アイドラが語る評価よりも大事なこと、セオリーに縛られない音源制作

─そして先日は「Summer Ghost」のMVが公開されました。聞いた話だと、この曲はYUさんの友人に向けた曲でもあるとか。

YU:公言はしていないんですけどね(苦笑)。まあ、みんな知ってるんですけど……このバンドを結成するきっかけになったギタリストがいまして、そいつが最近亡くなっちゃって。俺が高校時代に一番一緒にいた奴でもあるんですよ。まあ……そいつに曲を捧げるのも違うなと思って、あくまでラブソングとして仕上げました。でも、間違いなくインスピレーションにはなってますね。とはいえ一番は、自分たちの表現したいものを改めて立ち返ってみて「こういうサウンドじゃない?」と思ってできた曲でした。なので変に頭を使うというよりは、感覚で生まれましたね。



KENJI:「Summer Ghost」はテンポ決めに結構悩みましたね。速すぎてもダメだし、たるく聴こえても、と思っていて。でも歌の譜割は決まっていて、速くして行っちゃうと歌いにくくなっちゃう問題もあったので、ギリギリ落とせるとこまで落とすけど、ちゃんと疾走感が生まれるようにして。打ち込みは絶妙なスピード感を出すために、かなり慎重に作ってきましたね。

CHOJI:『Black Humor』の「全部アナタのせいなんだ」という曲が、割と自分たち的には「Summer Ghost」と似ていて。演奏していても媚びていないっちゅうか、そういうカッコよさを感じる。「全部アナタのせいなんだ」のシングル盤と言ったらアレですけど、そういうイメージで作りましたね。で、帰りにメロディーを聴いていて、歌詞がまだ入っていない状態なんですけど、思わず泣けてくるぐらい良くて。

─どういうところが響いたんでしょうね。

CHOJI:曲って刺さるか刺さらないか?みたいなところがあるんですよね。そういう意味で思いっきり刺さったんですよ。

SHUKI:大体の曲は「まあ、これが正解だろう」と思えるんですけど、本当に完成直前まで何が正解なのか分からなかったのが過去2、3度あって。「Summer Ghost」は5年ぶりにその状態に陥りました。いろんな要素があるんですけど、簡単に言うと一発聴いてインパクトがある曲って、何回も聴きたくなる曲ではないんですよね。逆に、何回も聴きたくなる曲って一発目のインパクトが弱い。そのバランスをどこに置こうかすごく悩んで。結局アレンジではそれがまとまらず、最終のミックスでそのバランスを見つけて。でも、完成した後も1、2週間は「本当にこれで良かったのか……?」と毎日繰り返すぐらい、久しぶりに悩んだ曲ですね。

CHOJI:うん、言いたいことはめちゃくちゃ分かる。

KENJI:俺も難しかったな、すごく。

SHUKI:完成させるのが、嫌でしたもん(笑)。聴きたくないって思うぐらい、何度も聴いていたので。結果、落ち着いてよかったですけどね。

─それだけ魔曲でもあったと。ちなみにDisc1に収録されている楽曲を聴いて、今のアイドラは日本から海外へ勝負の矛先を変えたのかなと思ったんですけど。

YU:えっと、別に海外で勝負しようと思って作ってはいないです(笑)。自分たちが好きなものを突き詰めて、自分たちがいいなと思うものをやっているだけですね。この前、スペインで新曲をやらせてもらって、すごく良い反応があったので「ああ、やっぱりそうか」って。自分たちらしく変にコスプレしないでやるんだったら、日本だけじゃなくて海外でも同じようにやりたいなって思いました。つまり日本と海外で分けるんじゃなくて、同じようにやっていった方が僕ららしいんだなって。変に要らないストレスを感じないでやっていけるんだな、と思いました。例えば「日本だけでしか活動しない」と自分の活動範囲を狭めて「その中でリスナーを増やしていこう」となってしまうと、本来アーティストとして考えなくていいところまで、楽曲作りの上で考えちゃったり、実際にそれをしちゃっていた部分もあって。

─戦略を立ててマーケティング能力も活かして、器用に曲を作れる人たちですからね。

YU:そういうものから自分たちも解放されたいし、内側から出てくるクリエーションに向き合いたいなっていうので、Disc1に入ってる曲は結構そっちですね。僕は考えすぎる癖があるんですよ。それは自分の長所でもあり短所でもあると思うんです。それで物作りをしていると考えすぎちゃうところがあるので、気づかないうちにそれがストレスになってしまってた部分もあったんですよね。だから今年、僕自身の個人的なテーマが“考えすぎない”ことで。分かりやすく言うと、ミックスでもレコーディングでも、プレイバックする時にいつもだったら、腕を組んで深刻な感じで聴いちゃうんですけど、それじゃあいい音楽は生まれないな、と思って。「俺らは何のために音楽をやってるんだ?」と言ったらみんなを踊らせたりテンションを上げたりしたいからで。曲を作った自分たちが踊れなかったらダメだなって、そこはすごく反省して。自分が曲を聴いて体が動いちゃうものを目指してこうって。でも、それは思考じゃなくてフィールというか魂の話。それをすごく心がけて、ミックス作業とかも悩むんですけど、昔みたいな悩みじゃない。違う悩みになったなと、僕は思ってますね。

SHUKI:今思い出したんですけど、Disc2とか前作のアルバムはJ-POPをすごく意識して勉強していった。それこそ昔の音楽から最近のまでやっていく中で、今回のDisc1に確実に反映されてるのは、“飽きないようにセオリーを無視して作る”のを心がけること。洋楽は自由さもあるんですけど、割と形式ばってるところもあったりして。僕らも昔の方が「洋楽っぽい曲を作るぞ」という意識はあったと思うんで、「これってどうなのか?」と探りながらやっていたんですけど、最近は本当に感覚で。別にこれが洋楽か邦楽かは考えずに、その時の自分たちがカッコいいと思う音楽だったり、面白くて飽きにくい音楽を作れるようになったのは、洋楽オンリーの世界でもあんまりないのかなと思って。今までの経験を踏まえて、今のところ僕らならではの音を作れているのかなと思いました。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE