Borisと明日の叙景が語る、ヨーロッパ・ツアーの舞台裏、ファンの熱狂

海外からの反響、デジタルとフィジカル

ー実際にツアーに出る以前に、音源だけで海外からどのくらい反響があったのでしょうか。Borisはもう、海外のほうが売れている感じですよね。

Atsuo そうですね。ドルで生活してますから。

一同 (爆笑)

Takeshi 為替を気にしながらね。

Atsuo 今はボーナスステージだね。ヨーロッパツアー終わってからユーロがまた上がってますし。

Takeshi 生々しい話ですけどね。

ー最近はBandcampでのリリースも活発ですよね(2019年頃から公開作品数が急増した)。売り上げにおけるデジタルとフィジカルの比率ってどんな感じなんでしょう。Borisのようにアートワークも良いバンドだと一層興味深いんですけど。

Atsuo フィジカルは、名刺みたいなものだと考えていますね。規模が大きく一緒に仕事ができるレーベルと共に、世界中にアルバムという名刺をばらまくみたいな。それで、凄く気に入ってくれたファンは、自分たちが運営するBandcampページに来てもらって、細々したリリースも聴いてもらえばいいかなって。そんな考え方でやってます。

ー結果的に、デジタルで聴く人が増えてきた感じでしょうか。

Atsuo いや、アナログのほうが売れるな〜(笑)。アナログって、今のアーティストにとって一番のプライドの見せどころっていうか、説得力の見せどころだと思うんですね。アナログ切ろうと思うと体力がいるじゃない。レーベルもバンドも。そこで、音もパッケージもどれだけ良いものを作れるか、というのがアーティストとしての腕の見せどころだと思います。

ーなるほど。明日の叙景はどうでしょう。『アイランド』で本当に跳ねたと思うんですけど、海外からの反応はどういったものでしたか。

布 これまでの作品は海外の方が人気があったんですね。2nd EPも1stアルバムも。Bandcampでのデジタルも、CDについても。それが『アイランド』では、日本国内のほうが売れ行きも反響も多くなって。海外も今までと同じくらいの反応はあったんですけど、それまで下だった日本からの反応が上に行ってしまったので、日本ですごい人気あるんだけど海外には届いてないのかな?みたいに『アイランド』をリリースした当初は不安になることもありましたね。



等力 でも、Spotifyのリスナー数は日本よりアメリカの方が10倍多いので。

布 海外では、BandcampとかCDの売り上げとかよりも、完全にサブスクに移行しているんだなと感じましたね。

等力 Bandcampのデジタルの売り上げは海外からも多いですね。

布 フィジカルは日本ですね。CDは。

Atsuo CDは……日本でしか売れなくない?

一同 (笑)

布 意外と私たちは、Bandcamp経由でCDとデジタル音源を売って食いつないでいたところがあったんで。

等力 一応、あるものは買ってくれますね(笑)。

布 でも確かに、BandcampでLPは取り扱ってないので、本格的に始めたらそっちがぐわーっといく気はしますね。

Atsuo アナログはね、自分たちで管理するのはかなり大変なんですよ。在庫にしても、返品処理とかクレーム対応にしても。盤の色違いも何色もあったり。

ーただ、ダイハード・エディション(豪華版)というのもあるように、盤のカラーはファンにとってはかなり重要な部分ですよね。

Atsuo そう。スペシャルカラーって今すごい進んでて、次々に新しいスタイルが出てくるんですよね。プレス工場も開発を頑張ってるんですけど。やっぱり複雑になればなるほど不良品も多いんですよ。で、一枚不良品が出たら、そういう人に限って送ったもう一枚がまた不良品だったりする。そうなると利益とか全然ですよね(笑)。返金する対応だけでもどんどん経費がかかっちゃったり。

Takeshi だから、そういうやり取りが多くなってくるともう美学の問題になっちゃって。儲けがどうこうじゃなくてプライド。

ーなるほど。それでは話を少し戻すと、もともとそうやって海外からの反応があったからこそ欧州ツアーに踏み切れたということでしょうか。明日の叙景としては。

等力 そうですね。Borisからお声がけいただけたからではありますが。行ってみた感想としては、各地にファンがいたんだな(笑)というのはありますね。

Takeshi 確実にいたもんね。

布 4~5年前に売り切れてるTシャツ着てきた人がいて。待たせちゃったな、と感じました。

等力 必ずどの会場にもいたよね。あいつか〜!みたいな人が。呼べる人数的にはまだまだこれから成長していく必要がある、というかできると思うんですが、今までの活動のなかでファンになってくださった方々が来ていただいた、という感じで、手応えを感じましたね。

Atsuo Borisはご存知のようにほんと好き勝手なことやってるんで、お客さんも耳が柔らかい人が多いんですよね。明日の叙景についてもすごく楽しんでたし。すごい良かったですよね。

Takeshi 初日がフェスだったでしょ(ヘルシンキのSonic Rites Festival、The Initiation 2023という名義の前夜祭)。僕らは観れなかったんですけど、初っ端からかましてたみたいだよね。フェスって実は物販あまり売れないものなんですけど、翌日話を聞いたらそれがすごいセールスだったという。

等力 なんならあれがピークだった気もしますね(笑)

Takeshi やっぱり待たれてた感がすごくあったなあ。

Atsuo フィンランドはすごい親日で、日本の文化に対してオープンだし。

等力 Borisが出るフェスは土日の2日間だったんですけど、そこに明日の叙景が出る枠は無くて。それなら金曜に前夜祭をやろう、明日の叙景をそこのトリにしよう、という流れも良かったのかもしれないですね。明日の叙景でお客さんがたくさん入ってくれて。

布 フィランドと明日の叙景の音楽的親和性という話でいうならば、Children of BodomやSonata Arcticaみたいに、日本の歌謡曲やJ-POPにも通じるメロディが多いので、そういう意味では他の欧州の国よりも合うかもしれないとも感じますね。

ーフェスだったら特にだと思うんですけど、予備知識なしで来た人も多かった印象はありますか?

等力 前夜祭のトリ扱いだったこともあって、ほとんどの方が知ってくれていた感じでした。盛り上がり的には、観客の半分が『アイランド』曲を聴きに来た感じでした。

布 サブスクのリスナーは、フィンランドは多いんですよ。ただ、Bandcampはそんなにウケてない。

ーなるほど。そういうふうに地域的に細かく分析しているんですね。

布 いや、そこまではしてないんですが(笑)。ただ、国単位ではなく都市単位で、どのくらいリスナーがいるかはチェックしてますね。

等力 今回のツアーで解像度が上がりましたね。こういう場所はこういう感じなんだ、みたいな。

Atsuo えらいなー。うちは何にもチェックしてないよ。

一同 (笑)

布 発送を担当すると、ここの国が多いな、というのがわかる感覚はありますね。

Atsuo サブスクとBandcampの質が違うというのはあるよね。

布 Bandcampはアメリカですね。

Atsuo うん。やっぱり、アンダーグラウンドをサポートするカルチャーがまずあって、それがフィジカルからデジタルに移行するのを助けたのがBandcampだったんだなという感覚がありますね。それは自分たちでやってみてすごく思いました。アーティストをサポートしたいって人がBandcampにはいるよね。


明日の叙景

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