マイケル・ボルトンが語る、14年ぶりのアルバム、知られざるキャリアの逸話

ロック・アルバムを作る可能性は?

ーアルバムではニコラス・ペトリッカ、ジョン・ベティス、ヨナス・ミリンなど第一線のソングライター陣とコラボレートしていますが、彼らはどのように選んだのですか?共作の作業はどのようなものでしたか?

彼らは主に私のマネージャーから提案されたんだ。リストを見せられて、これまでどんなアーティストとどんな曲をやってきたか、私自身も曲を聴きながら決めていった。世の中には新鮮で優れた曲を書くソングライターがたくさんいるし、頭を悩ましたよ。それから彼らとアイディアを交換しあって、曲を仕上げていったんだ。コミュニケーションはうまく行ったし、早いペースで作業は進んだよ。「Beautiful World (Feat Justin Jesso)」をデュエットしたジャスティン・ジェッソは20年前、両親とレストランで食事をしていて、その場にいた私に「ファンです」って挨拶してきたこともあったんだ。プロのシンガーになりたいと言うから2、3つアドバイスした記憶がある。それが役立ったのか判らないけど、彼は素晴らしいシンガーになったよ。自分の幅を押し広げるタイプが好きなんだ。

ーそんな楽曲の数々に加えて、アルバムの主役はあなたの歌声です。デビューから半世紀近く、どのようにしてボーカルのエネルギーとエモーションを維持しているのですか?

ボーカル・コーチ2人について発声法やトレーニングを積んでいるよ。東海岸と西海岸から1人ずつ、オペラからポップ、ブロードウェイ・ミュージカルまで幅広くやっている世界有数のコーチだ。ウェイトトレーニングと同じで、反復エクササイズとウォームアップで声帯を鍛えて、声域を広げるんだ。彼らの指導がなければ、このアルバムでの私のボーカルはあり得なかったし、自信を与えてくれたよ。

ー新作でのボーカルの力強さに加えて、『ソングス・オブ・シネマ』(2017年)にボブ・シーガーの「オールド・タイム・ロックンロール」を収録するなど、あなたはまだロック出来ることを証明しています。元々ロック・バンドのブラックジャックでデビューしたことはよく知られていますが、いずれロック・アルバムを作る可能性はあるでしょうか?

実は考えたことがあるんだ。レコード会社のスタッフと話してみたこともある。ロックの名曲を歌うのか、いろんなソングライターと新曲を書くのか……ただ、まだ誰も企画書を書いていない状況だよ。今すぐやる感じではないかな。

ーあなたの友人で、共演したこともあるドリー・パートンもロック・アルバムを作っているし、デュエットを出来たら最高ですね。

それは知らなかった! 彼女だったらロックを歌っても凄いだろうね。

ーカニエ・ウェストの「ネヴァー・レット・ミー・ダウン」でBlackjackの「Maybe Its the Power of Love」がサンプリングされたことで、Blackjackへの再評価はありましたか?

うーん、私の知る限りではそういうことはないみたいだけど、カニエが私の昔のバンドに注目してくれたのは嬉しいね。しかも曲の使い方はオリジナルで、メロディやテーマの面で味わいのあるものだった。事前にリリックも見せてくれて問題ないか確認させてくれたし、私の音楽に対する敬意を感じた。とてもハッピーだよ。



ーあなたはキャリアを通じてオーティス・レディング、パーシー・スレッジ、アル・グリーン、マーヴィン・ゲイなど偉大なソウル//R&Bシンガー達のクラシックスを歌ってきましたが、曲を歌いたくなるロック・シンガーはいますか?

素晴らしいロック・シンガーはたくさんいる。ロッド・スチュワートやジャーニーのスティーヴ・ペリーはサム・クックから多大な影響を受けているよね。彼らの曲を歌ってみたら面白いかも知れない。でも自分に影響を与えたシンガーは君が挙げた人たちやスティーヴィ・ワンダー、レイ・チャールズなどだし、彼らの曲をもっと歌いたい気持ちもあるんだ。

ー『タイムレス・クラシックス(Vol.2)』(1999年)でアル・グリーンの「レッツ・ステイ・トゥゲザー」は2023年5月24日に亡くなったティナ・ターナーも歌ってヒットさせていましたが、彼女と交流はありましたか?

一度だけ会ったことがあったよ。1980年代の後半、コンサート会場の駐車場だった。「あなたの歌を聴いたことがある。ブラザー(黒人のこと)だと思っていたわ」と言われたよ。彼女が自分を知っているというだけで舞い上がったね。残念ながらそれっきり会うことがなく、親しくなる機会はなかったんだ。彼女の大ファンで尊敬していたし、いなくなってとても悲しいよ。

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