オスカー・ジェロームとは何者なのか? UKジャズの逸材が音楽遍歴を大いに語る

 
学生時代の学び、アフリカ音楽からの影響

―その後トリニティ・ラバンに進学し、より深くジャズを学んだんですよね。

OJ:4年間でジャズの全体像を勉強したんだ。20〜30代初期のジャズ、スウィング、 ビバップ、ハード・バップ、フリージャズからモダン・ジャズまで。もし当時に戻れるなら、もっと集中して勉強するだろうね。というのも大学は「ジャズこそが芸術」という色合いが強くて、ジャズと同じくらいレゲエ、ヒップホップ、パンクに興味があった僕にとっては、他のジャンルを見下すような大学の考え方にうんざりすることもあったんだ。今思えば、ジャズに集中する時間を持てたことに感謝している。あともう一つ、大学に行って良かったことは人との出会いだね。大学で出会った仲間を通じて、ロンドンでもたくさんの知り合いができた。あとは練習の時間を持てたこと。4〜6時間くらい、毎日練習に集中していた。まさに修行僧のようにね(笑)。

―大学時代はどんな練習をしていたんですか?

OJ:誰かが何かを提供してくれるわけではなく、自分で練習方法を見つけなきゃいけなかった。スケールやハーモニー、他の人のソロをトランスクライブしたり、たくさんのジャズ・スタンダードを演奏したり、異なるコンポジションを練習した。あとは、バンドでいろんなことを試してみたりしたかな。

―あなたの音楽を聴いているとコンテンポラリージャズのギタリストを研究してきたように感じるのですが、大学時代にはどのようなアーティストを研究していたのでしょうか?

OJ:名前を挙げるならジョン・スコフィールドやパット・メセニー、西アフリカ出身のギタリストのアリ・ファルカ・トゥーレ、あとはガーナやナイジェリア出身のハイライフ・ギタリストたちかな。以前ココロコというバンドにいた時、アフリカのサウンドを繰り返して練習するうちに、そのグルーヴにのめり込んでいった。あとはフォークミュージックも。ジョン・マーティンを知ってる?

―もちろん。

OJ:彼からは多大な影響を受けたよ。彼のコードやフィンガーピッキングのスタイルが好きなんだ。あとはジョニ・ミッチェル。一方で、トム・モレロといったロックのギタリストも好きだよ。彼のエフェクトの使い方はとてもクリエイティブで面白いと思う。彼からも影響を受けているね。




―あなたの世代的にはカート・ローゼンウィンケルなど、もう少し新しいアーティストを研究している人も多かったと思うんですよね。それよりは昔のギタリストのほうが好みなんですかね?

OJ:ジャズに関していうならそうだね。最近のアーティストを挙げるなら、ロンドン出身のアーティー・ザイツ。彼は友達でもあり素晴らしいギタリストだ。フィル・ロブソンは僕の先生だったし、シャーリー・テテも素晴らしいよね。それから、デイヴ・オクムのプレイはエフェクトとスタイルがとてもユニークで好きだな。





―先ほど西アフリカのギタリストについて語っていましたが、彼らの音楽のどんな要素が自分の音楽に反映されていると思いますか?

OJ:僕の音楽を聴いてもらえれば気づくと思うけど、パーカッション、ドラムが大好きで、バンドもギター、ベース、パーカッション、ドラムという構成になっている。アフリカンミュージックは特にギターがパーカッションのような役割を担っている。ギタリストでありながら音楽のリズミックな部分に魅了されている僕にとって、アフリカンミュージックのスタイルはまさに理想的だといえるね。

―歴史的にロンドンは、アフリカからの移民が多い街だと思います。西アフリカのギタリストにのめり込んだ理由として、ロンドンの環境も関係があると思いますか?

OJ:うん、そう思うよ。世界中の異なるバックグラウンドを持つアーティストたちと一緒に演奏する経験ができたのはとてもラッキーだと思う。ロンドンにはナイジェリア、ガーナ、コンゴ人がたくさんいる。以前、コンゴ人シンガーのアフラ・サッキーがリードしていたバンド、アフリック・バワントゥで演奏していた時は、毎週土曜日に西ロンドンにある彼のスタジオに行って、6時間くらい練習していた。僕は楽譜をなかなか覚えられなかったのに、彼はすべて記憶していて、まるで完璧だった。彼から学んだことはたくさんある。ココロコにいた時もメンバーの多くはイギリスで育ちだけど、バックグラウンドはアフリカやカリビアンとさまざまだった。彼らからも多くの音楽を学んだよ。


Translated by Yuriko Banno, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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