スロウダイヴが語る、シューゲイザー・レジェンドの実験精神と歳月を重ねて深まる絆

歳月を重ねて深まるバンドの絆

─スロウダイヴの音楽は、生と死、悲しみと喜びの間を行き来するような二元性のイメージがあり、今作はそのイメージをより強く感じます。

ニック:その解釈はきっと正しいね。

レイチェル:かなり正しい。

ニック:クリーンでパーソナルな曲もあれば、アップリフティングな曲もある。2つの面があるのは良いと思っているよ。闇がなければ光がないように、それらはいつも対になっている。一方が際立つには、そのコントラストが必要なんだ。

レイチェル:私たちの、どのレコードにも光と闇があるわ。歳を重ねるにつれて、純なものとはいかないけど。


Photo by Ingrid Pop

─スロウダイヴは1995年にいったん解散し、19年の歳月を経てこうして再び集まったわけですが、メンバー同士の関係性は以前と比べてどう変化しましたか。

レイチェル:良くなっていると思う。とくに私とニールの仲はね(笑)。

ニック:面白いよね(笑)。バンドや家族、大学の友達とかそういう絆の深いグループに所属していた人は、みんな同じような経験をしていると思う。10〜20年くらい離れていて一緒になった時、相手のことを覚えていても最初はちょっとぎこちない。でもあっという間に、昔から変わらないジョーク、くだらないことをしていたあの頃の、20年前の自分たちに戻れるんだ。年齢に関係なくそんな感じだった。きっとそれは……。

レイチェル:大人になったってこと?

ニック:それもあると思うけど、関係性が緩やかになったからじゃないかな。小さいことを気にしなくていいし……。

レイチェル:心配や不安とかね。

ニック:そのとおり。フレーズについてとかそういう些細なことに必死にならなくなった。バンド以外にも大事なものがあるしね。

レイチェル:家族や子供とか。

ニック:環境が変わって、バンドに対する態度にも変化があった。一方で、僕らのパーソナリティは1990年代から変わってない。クリスチャンと僕なんか、一緒にいる時はまるで17歳の頃のままだ(笑)。くだらないことばっかりしている。そう、今はお互いリラックスした関係性を持てているんだ。


Photo by Yuta Kato

─長いインターバルがあったにもかかわらず、素晴らしい作品をすでに2枚も作ることができているのはなぜだと思いますか?

レイチェル:「新しい音楽が作りたい」という熱がまだあるのよ。再結成した時、「昔の功績にすがって当時の曲ばっかり演奏するようなことは絶対したくない」という思いは共通していた。それに、2014年から2016年にかけてたくさんライブをしたのがすごく楽しかった。

再結成後の1stアルバムは「とにかく曲をレコードして、それから考えよう」っていう感じだったの。レーベルのプレッシャーもないし、自分たちで資金を出してプロセスを楽しみながら制作できた。完成までには時間がかかって大変だったこともあるけど、最終的には納得のいくアルバムになったし、リリースされるのが待ち遠しかった。また音楽の世界に戻ってきてライブできるってことにワクワクしたし、完成した音源が自分たちの元から世界へと羽ばたいていくことに、やはり心踊るのを感じた。そういう感覚を共有していることがキーなのかもしれない。

ニック:きっと、バランスが大事なんだ。僕らは新しいプロジェクトに取り掛かるとき、過去の歴史を頼りにステップアップするのではなくて、新しいバンドとして捉えるようにしてる。もちろん、僕らをずっと応援してくれるファンがいてくれるからこそ新しいことに挑戦できて、さらに多くの人に音楽を聴いてもらうことができているわけだから、べつに「昔の曲なんて演奏しないよー」みたいなことが言いたいわけじゃない。新曲でもヒットしたらライブで披露するし、ヒットしなかったら披露しない。ライブを観に来てくれている人への感謝の気持ちを示したいからね。

レイチェル:とにかく、ライブが好きなんだよね。

ニック:本当に!

レイチェル:私たちは、ただその瞬間を楽しんでいるの。




スロウダイヴ
『everything is alive』
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詳細:http://bignothing.net/slowdive.html

Translated by Miho Haraguchi, Natsumi Ueda

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