15歳でヌード動画が拡散、美女シンガーの今なお癒えない「傷」

ソーシャルメディア時代の寵児マディソン・ビアー、回顧録『The Half of It』でその代償を語る(MATT WINKELMEYER/GETTY IMAGES)

マディソン・ビアーはインターネット時代の申し子だった。子供時代にジャスティン・ビーバーから見出されたのをきっかけに、インフルエンサー兼ポップミュージシャンとして名を馳せ、いつの間にか未成年者を代表するセックスシンボルとなった。メンタルヘルスに悩んだ時期を題材にした自叙伝『The Half of It』では、そんな彼女の内なる悪魔との葛藤が包み隠さず記述されている。

ここに引用する抜粋には、弱冠15歳でSnapchatのヌード画像がネットに流出されたきっかけや、彼女自分が恥辱を乗り越えるまでの経緯が描かれている。

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いきなり有名になったことで味わった経験の中でも、プライベートなヌード写真の流出はとくに心に傷を残した出来事だった。

10年近く経った今も、私の頭から離れない。すっかり立ち直ったと思うたび、玉ねぎの皮のごとく新たな副作用が醜い頭をもたげ、心に受けた傷が人生のあらゆる側面に浸み込んでいることを実感させられる。

事の始まりは、幼馴染の男の子とのSnapchatでのやりとりだった。彼とは昔からの知り合いで、心から信頼していたし、お互い相手に首ったけだった。私たちはよく動画や画像を送り合った――2人ともまだ若かったし、自分の身体やセクシュアリティを模索している最中だった。Snapchatは動画のスクショや保存ができないもので、相手が見たら永遠に削除されるだろうとも思っていた。それに、さっきも言ったように、彼のことを信用していた。

大半のティーンエイジャーと同じように、私たちも結局別れた。月日が経ち、ほとんど気にも留めなくなった。この時私はすでにL.A.に引っ越していたが、彼を含めロングアイランドの友達とは何人か連絡を取り合っていた。前の学校で私の動画が出回っているのを最初に知ったのも、友達からだった。

それは真夜中に起きた。今でも鮮明に覚えているし、できることなら忘れてしまいたい。細かい点までひとつひとつ脳裏に焼き付いている。母はすでに就寝し、私はベッドに横たわって何の気なしに携帯をスクロールしていた。翌朝のダンスの練習のことが心配で、時間通りに起きられるよう早めに寝た方がいいと思いながら、気を紛らわせようとしていた。

するとどこからともなく、昔の友達からメッセージが送られてきた。「ねえ、グループチャットに誘われたんだけど、あなたが乳房を抱えている動画が送られてきたわよ」

最初は冗談だと思ったが、その後も昔の同級生から動画を見たというメッセージが相次いだ。ほとんどは心配してくれた友達からだったが、数人はこの時点でからかい気味に、「そもそもなぜあんな動画を送るような不用意なまねをしたんだ?」と遠まわしに質問した。心臓が早鐘を打った。友達の1人が動画のスクリーンショットを送ってくると、全身の感覚が麻痺した。たしかに私だった。例の男の子に送った動画だった。彼がどうやって動画を保存したのか検討もつかなかった。すぐにパニくった。

あっという間の出来事だった。うとうとしながらYouTube動画を見ていたと思ったら、次の瞬間には寝室で1人泣きじゃくっていた。

動画を送った彼に電話すると、彼はコピーしていないと全面的に否定した。わけが分からなかった。彼は私と同じぐらい流出に驚いていたが、他に誰がいるというのか? 彼にしか動画を送っていないのに。私は電話を切ると、動画を削除するようみんなに伝えてくれと友達に頼みまくった。

だがそれ以外にはどうしようもなかった。すでに動画は出回っていて、私にはなす術がなかった。ごく親しい友達に見られたことだけでも十分恥ずかしかったが、誰かが両親に動画を送るのではないかと思うと怖くなった。一生外出禁止を食らうかもしれない、あるいは弟が噂を耳にするかもしれない。そう考えただけで吐き気がした。

数分も経たないうちにだんだん現実が飲み込めてきて、私の目標は前の学校で動画が拡散するのを防ぐことから、ソーシャルメディアへの流出を止める方へと変わった。

内心、時間の問題だということはわかっていた。1人がネット上に投稿するだけで――私はフォロワー数を増やしていたし、こういうことが評判を傷つけうることも分かっていた――あとは飛び火のごとく広がっていく。いったんネットにあがると、もう消せない。永遠にそこに残ってしまう。

数時間後には起床して、ダンスの練習に向かわなくてはならなかった。動画の追跡を手伝ってくれた友達も、おおかた眠りについていた。母を起こすのが怖かったので、携帯を伏せて枕の下に押し込み、ベッドに潜るしかなかった。朝になったら悪夢が終わっていることを願いながら。

Akiko Kato

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