ルイス・コールと刺激し合うよき相棒、ジュネヴィーヴ・アルターディが語る音楽遍歴

「最大の影響源はルイス・コール」

ーあなたの曲は構造とかリズムもすごく面白いですよね。コンポーザーという意味で楽曲を研究したアーティストはいますか?

GA:作曲家としては自分の友達が一番大きな存在だと思います。新作を一緒に作ったイシス・ヒラルドやルイス・コール、クリス・フィッシュマンは作曲家としてはすごく優れているので。大きな影響を受けたのはギル・エヴァンス、マイルス・デイヴィス、デューク・エリントン。あと、ルイス・コールが教えてくれた竹村ノブカズも。

でも、一番大きいのはビートルズですね。あんなに多くの曲を書いているのに、作曲スキルが安定している。しかも、いろんなタイプの曲を書いている。そこがすごいんです。ビートルズをたくさん聴いたおかげで、私は作曲においていろいろなものを組み合わせることで、無限のアイデアを生み出せるようになったと思います。そういう意味ではルイス・コールもビートルズと同じタイプですよね。私に一番、大きな影響を与えたミュージシャンはルイス・コール。私たちはお互いに刺激しあって、高めていくような関係なんですよね。

私は作曲方法のリファレンスをいろんなところから持ってきて、それを自分なりに新しくアレンジし直していくような感じで、自分の曲に取り組んでいます。そして、その時の自分のムードや気分に合わせて曲は生まれてきます。



ーでは、新作『Forever Forever』のコンセプトについて聴かせてください。

GA:一言で言うと、ラブ・アルバム。形や大きさが異なる様々な愛が詰まっていると思います。人を愛する気持ち、その気持ちに対する感謝、それを祝うような気持ち、もしくは、その愛に向かって勇気を出して一歩前に踏み出すこと。ほかには自分の気持ちをオープンに表現することもそうだし、報われない愛もそう。いろんな意味での愛をアルバムに詰め込んでいます。あと、「自分の人生を照らしてくれる光を探している」ってこともテーマになっています。ある曲は葛藤について、ある曲はもっと心を開く方法を学びたい、みたいな感じで様々な曲があります。

―作曲に関してはどうですか?

GA:2019年にNorrbotten Big Bandのコンポーザー・イン・レジデンスになったんです。アルバムの半分はそのために書いたデモが元になっているので、ビッグバンド向けの楽曲を小編成にしたものと言えます。そのうち、ビッグバンドのバージョンも出る予定なんですけど、いつ出るかはまだハッキリしてないんですよ。なので、編成を小さくするために楽器のアレンジとそのレイヤーのやり方を初めて考えました。その意味では多くの学びがあったアルバムだと思います。


Photo by B+

―前作『Dizzy Strange Summer』と比較してみて、どのあたりに手応えを感じていますか?

GA:前作では友達を家に呼んでセッションして「いいね! それ使おうよ!」みたいな感じで、あまり決めごとをせずに作った感じだったんです。でも、今回は大作かつ美しいサウンドにしたかったですし、実際にメキシコのスタジオに行く 予算があったので、メンバー8人全員を連れて行ったんです。

そこでは曲が美しく響くことを念頭に考えて、1曲ごとに様々なアレンジを考えていきました。でも、私が招いたバンドメンバーたちは皆、とても具体的な強みを持っていて、素晴らしい制作のアイデアを持ち込んでくれました。その分「こうでなきゃダメだ」「ドラムは自分が叩く」「この曲では俺がドラムを叩く」みたいな感じで、全員がドラムが叩きたがるみたいなカオスな状況になることもあったんですけどね(笑)。だから、みんなで作り上げたアルバムっていうふうに言えるんじゃないかと思います。



ー最後に、イシスにも話を聞かせてください。あなたも『Forever Forever』に参加していますが、レコーディングで感じたことがあれば聞かせてください。

イシス:ジェネヴィーヴは私にとって常に大きなインスピレーションの源なんです。彼女の曲はすごくエモーショナルで、まるで心臓を一突きされるような衝動があります。それにジェネヴィーヴの曲はハーモニーにしろ、メロディにしろ、すべてにおいて意味があって、無駄なものとか、適当に足したものが一つもないんです。

そんなジェネヴィーヴは私が楽曲を理解しているだろうと信用してくれているので、すごくありがたいと思ったし、その期待を裏切りたくないと思いました。だから、私はあまり自分の色を出さないように心掛けたんです。もしかしたら私のアイデアをいくつか足したいとか、足して欲しいと思ったかもしれないんですけれど、私はそれはやるべきじゃないと判断したので、デモとほぼ変わりなく歌いました。私にとって『Forever Forever』はデモの時点で、ものすごく力強かったし、すでに完璧なものだったんです。

あとギターのペドロ・マルチンスとキーボードのクリス・フィッシュマンは、インプロヴァイザーとしてとても素晴らしい存在です。即興をする際でも素晴らしいハーモニーのセンスを持っています。ルイス・コールと私がしっかりと基盤を固めていると、彼らは空を浮遊しているような演奏をしていました。『Forever Forever』はその対比がクールな作品でもあると思います。




ジュネヴィーヴ・アルターディ
『Forever Forever』
発売中
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13236

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE