フォール・アウト・ボーイが語る、YMOと久石譲からの影響、アルバム再現ライブをやらない理由

僕らのゴールは、メタリカのような存在になること

ーあなたたちがバンドを始めた頃、“エモ”ってまだマイナーな存在でしたよね。音楽の特定のジャンルを指す言葉だと思っていたら、今ではみんな日常会話でも普通に使ってますし。

パトリック:「エモ」っていう言葉の意味は、ものすごく変わったよね。僕らがバンドを始めたシカゴではエモが浸透してたけど、いわゆる、僕らのようなサウンドは歓迎されなかった(笑)。キャップン・ジャズや、ブレイド、ザ・プロミス・リングみたいなバンドが、当時「エモ」といわれるバンドだったんだ。僕らの音楽がどのジャンルかなんて、考えたこともなかったな。なにかメロディックな音楽を作りたかったんだ。僕らはハードコア・バンドだったし、かなりヘヴィだった。だからといって、れっきとしたハードコア・バンドだとも思ってなかった。僕はいつもメロディックなものを求めてたから。もちろん、ハードコアは大好きだし、演奏するのも好きだった。でも、僕がサポートで歌うと、「お前の声は可愛すぎる」ってよく言われたんだ(笑)。で、僕らがやりたい音楽をやってたら、いつのまにか「エモ」って呼ばれるようになった。もし、意図的にやっていたとしたら、失敗してただろうね。つまり、ハッピーなアクシデントなんだ。そりゃあエルヴィス・コステロみたいになりたかったけど、当時の僕はアース・クライシスしか知らなかったからね(笑)。僕らなりにやっていった結果なんだ。





ピート:たとえば、誰かに何かを説明する時、名前があることで会話ができる。何かについて話すための名前だ。ただ、その意味が漠然としすぎてることもあるよね。まったく異なるものが「エモ」っていう言葉でまとめられてるけど、その理由は誰も答えられない、みたいな。前までは、その言葉に制限をかけられているような気がして不満だったけど、今は、そういうもんだって思ってるよ。ジャンル名でプレイリストが作られたりしてるし。でも僕らのゴールは、メタリカのような存在になること。たとえば、母や友達に「メタリカってどんな音楽?」って聞いたら、きっと「そんなの、メタリカはメタリカだ」だって答えるよね。彼ら自身が彼らを説明する言葉になってる。スピード・メタルのバンドで、4人組のバンドで...... なんて説明する必要がない。ガンズ・アンド・ローゼズもそうだ。それが僕らのゴールだね。そういう、名前がすべてを語るアーティストは百万といるよ。

ー僕はピートと同じ40代なんですけど、約20年前、まだメジャーデビューする前、渋谷のクラブクアトロであなたたちのステージを観たことを思い出しました。そして今も現役で走り続けている姿を見て、ハードコア/エモを好きで聴いてきた自分としては、とても励まされました。

パトリック:僕もだよ! まるで日本で育ったみたいだ。アメリカ、イギリスでも数多くのライブをしてるけど、日本もそのうちの一つなんだ。君が言ったみたいに、ほんとに小さいライブハウスからスタートして、だんだんと大きな場所でできるようになって...... そして今がある。ステージに立って、みんなが歌う姿を見られるなんて。ほんとに、ここまで来れたんだなって感じたよ!


Photo by Masato Yokoyama



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Translated by Natsumi Ueda

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