詞はどうでもいい。他人の曲の歌詞も聴かない。俺にとって重要なのは、フィーリング、メロディ、コードなんだ。ただ、大好きな曲の中には、歌詞の本当の意味を理解するまで何千回と聴いたものもある。たまにショックを受けるんだよ! 数年前、ポール・ウェラーの 「Town Called Malice」(ザ・ジャム「悪意という名の街」)という曲の歌詞が全く理解できなかったから、ググったんだ。それまでは意味がわからなくても、曲に合わせて歌ってたけどね。調べてみて「マジか」と思った。“日曜日のローストビーフを信じて疑わなかったのに/生協の前に打ち砕かれる/ビールか子供服のどちらかをカットしなきゃならない/悪意と呼ばれる街での大きな決断”……正気とは思えない歌詞だ!

―しかし、音楽を聴くと本能的に歌詞に耳を傾けるのではないでしょうか?

ノエル:君はライターだからそうかもしれない。でも、俺は何よりもまず作曲家なんだ。

―(コロナ禍に)それだけ多くの曲を作ったということは、もうしばらくは何も制作しないということですか?

ノエル:そうだね。少なくとも、作ってきた曲を全部レコーディングし終わるまではね。昔の経験から得た一つの教訓なんだけど、今は『Definitely Maybe』の時と同じような状況になってるんだ。当時は、オアシスの最初の3枚のアルバムにも足りる数の曲を、多かれ少なかれ、すでに作り上げてあった。だけど、バカみたいにデビューアルバムに入り切らなかった曲をB面曲として大量放出した。今はアルバム3枚分の素材があるから、それが全部出揃うまでは何も新しく作るつもりはない。まだこんなに素晴らしい曲たちが残っているのに、多すぎるからという理由で途中で挫折したくないからね。

―では次のアルバムリリースまで、また6年はかからないのでしょうか?

ノエル:絶対かからない。もう取り掛かってるし、すでに4曲も完成している。パンデミック以来、そんなに先の計画は立てられないけど、今はまずツアーをやる。その次にアルバムをあと2枚出す予定。だけど、その間に世界でどんなことが起こるかなんて予測できないだろ。だから早くやったほうがいいんだ!


Photo by Matt Crockett

―今回のリリースでは、ボーナストラックやインスト曲、ライブバージョンやリミックスなどを収録したスペシャル・エディションもありますね。実際にいくつかのフォーマットが……。

ノエル:そういうのマジで大嫌い! アルバム1枚だけじゃダメなのか? これこそがアルバムってやつだけをよ! 今じゃアルバムと称して、デラックス・バージョン、スーパー・デラックス・バージョン、ボックスセット、カセットテープがあるだけじゃなく、こっちには歌詞集、あっちにはポスター、ステッカーなど付録にまで違いをつけてきやがる……ファッキンくそったれ! 俺たちがガキの頃にはたったレコード一枚だけだった。それを買って、聴くだけだった。

―だったらアルバムをたった一枚出せばいいじゃないですか?

ノエル:(自分のマネージャーを指差して)アイツのせいだよ! まあ、確かに今回のボーナストラックはなかなか立派だけどさ。ロバート・スミスとペット・ショップ・ボーイズのリミックスは超楽しかった。ニールとクリスは昔からの知り合いで、この前のグラストンベリー・フェスティバル(2022年、ノエルも土曜に出演)では、みんなは日曜の夜にケンドリック・ラマーを観に行ったんだけど、俺は逆にあえてペット・ショップ・ボーイズを観に行った。ケンドリック・ラマーには全く興味がない。だからあいつらにお願いしたら、快諾してくれたんだ。最初のバージョンは本当にペット・ショップ・ボーイズらしかったけど個人的にはちょっとやりすぎだった……次のバージョンは、ペット・ショップ・ボーイズらしさを少し抑えたもので、最終的に4番目のバージョンを選んだんだ。より暗くて、よりエレクトロニックだったから。本人達はもちろん最初のバージョンが一番好きだったんだけどね!




―ペット・ショップ・ボーイズがスペシャル・エディションのためにリミックスした「Think Of A Number」は、ここまで楽観的なレコードの最後を締めくくるには中々悲しい終わり方ですよね?

ノエル:さすが! 面白いことを言うね! 俺も、最初はこの曲が全然好きじゃなかったんだ。何かが物足りなかったんだけど、それを乗り越えて、今は大好きになった。今ならこの曲をアルバムの頭にするぐらい好きで、1曲目の「I'm Not Giving Up Tonight」を最後に置くかな。でも当時は、6年ぶりのアルバムにこんな悲観的な曲から入っちゃいけないなと思った。“未来に乾杯しよう/また巡ってくるといいね!”ってね。

Translated by Jennifer Duermeier

 
 
 
 

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