ヌードの代役が私に教えてくれた、出会い系アプリについての教訓 米

私は逃げ出したくなった。だが契約があったので、そうもいかなかった。ハイヒールの女性とチェンジしようかとも思ったが、それも無理だった――彼女の方も契約があったからだ。こんなか弱い人間がTVの撮影セットで食い物にされるなんて、それも私のせいで。そんな恐怖に打ちのめされ、私は何も言えなかった。だが彼女は礼儀正しく小声で私に話し続けた。今日ここで裸になって、発掘されることを期待する無垢な人間だということがありありと見て取れた。人選ミスに気が遠くなりそうだった。


ダイアン・ファール(PAUL ARCHULETA/GETTY IMAGES)

出会い系サイトで最初の頃にマッチングした人からも、同じような反応をされた。あのTVの役は良くなかったとか、あの役柄は合ってなかったから引き受けるべきじゃなかったとか。ええっ?! デートの相手として言ってるんですか? それとも役を演じる女優としてですか?

答えは両方。みな典型的なイメージにはめていたのだ――私たちはみな、もっとも原始的かつ直感的な型に自分自身や他人を当てはめる。私が顔の見切れた裸の女性の写真を見た時もそうだ。「戦士」だと思った女性は、いざ撮影セットに現れてみると「ミューズ」だった。そこではたと気が付いた。これは自分の問題なのだ。彼女の裸体は私がヌードの代役に彼女を選んだ理由とは無関係なのだから、私自身が母になる自分についてセラピーで掘り下げるべきことなのだ。のちに私に言い寄る男性もおそらく同じ理由で、私にはFBI捜査官(「あの時ぐらいの豊かな長髪がいいな」)、消防士(「僕を持ち上げられるほど力持ちじゃなさそうだね」)、大学教授(「あなたを想定してあの役を書けるのは男性だけだ」)のイメージに合わないと思ったのだろう。

少なくとも、私は自分の判断を胸にしまっておいた。その方が私にとっても、その日雇った囁き声の代役にとっても好都合だった。撮影セットの彼女は、服を着ても脱いでも輝いていた。彼女に自分自身(私)を投影していない人たちは、真のミューズ(彼女)に魅了されていた。この時の経験は、次に出会い系アプリをやるときの役に立ちそうだ。投稿する写真を選ぶときも、自我を振り回すのは辞めにして、次の恋愛でどんな役回りを演じたいかをベースに――すなわち典型的な型にはめて選ぶことにしよう。

悪女。誘う女。美魔女。(セクシー、でも私らしくない)

読書好き。内向的。母親。(そういう時もあるが、今はそうはなりたくない)

看護婦。妻。弁護士。(すでに経験済み、もう結構)

戦士。女王。賢女。(実生活はありだけど……出会い系で?)

実際のところ、1枚の写真でどの役にもハマりそうだ。ただ役によって、デート/経験/性生活/ライフスタイルが極端に違ってくるというだけの話。つまり、出会い系アプリの写真がイケてるか、スリムか、賢そうかと悩むのは自分を貶めるだけでなく、時間の無駄だったということだ。

※この記事は、現在行われている俳優組合のストライキ以前に執筆されました。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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