オスカー・ジェロームとは何者なのか? UKジャズの逸材が音楽遍歴を大いに語る

 
ネオアコ的(?)感性とリズム面のルーツ

―次は先ほどおっしゃったジョン・マーティンについて聞かせてください。彼はとてもユニークなシンガーソングライター、ギタリストで、日本でも一部でかなり人気があります。彼のどこが好きなんですか?

OJ:彼の曲からはとても深い感情を感じる。彼が歌う時、演奏する時、彼の心の奥深くからやってきた感情に触れているような気がするんだ。しかも、彼はフォークだけじゃなくソウル、ジャズ、ロックなど様々なジャンルを掛け合わせてオリジナルな音楽を作っている。僕自身、80年代の音楽はあまり好きじゃなかったけど、彼をきっかけに聴き始めるようになったんだ。彼は問題児として知られている一面もあるけど、彼の音楽にはメランコリックな情景が見える。ジェフ・バックリィの音楽にもダークな部分と美しさが共存しているように感じるね。悲しみを含んだ強い感情はすばらしく美しい作品を生み出すことがある一方で、精神面に大きな負担を強いる。実際、トラブルを抱えながら活動しているアーティストも多くいるんだ。

―ジョン・マーティンで特に好きなアルバムはありますか?

OJ:『Solid Air』だね。彼のフォークがジャズと出会った瞬間だったと思う。このアルバムから彼の音楽にハマったんだ。

―ジョン・マーティンってずいぶんマニアックでもあると思います。あなたの同世代の友達でジョン・マーティンを好きな人います?

OJ:ああ、何人かはいるよ。最初に彼の音楽を教えてくれたのは僕より2つ年上の友達だった。カルト的なフォロワーがいるし、彼の代わりになるようなアーティストは未だにいないと思う。




―80年代にはエヴリシング・バット・ザ・ガール、アズテック・カメラやプリファブ・スプラウトのような、ジョン・マーティンにも通じるアーティストがUKにはいたと思います。彼らの音楽は聴いたことあります?

OJ:いや。プリファブ・スプラウトは好きだけど、その他のアーティストはチェックしていなかった。絶対に好きだと思うから、もっと教えて(笑)!

―ははは、実は先日のあなたのライブを観ながら「プリファブ・スプラウトみたいだよね」って友人と話してとても興奮していたんですよ。

OJ:そっか。きっと、同じアーティストから影響を受けているからだね。




―サウンドのリズム面についても聞かせてください。ドラムやベースにはネオソウルやヒップホップの影響があるかと思うのですが。

OJ:ヒップホップにハマったのはスケボーがきっかけだった。スケボーとヒップホップは切り離せないからね。あとはヒップホップ好きの年上の姉の影響かな。彼女が部屋で、大音量でKRS・ワンや2パックのレコードやテープのミックスしているのをずっと聴いていた。それからもう一つ、面白いのは「トニー・ホーク プロスケーター2」っていうゲームにとても影響を受けたこと。そのゲームでパブリック・エナミー、KRS・ワン、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを初めて知ったんだ!

―「トニー・ホーク プロスケーター2」が影響源っていうのはWu-Luと同じですね。もしかしてパンクミュージックも、スケートカルチャーをきっかけに好きになったんですか?

OJ:いや、パンクは父からの影響だと思う。セックス・ピストルズやザ・クラッシュのレコードを持っていて、特にザ・クラッシュにはかなり影響を受けたね。13歳くらいの時に初めて『London Calling』を聴いて、どハマりしたんだ。彼らのサウンドにはレゲエやジャズ、ブルースも混じっていた。



―あなたはビートも作っていますが、影響を受けたビートメイカーはいますか?

OJ:そうだね、フライング・ロータス、J・ディラ、あとはビョークの作品も大好きだよ。彼女はとてもクリエイティブだからね。あと、ブロークンビーツのカイディ・テイタム、ドラムンベースとジャングルのゴールディー。僕が育った郊外の小さい街、ノリッジではレイヴカルチャーがずっと続いていて、レイヴがよく行われていた。地元でジャングルやドラムンベース、ブロークンビーツのサウンドを聴いて育った影響が大きいんだと思う。



―話を伺っていると、上の世代の音楽にもすごく興味があって、その部分があなたの音楽をよりユニークにしている部分があるのかもしれないですね。

OJ:そうかもしれないね。音楽を作る時に、「〜っぽく作ろう」というスタイルを決めたりはしない。ただ音楽を作るんだ。スタイルを決めてしまうと多くの可能性を潰してしまうことになるし、フローに制限をかけるようなことはしたくない……とはいうものの、頭で考えずにただ好きなようにやっているだけなんだけどね。

Translated by Yuriko Banno, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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